北欧旅行とBohuslänでのクライミング2

 その1からの続きです


Hällerキャンプ場で、先にスウェーデン入りしていた日本人グループ(Yさんたち)と、その友人のスウェーデン人と、みんなの共通のフィンランドの友人Aと再会しました。

まずはHällerで登ろうと、岩場へ移動しました。
昨日の夕方、手前側を見に行ったら岩が濡れていたのですが、奥の方の壁は意外にも乾いていて問題なく登れました。

MALLOROL®️


デンマーク人のおすすめリストにもあったMALLOROL®️という35mのルートを、みんなで順番に登りました。グレードは6。スウェーデンは独自グレードで、一応デシマルやフレンチへの換算表もあるのですが、単純に比較はできないと思います。
トポには3〜9+/10-まであり、それぞれ数字ごとマイナス、ノーマル、プラスがついています。ボリュームゾーンは6- 〜7+で、トポ記載ルートの6割がこのグレードです。

登られるルートに偏りが出ないよう、ルートに星を付けない主義だそうですが、おすすめピックアップリストはありました。ワイド特集、とか、チムニー傑作、とか、名コーナークラックとか。グレード別のおすすめリストもありました。
結局のところ、特定のところにクライマーが集中していて、人気の岩場や人気ルートは、明確にわかりました。

トポには、使用ギアの表示はなくて、実際に登ってみないとわかりません。プロテクションが難しいものも多いし、ルートに”R”と書いてなくてもRのやつもあるから気をつけて、とも書いてありました。
また、終了点は自分で作って、フォロー回収で懸垂か歩きで降りるのが基本です。
駐車場や岩場までのアプローチは細かく書いてあるし、駐車場に看板を立てて整備していたり近隣の住民への配慮を細やかにしているのですが、ルートの説明や、下降方法についてはあまり書いてない印象です。
なかには駐車場から岩へのアプローチ詳細や、壁の図さえないことも。
私たちも、今回見つけられなかったルートがありました。



話はMALLOROLに戻ります。
フォローなので、気持ちよく登れたのですが、リードだったらちょっとおっかないな、と思ってしまいました。


少し歩いて降りてから、懸垂で降りました。
デンマーク人に「雨が降ると、牧場の牛たちが雨宿りしに来て、糞がたくさんあってロープ大変なことになるから、気をつけて」と言われていた場所でした。幸い牛の糞はありませんでした。



この日で、ストックホルムに住んでいるWさんのみ、帰りました。同じくストックホルムに住んでいるDさんが途中まで車で送って行ったそうです。
ストックホルムから車だと6時間くらいかかるそうです。
デンマークやオスロよりも、ずっと遠いですね!


4/29 朝の散歩と

朝、キャンプ場から森を抜けて湖まで散歩しました。
鳥の声が素晴らしいです。特にスウェーデンの国鳥であるクロウタドリの声。





この日も、Hällerで登りました。
昨日登ったMALLOROLをもう一度登りました。
私はアキレス腱周辺が痛くなってしまったし、みんなTorLine(グレードは7)というハングした悪そうなのをやりだしたので、私はのんびりとクライマーと野鳥の観察をしました。岩壁にはカラスやゴジュウカラがいました。周りの森にはお腹の黄色いシジュウカラやキバシリみたいなのがたくさんいました。フィンランドで見かけたアオガラはいませんでした。

この日は、クライミングの後、Yさんたちが借りている家に行って、夕食をご馳走になりました。スウェーデン人のDさんがエルク(ムース)のシチューを作ってくれました。

近くのスーパーでかったムースの肉


付け合わせのマッシュポテトの盛り付けが見事でした。Dさん曰く、大皿にドーンと盛って、みんなそれぞれ好きなだけ取って食べるのがスウェーデン流だそうです。じゃがいもがとても美味しいです。別の日にご馳走になったオーブンポテトもとっても美味しかったです。


ムース(エルク)も美味しかったです。
帰国して、このブログを書きながら調べていて、ムースがエルクと同じ動物だと知って驚愕しました。私はカナダでエルクという動物を知ったのですが、北米のエルクとヨーロッパのエルクは全く違う動物を指すのだそうです。なんてややこしいのでしょう。確かにムースはスウェーデン語でÄlgです。最初、ムースのシチューにすると聞いていたのに、買ったお肉がエルクだと言っていて、パッケージを見たらムースって書いてあって、???だった謎がやっと解けました。

取り分けたシチュー

デザートはアイスクリームです。
クラウドベリーのソースをかけて食べました。収穫の難しい貴重なベリーで、味は大人向けだとの説明でした。確かに、他のベリーより酸味が少なく、リキュールのような苦味がありました。

アイスクリームにクラウドベリーソースをかけた

食後、Dさんは、塩味のリコリス(黒い昆布飴みたいなおかし)をバクバク食べていました。
他の国でもリコリスは食べたことありますが、塩味は初めてで、衝撃的でした。スウェーデンでは塩味が主流なのか・・・後日、スーパーのお菓子詰め放題コーナーにも、しょっぱいやつや、漢方をまぶしたような苦い薬味のリコリスがあってびっくりしました。
中にはピンク色でコーティングしているのに苦しょっぱいやつもあって、見た目とのギャップがたまらなかったです。食べているうちに癖になる味だそうですが、私はもう食べたくないな・・・と思いました。ちなみに、詰め放題のお菓子に「わさび豆」「Japanese mix」なんかもありましたよ。


ソルティーレベルが表示されたリコリスのパッケージ


お腹一杯になってキャンプ場に戻りました。
デンマークの2人は日曜日に帰ってしまったので、誰もいない共同リビングのソファーで寝てしまいました。






4/30 マスケンの岩場と春のお祭り

この日はMasken(マスケン)という人気ルートがある岩場へ行きました。
一昨日見に行ってビショビショだったところです。



今日はいい天気で、一番乗りで岩場へ向かいました。


まずは、DNAという 2ピッチの6-を登りました。私はフォローでしたが、出だしがちょっとおっかない。
それから6+のフェースっぽいルートをトップロープで登りました。これまたリードだとプロテクションが細かくとりにくくおっかないなと思いました。

この2本を登って足痛になって私はクライミング終了。
他の人がマスケンをトライするのを見学しつつ、Yさんたちとおしゃべりして過ごしました。






この日は、クライミングの後、近くで春のお祭りがあるとのことで、参加してきました。北ヨーロッパでは「ヴァルプルギスの夜」として、春を迎える重要な行事だそうですが、全然知りませんでした。地元の人たちがレストランの前の広場に集まって、歌を歌い、スピーチがあり、その後、大きな篝火をたいてその周りに集いました。




その後、レストランでビュッフェ形式で夕食になりました。お祭りのための特別なビュッフェだそうで、Dさんが予約してくれました。どれもこれも美味しくて、たくさん食べすぎてしまいました。



ここRoe gårdにはレストランのほか、お土産物屋や子供のための遊び場、貸し家などがあります。おそらくここらの大地主なのでしょう、この日登った岩場の地主でもあります。


ここの木製のトイレが可愛らしくて、つい写真に撮ってしまいました。




5/1 TorLineビレイと筋トレ
クライミング4日目、ですが、私は登らず、ビレイのみでした。
キャンプ場や岩場で筋トレしたのみ。
ストックホルムから来たという4人組がいたのですが、「Gamba!」と日本語で言われてびっくりしました。グループの1人が先週日本に行っていたんだそうです。


昨日散歩した湖のそばの岩場でYさんたちが登っていたので見に行きました。



その後、Aが、長年トライし続けているOffLineという被ったオフウィドゥスのルートにトライする、というので見に行きました。そもそも、ここBohuslänのことをAから聞いた時、すごくいいワイドクラックがあるんだ、と言ってこののOffLine写真を見せてくれたのでした。
キャメ#5の被った右上ラインです。



残念ながらAは、完登なりませんでした。また次の機会に、と言っていました。


夕飯はまた、Yさんたちの家に行って、一緒に食べました。
ストックホルムのDさんとフィンランドのAとはこの日でお別れでした。
いろいろ話せて、とても楽しいひとときでした。


5/2 そろそろリードしたい

昨日クライミングしていないし、そろそろリードしたいと思って、グレードは低いながらも綺麗なクラックだったと聞いた岩場に行きました。SlimLineという有名なルートのある岩場です。

岩場に向かう途中の水辺にグースの雛がたくさんいるのを見て大興奮しました。朝日に照らされた雛の羽毛がキラキラと輝いていました。後で、ゆっくり見にこよう、と心に決めました。


岩場は一番乗りで、誰もいませんでした。
2ピッチで登るグレード4のルートです。
最初のピッチはグレード2で、歩きみたいなもんだろうと私がリードでとりつきました。本当に簡単だけど、支点を作る場所にちょっと迷って、いったん降りたため、2P目は1P目フォローしたSにそのまま登ってもらいました。


2P目の途中に赤いピカピカの新品のカムが残置されていて、回収しました。フォローした人が回収し忘れたのでしょうか。トップアウトしたら、誰かがやってくるのが見えました。

一人だけのようです。SlimLineをトップロープソロで練習しに来たのかもしれないと思いました。
Yさんグループもやってきて、他にも2組やってきて岩場は賑やかになりました。



私とSは、周辺の岩場を見にウロウロしましたが、なんだか湿っぽくて登攀意欲がそそられませんでした。
リス注意の看板を見つけましたが、リスは一度も見かけませんでした。


別の場所に移動しようと思って荷物をまとめていたら、さっき見かけたソロの男性が懸垂で降りてきました。
そしたら、友達のためにカムを回収しにきたのに、なくなっていて残念だった、言っているではありませんか。それは赤いやつか、と聞いたら、そうだというので、私が回収したやつを渡したら喜んでいました。
先に私たちに声をかけてくれていたら、よかったのにな、と思いました。わざわざ裏から登って懸垂で降りて、しかも下降ポイントではないところから降りたせいか、ロープを下ろす際にロープが岩に喰われてしまって、大変な目にあっていました。でも、私たちが移動する前に気づいてよかったと思いました。


その後、トポを見て良さそうな写真のクラックのある岩場に移動しました。
移動の途中で、朝見たグースがたくさんいる水辺の近くで車を止めて鳥を見に行ったのですが、車から降りると人の姿に警戒するのか、近づいて観察できませんでした。車中から眺めたほうが良いようです。




さて、岩場に到着しました。
写真の看板ルートは濡れていましたが、同じ壁の端の方に、綺麗で濡れてないラインがあって、ひと目で気に入りました。グレードは5ーとお手頃です。

一度トップロープ状態で登ってみてから、リードしました。


このルート(Slippery when wet)を登っている最中、Yさんたちからメッセージが来て、私たちのいる岩場がどこか聞かれたのですが、壁の名前覚えられなくて、手元にトポがないから伝えられなくて困りました。
ここはSvaneberget(白鳥山)と言うのですが、スウェーデン語の表記に慣れていないので、パッと岩場の名前が出てこないのです。その後も、キャンプ場で会ったクライマーに「今日はどこに行ったの?」と聞かれても、壁の名前で答えられないので、「マスケンのある壁に行った」などと、代表ルート名で答えていました。

で、この白鳥山には日本語のルート「Yojimbo」があることを思い出したので、なんとか場所を伝えることができました。
他にも日本語と思われるルート名「Yamamoto」がありました。「Yojimbo」「O-ren ishii」は映画関連だと思いますが、Yamamotoって誰のことなのでしょう・・・

日本語といえば、スーパーに「Onaka 穏 」というヨーグルトドリンクが売っていて驚きました。調べてみたら、昔からの定番商品らしいです。

さて、Yさんたちとまた合流して、彼らはここの代表ルート「Bergkirstis polska(少し濡れてるけど大丈夫)」を登りました。

ここのアプローチの道は両側がお花畑で綺麗でした。



この日から2泊、DさんとAがいなくなって、部屋が空いたので、Yさんの家に止めさせてもらいました。

5/3 マスケン
Masken(グレード7の綺麗なフィンガークラック)をやるSのビレイに行きました。
アップもなく、いきなり取り付いたせいか登れず、2回トップアウトして、この日のMaskenトライは終了しました。



前にも書きましたが、ここの岩場の前の草原にはスミレがたくさん咲いていてとても綺麗です。



ちょうどお昼になったので、春のお祭りで行ったRoe gårdで一休みしました。
頑張ってスウェーデン語で注文してみたら、お店のお姉さんは全部スウェーデン語で返してくれて嬉しかったです。お姉さんの腕の、ピヨちゃんのタトゥーが素敵でした。


その後、Yamaotoのある壁に行ったのですが、駐車場が有料で、Swish(スウェーデンのペイペイみたいなやつ)か現金支払いのみ、だったので、「今日は他のところでいっか」とHallindenという超人気の岩場へ行きました。Dさん曰く、Bohuslänで一番良い壁。デンマーク人にも「絶対に行くべき壁」とお勧めされたところです。






駅の駐車場に止めて、線路沿いに歩き、その後、畑を突っ切って壁に向かいました。
ちょうど、肥料を撒く時季らしく、あたりはものすごく臭かったです。

55mのPrismaster6- を登りました(私はフォロー)
フォローだけど、出だしから緊張感がありました。もし、落ちたら、ロープは伸びるし振られるし、アキレス腱が心配です。上には全然声が届かないと思いましたが、おっかないところは「ヨイショ〜、ハァ〜ドッコイショ〜」と掛け声をして登りました。



なんとかロープにぶら下がることなく、登り切りましたが、上に着いたら「歌いながら登って楽しそうだったね」と言われました。


私たちの後に、屈強そうな男性3人組が同じルートを登ったのですが、フォロー2人が、1本のロープに数珠つなぎ(5m間隔くらい)で登っていて、びっくりしました。真ん中の人が落ちたら、末端の人も巻き込まれて怖いと思いますが、全然落ちる気配がないのでOKなのでしょう。


このルートの左に綺麗な短めのクラックがありました。人気らしく、何人も登っていました。この地域では珍しく途中に終了点が打ってあって、すぐ下降できるようになっています。グレードは6-で、小川山のカサブランカ的なルートでしょうか。


帰りは線路を通りました。
電線は取り外されてるし、廃線かと思いましたが、レールは綺麗に残っていたので貨物列車がたまに走るのかもしれません。電車は一度も見かけませんでした。





5/4 Yさんたちともお別れ
 Yさんたちは、この日がBohuslänの最終日。
Hallindenの岩場で一緒に過ごした後、駅の駐車場でお別れしました。

私は、昨日見て気になっていた6-のVad är otid?をトライしました。
1便目はプロテクションセットに手間取って、疲れテンションしましたが、2便目で登れました!
TR練習なしでトラッドルートを登ったのは、怪我後初めてだったのでとても嬉しかったです。
やはりオンサイトトライのドキドキ感こそ、クライミングの醍醐味だと思います。

張り切って出発



肥料をまくトラクター


Hallindenの壁

ところで、ここBohuslänでは、東洋人どころかヨーロッパ以外の国のクライマーは珍しいようです。キャンプ場のクライマーハウスに、「あなたの住んでいるところをピンでさして」地図がありましたが、ほとんどヨーロッパでした。特にノルウェーとデンマークが多いです(スウェーデン人より多いかも)

こんなに良いところなのに、なんでもっと知られていないのかな?と思いましたが、
Aの考えでは、スウェーデンに来る時間を考えると、フランスやイタリアやスペインのもっと歴史ある有名な岩場に行った方がアクセスがいいからだそうです。
地元クライマーが言うには、「壁がとても小さいのに、わざわざ遠くから来ない」そうです。
確かに、日本のゲレンデ的岩場から考えると大きい壁ですが、世界のスケールではとても小さな壁なのでしょう。スコーミッシュのチーフのような大きな岩はありません。そして、山ではないのです。岩場はたくさんあっても、アルプスやロッキーやヒマラヤのような壮大さは確かにないです。RXのオッカナイルートでは、有名なルートがあるのかもしれませんが・・・

Yさんたちは、ここが有名になって日本人がたくさん来たら嫌だからあまり人に教えないと言っていましたが、その心配は当分いらないんじゃないかと思います。

Yさんたちは2度目のBohuslänだったし、スウェーデン人の友人もいるので、短期間でも準備よく登りたいものを登ることができますが、
日本でトポを入手できたとして、準備するには情報が少なすぎて準備が難しいと思います。実際私たちは、現地に知り合いがいる+15日間滞在+怪我しているのであまり登れなくてもOKという姿勢、だったからよかったのです。

それに恐ろしいマダニの感染症も最近スウェーデン南部で激増しているようです・・・

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