残念バガブー、でもカナディアンロッキーは楽しんだ(前)


カナディアンロッキーに行ってきました。


本当はバガブーに行く予定だったのですが、諸事情で計画変更を余儀なくされ、行き当たりばったりではありましたが、結果的にたくさん登れて楽しい旅となりました。

スコーミッシュに続き、2回目のカナダでしたが、より一層カナダでのクライミングが好きになりました。


Mt.Temple


バガブーに行くまで


9月初旬にバガブーに行くと決めたのは6月頃です。8月のお盆期間のほうがシーズンとしては良いのですが、学校の試験期間の都合でお盆は外さざるをえませんでした。

きっかけは、今年のGWのザイオンが終わった後、夏にバガブーに行かないかと誘われ、Google Earthで「Bugaboo spire」を検索してみて一目惚れ。
バガブーという名前は、数年前スコーミッシュに行った時に、現地で出会った日本人クライマー(後述のKさん)がこれから行くと言っていたのがきっかけで知りましたが、当時はアルパインっぽいものにさほど興味はなく、自分の範疇ではないなと思った程度でした。
ですが、この数年間、北米での海外クライミングを何度か経験するうちに、大きい壁により魅力を感じるようになっていたのです。


初日 バンフへ移動

航空券は9/2成田発、9/13成田着のエアカナダ。
(シーズンを外しているため、直行便にもかかわらず前回のGWチャイナエアと同じくらいの値段!)
迷った挙句、結局、冬靴にリンクス、ダブルアックスをパッキングしました。
出国手続きを済ませて、搭乗ゲート前にてゆったりしているとキャンモアのKさんから連絡があり、9/2からバガブー含むBC州の広域にて山火事による立ち入り制限がでたことを知りました。
そういえば、「今年のロッキー(キャンモア)は例年より乾燥して気温も高く、山火事が頻発して」とKさんがブログに書いていたことを思い出しました。氷河の状態が良く、天気が安定していると聞いてコンディションは良いだろうと楽観視していましたが、「天気が安定=雨が降らず乾燥→山火事」という結果になろうとは・・・。
BC州発表の記事をざっと読み、バガブーの山小屋を管理しているACC(アルパインクラブ・オブ・カナダ)に小屋には泊まれなくなったのかどうかメールで質問を投げて、とりあえず飛行機に乗ったのでした。

カルガリー空港にはあっという間に着き、ACCからの返事をチェックすると、まだ詳細がわからないので3日の夕方に確認して欲しい、バガブーに入れない場合は全額返金する旨のことが書いてありました。

最初の2泊は準備期間としてバンフのキャンプ場(トンネルマウンテンビレッジ)を予約しておいたのでとりあえず予定通りレンタカー(バガブーのためジープクラスの高いやつ)を借り、キャンモアで買い出しすることにしました。事故渋滞があったにもかかわらずキャンモアまでは空港からたったの1時間半。スコーミッシュに行く場合、バンクーバーの大渋滞に巻き込まれることを考慮すると、こちらの方がアクセスが良いと思いました。
キャンモアにあるマウンテンギアショップにて、バガブーの代わりにバンフ周辺でオススメの場所はないか店員さんに聞きつつ、バンフ周辺のトポと地図を購入し、バガブーがダメだった場合どうするかあれこれ考えました。


2日目 トンネルマウンテン そして残念バガブー


もともとバガブーに行く前に軽くバンフで軽く登攀する予定で計画していたので、予定通りトンネルマウンテンのgooseberry(6p 5.8)を登りに行きました。トンネルマウンテンは街の近くにあり、手軽にハイキングが出来る山です。ハイキングトレイルの反対側が崖になっていて、多数のルートがあります。
Tunnel mountainから Bow riverとRandle山の眺めが美しい


夕方、キャンモアにあるACCの事務所(兼ロッジ)に詳細を聞きに行きました。

そして9月いっぱいはバガブーに入れないと判明。
私のクライミング史上最大のアプローチ敗退です。大変がっかりしましたが、せっかくなのでバンフ周辺でのクライミングを楽しもうと気持ちを切り替えました。

バガブー前後で軽く登るために、バンフ・キャンモア周辺の岩場を事前にある程度は調べていたので、行きたいと思っていた場所がありました。その1つがTakakkaw Fallsです。アプローチもルートも手軽そうなので、まずはTakakkaw Fallに行くことにしました。


マウンテンショップの店員さんがLake Louise押しだったので、Takakkawのあと、数日間Lake Louiseに滞在したかったのですが、キャンプ場予約サイトを見るとLake Louiseは人気なのか空きがあまりない模様。翌日だけ空きがあったのでとりあえず予約しておきました。


その後どうしようかと、トポと地図、ビジターセンターで情報収集。

トポをパラパラめくって目に付いた場所をピックアップ。
こういう時、トポの写真は重要です。目を引いたのはGrand Sentinel。ひょろ長い100mほどの岩塔。これはぜひ登っておきたい!


Grand Sentinel

場所を調べると、トポに記載されたアプローチとは反対側のパラダイスバレーからもいけるようで、そこにはバックカントリーキャンプサイトがあります。
トポではモレーン湖側から6kmほどの峠を越えての2時間半のアプローチが紹介されていますが、前日に反対側のパラダイスバレーにキャンプすれば岩塔までも近いし、トレイルの登高距離も少ない。キャンプ地までは川沿いの平らなトレイルが5kmほどだから登攀後駐車地に戻って翌日別の岩場にも行けます。
いい案だと思って満足して眠りにつきました。


3日目 ダイナミックな滝際登攀


日の出前にTakkauFallの駐車場に到着。寒い。滝の音がすごい。

大きい滝です。370mあるそうです。よって壁も370mくらいあります。

観光スポットなので滝の目の前まで遊歩道があります。

滝の左側に積もった土砂の斜面を登って壁際の取り付きまでアプローチするのですが、駐車場から見た時、この斜面が悪そうだなと思いました。けれど、近くに行ったら割と登れそうだったので、斜面の真ん中を適当に登りました。登ってみるとやっぱり悪い・・・。帰りの降りが嫌だなーと思いながら、とりあえず取り付きまで行きました。
Takakkaw Fall 左の白っぽい土の山を登ると取り付き


滝のすぐ横を登るTakakkaw Falls Routeのグレードは5.7で、支点も綺麗に整備されていて、かなり人気がありそうです。なんとトンネルもある!



だんだん滝に近づいていく

朝早かったので登攀中は他にクライマーがいませんでしたが、下降開始した時に後続クライマーが続々とやってくるのが見えました。

最初に出会ったのはガイドさん。初心者と思しき2人を引き連れていました。
初心者にあんなアプローチ登らせるわけないので、ちゃんとした?アプローチ道があると推測。その通り、滝寄りに快適な道があったのでした。

このルート、カップルが多かったので、デート壁な感じでしょうか。



クライマーが4人くらいいます

午後、レイク・ルイーズに到着し、ビジターセンターで翌日バックカントリーキャンプしたいのだがと聞いたところ、パーミッションは24時間前からしか発行しないので翌朝もう一度くるように言われました。明後日以降のキャンプ場も2泊予約できたので、これで3泊分はなんとかなりました。


4日目 湖畔のショートルート、パラダイスバレーへのハイキング


朝、パラダイスバレーのキャンプパーミッションも取得したので、移動前に湖畔のショートルート(Back of the Lake)を登りに行きました。



レイクルイーズは観光客で大賑わい。



綺麗な湖をバックに快適なクライミング

キンイロジリスにも出会いました。


何本か登ったあと、17時にパラダイスバレーに向けて出発。

トレイル入り口の看板をみると、「パラダイスバレーキャンプサイトまで10.5km」とある。あれ、5kmのはずでは・・・?!
どうやら私が地図を読み間違えたらしい。
日の入りは8時過ぎくらいだけど、大丈夫なのか?
平坦だと思っていたトレイルは意外と登りもある。急ぎ足になりました。
途中、若者の1団が後ろからやってきて同じキャンプ地に行くというので、ちょっと安心しました。
中間地点のAnnettte湖に着いたところで1時間20分くらい。看板にはあと4.7kmとあってやっと安心しました。


Mt.TempleとLake Annettte


森の合間にガレ場


パラダイスバレーから見たGrand Sentinel

パラダイスバレーの湿原

Temple山の氷河を見たり、明日登るGrand Sentinelの岩塔が見えてテンション上がり、5kmの予定が10kmになったこともどうでもよくなりました。

ミーミーなくナキウサギにも遭遇しました。ガレ場にたくさんいました。声はすぐわかるけれど、保護色で見つけにくいです。
Pika(ナキウサギ)は保護色で見つけにくい

結果2時間40分でキャンプ地につくことができました。パラダイスと言うだけあって、山に囲まれた花園のような良い場所。あまりのんびりできなかったけれど、バガブーで食べるはずだったカレーを食べたり、星空を眺めたりキャンプを楽しみました。


5日目 ガレ場と犬、謎の生き物

パラダイスバレーの朝

朝、準備していて重大なことに気づく。コンタクトが片目の度数のしかない。私はガチャ目なため、左右の度数がかなり違うのです。予備として持ってきたコンタクトもすべて度が弱い方。メガネもない。仕方ないので、右目を2枚重ねにしました(それでも度数足りない)。3枚重ねを迷うが目の健康のためにやめておきました。かなりテンションが下がりました。以前も同じ失敗したことがあるのにまたやってしまった・・・


出発前に付近の山で盛大なロックフォールの音。舞い上がる砂埃(岩埃?)。大規模なのは初めて見たので感動しました。


時間があったらFirst Ascent Route5.9(gear)とCardiac Arete 5.10d(sport)と両方やるつもりでカムも持って行くことにしました。


キャンプ地から1時間半くらいトレイルを歩くと(予想より遠かった)、岩塔付近についたのですが、ガレ場をトラバースする地点がよくわからない。

ガレガレの落石地帯なので道なんかないのかもと思い、適当なところからトラバース気味に登っていきましたが、これがかなり悪い。ガレを半分ぐらい渡ったところで踏み跡が見つかり、そこからはすんなり取り付きのコルまで行くことができました。やっぱり人が歩いた跡は全然違いますね。
アプローチで時間を食ってしまい、Cardiac Arete1本だけを登ることにしました。


トラバース中(後ろにセンチネル峠が見える)

Cardiac Arete 2P目

パラダイスバレーからのトレイルがはるか下に見える

2P登ったあたりで、3人のクライマー+犬がやってくるのが見えました。

彼らはトポにあるアプローチ通り、センチネルパスを超えてやってきたようです。

全4Pとも快適、爽快なルートでした。

頂上は狭くて、小川山のサイコロ岩の上くらい。
私は高いところが怖いのであまりウロウロしませんでした。

下降開始し、3P目のビレイ点で後続クライマーと出会いました。
彼らもバガブーの予定でしたが、9/2(立ち入り禁止が発表された日)にバガブーの小屋に着いてすぐに帰れと言われて降りてきたそうです。バガブーに全く行けなかった私たちもがっかりでしたが、小屋に着いてすぐ帰れと言われた彼らの方ががっかり度は大きいかもしれません。
チェコの人たちで、女性が1人、男性2人でしたが皆体が大きくロープも太い。私のダブルロープ(7.9mm)を見て、「それ1本で登っているのか?」と聞いてきました。私の体格ならダブル1本で登ってもおかしくないと思ったのかもしれません。
犬が下にいるけど、良い子だから噛まないから安心して、と言われました。名前はギリで男の子。彼らと別れ、取り付きに降りてワンコに挨拶しました。ギリ、ギリ、グッボーイ。
そこでハッと気づく。ギリギリボーイ?こいつの名前はギリギリボーイズからとったのか?再開したら聞こうと思ったのですが、彼らはまだ登坂中、その後再開することはなかったので真相はわかりません。

帰りのガレ場のトラバース。朝と違って、気温が高くなったせいか、ほぼ常に上部で落石の音がしていました。横切る地点まで勢いよく落ちてくることはまれのようですが、音を聞くとあまりいい気分ではありません。

踏み跡をたどっていくと、今朝トラバースした地点よりだいぶ高い位置でトレイルに合流しました。Takakkawに引き続き、悪い場所を登ってしまいましたが、ガレ場にはだいぶ強くなったんじゃないかと思います。
岩塔を振り返ると、チェコ組が頂上にいるのが見えました。人がいると大きさがよくわかります。


ハイキングのトレイルまで降りて一安心


チェコの3人もトップアウトした模様

キャンプ地に戻り、撤収して17時半ころに出ました。帰りは順調で、2時間ほどで駐車場まで戻れました。

帰り道の途中、橋の上に毛皮が落ちていました。

突然、それはむくりと起き上がりました。
子熊?と思いましたが、違います。
のそのそっとゆっくり。こちらを振り向いたその顔は猿?


猿みたい!

得体のしれない生き物に遭遇してびっくり興奮しました。
後で調べたらカナダヤマアラシでした。体調1m以上はありましたが、カナダヤマアラシは他のヤマアラシと比べて大きいそうです。

この日の歩行距離は20km以上。バガブーのために体力つけておいてよかったと思いました。そして歩けるおかげで色々な動物に会えたのもよかったです。


(後編へ続く)









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