残念バガブー、でもカナディアンロッキーは楽しんだ(後)


(前編からの続きです)


バンフ国立公園にて滞在の5日目までは毎日楽しいFunクライミング。

後半はもっとトラッドでアルパインぽい感じにしたいと考えました。


6日目 ヘッドジャム
レイクルイーズ滞在はあと2日。
最終日はギアショップ店員さん一押しのサドルバックにあるToys in the Atticを登ることに決め、その前にスポートではなくギアのルートがやりたいねということになりました。

候補は2つ。1つはバベルの塔のNWDirect。もう1つはルイーズ湖畔のカレイドスコープエリアにあるNautilus。バガブーの代わりに登るのだから長いルートがいいと思い、バベルの塔に行くことにしました。
が、バベルの塔のあるモレーンレイクへ行く道が駐車場満杯で入れなくなってしまいました。昨日、帰りが遅くなったので朝はゆっくりにしたせいです(シャワーも浴びたかった!)。

仕方ないのでプランBのカレイドスコープへ行くことにしました。
アプローチは湖の末端のデルタ地帯を渡っていくとの説明だったので、渡渉地点を探しましたが、川が大きくて靴のまま飛び飛びで行けませんでした。濁っているので川の深さがわからず、あまり入りたくなかったのですが膝くらいですみました。
氷河の水は冷たい!
湖畔の藪地帯の踏み跡をたどって(やはり少し迷う)取り付き到着。

なぜ、このNautilusが候補だったかというと、トポの写真に「ヘッドジャムのトラバースが上部に見える」と言う説明があったからです。ヘッドジャムってどんなだろう?城ヶ崎のヘッドオポジションを連想してしまいました。


確かにルーフにでかいクラックが見えます。ルーフの見た目に威圧されましたが、私の場合は体がすっぽり入ったので、ただのスクイーズチムニーになり快適でした。体が大きいと頭しか入らないのかもしれませんね!
綺麗な湖をチムニーの隙間から覗きながらの登攀は楽しかったです。

隙間に入った私


拡大


3p目はラインが良くわからなかったけれど、懸垂地点に無事たどり着き、下降。
エメラルドグリーンの湖


隣の壁にクライマーがいました。彼らは先に降りて、だいぶ湖よりを渡渉して帰って行きました。帰りは私たちも同じようなところを渡渉しました。



渡渉するクライマー2人


帰りの渡渉


帰りは気温も高くなっていたので、冷たさは行きほどでもなく、泥が心地よかったです。
湖畔にて、たくさんの人が一生懸命写真をとっていました。
ちょうど夕日が山の頂上にかかっているところでした。


いい感じに夕日が山にかかる

帰る途中、モレーンレークへの道路に入れたので、バベルの塔を見に行きました。
今回は、日程の都合上諦めました。
バベルの塔 名前の通りバベルっぽい


7日目 Saddle Back

レイクルイーズ最終日。クラシックルートのToys in the Atticを目指して出発。
アプローチのハイキングトレイルがどれなのかいまいちわからないままトレイルを行く。途中、何度も雷鳥に出会いました。


あまり人を警戒しない雷鳥

1時間ほど歩いてもまだサドルの壁はみえなくて、
しまった、トレイル間違ったか?と不安になり、トポのアプローチ説明をもういちど読み直して、一旦戻るかどうか迷ってうだうだしていると、後ろから誰かやってきました。
クライマーなのか?ハイカーなのか?
彼らのザックにTCプロがぶらさがっていました!
どこに行くのか聞くとサドルバックだといいます。一緒に行くかというので、お言葉に甘えてついていきました。ほどなく、サドルマウンテンが見えてきました。


サドルの形した山
クライマー道への分岐で、彼らはハーネス付け始めました。ガイド登攀なのでここで付けるけど、君たちには多分必要ないよと言うので、私たちはヘルメットだけつけて、先をいくことにしました。彼らはToysの隣のルートを登るとのことでした。

1p目の特徴的なスロットを探して取り付きを見つけ、登攀開始。
トポの記載通り悪いスロットで、今回で唯一テンション入ってしまったのはちょっと残念でした。トポにはご丁寧に、もともと5.9で今10c、本当はもっと悪いかもと書いてあります。Tim Auger氏のルートで、彼はヨセミテの影響を色濃く受けているらしい。「もともとは5.9や10が今は11に〜」というのは他にもいろいろあるらしい。Tim Auger氏は他にも素晴らしいルートをたくさん開拓したようです。

1p目のスロット。


2p目のハング下トラバースにはでっかい鳥の巣あり。(私の左に見える)
2p目ハング下のトラバースには大きな鳥の巣があり、壊さないように気をつけて横切りました。でかい鳥の巣でした。留守でした。どんな鳥なのか気になります。

4p目はとても素晴らしいクラック!!
パラレルではありませんが、インディアンクリークやザイオンのクラックにも劣らないと感じました。これで5.9なのか!とも思いました。
残念ながら4p目の素晴らしいクラックの写真は取ることができませんでした。ビレイヤーから何も見えなかったのです。
そしてさらに残念なのは、この日はよりいっそうガスガスだったこと。あとで聞いた話によると、ガスと言うより山火事の煙らしいです。


ガス(煙?)で霞んだ景色


5p目で隣のルートと合流しました。ガイドさんたちが一歩先でした。
このToys〜 とてもいいルートなのですが、写真を取るにはイマイチいいポイントがありませんでした。私たちの写真技量の問題かもしれませんが。
岩は赤紫の綺麗な岩(クォーツァイト、珪岩)で、晴れていたらもっと岩肌が綺麗に写っていたことでしょう。


5p目出だし

山頂に着くと、先行のガイドパーティーはもういなくなっていました。

懸垂で取り付きまで戻る予定でしたが、風も強い上に下降点はクライムダウンしなければ探せなさそうで、上部がかなり脆かったので、歩いて降りることにしました。


下降地点探してウロウロ


下降路ですが、やはり迷って適当なところから降りました。そして、最初のハイキングトレイルとクライマー道の分岐に到着しました。ガイド登攀の彼らが全荷だった理由がわかりました。ここから取り付きまで30分くらいあるのです。往復1時間!

翌日は雨予報でレストの予定。空模様も崩れそうな感じです。
この日の夜、バンフの街に戻りました。再度、トンネルマウンテンのキャンプ場です。もう宿泊場所探すのに疲れてきたので最後まとめて4泊にしました。空いていて良かった!




8日目 土砂降りのドライブと氷河ウォッチング

朝起きるとよく晴れていたので、今回初めて洗濯しました。服が砂だらけなので、洗うと泥水になりました。

17ドルで食べ放題と言うバンフのホテル内にあるビュッフェに行ってたらふく食べたあとルイス山への駐車地とトレイルの下見にいきました。明日はルイス山のKain Routeに行くのです。バガブーのKain Routeの代わりにのぼりたい。10aとかの他のルートの方が面白いのかもしれないけど、同じKainさんのルートが登りたい。私の強い希望で決めました。

ルイス山のダイヤモンドフェースは、数年前ソニー・トロッターが来日した際に、川上村のナナーズのイベントで紹介されていたのでした。その時はやはり、へーすごいでかいフレークだなー、くらいの感想しかなかったのですが、同じ山に行くことになるとはなんとも不思議な気がしました。ダイヤモンドフェースのThe Shining(5.13c/d)は今回購入したトポ、Banff Rockの表紙を飾っています。

午後は、氷河を歩いてみたいので、コロンビア・アイスフィールドへ行くことにしました。2時間半くらいのドライブ。93号線に入ったあたりで土砂降りになりました。洗濯物が心配です。
コロンビア・アイスフィールドに着くと小雨程度になっていたので氷河の末端まで行きましたが、ガイド登攀以外立ち入り禁止と書かれロープが張られていました。禁止されなくても、氷河とトレイルの間に川があって入れません。


コロンビア大氷原

いかにもな観光地で、人が多いし、天気も悪いし、寒いし、氷河のガイドツアーにも興味なくてすぐ帰りました。帰る途中、ウィルソン山の麓の休憩所でご飯を食べました。ウィルソン山にもクライミングルートがいろいろあるそうです。
ウィルソン山のあたり


バンフに戻ったら、ついさっきまで雨だった模様。

案の定、キャンプ場に干してきた洗濯物が乾いてない。仕方ないので翌日の服を着て寝ました。
1号線の休憩所から見たMt.Randle




9日目 セミ・アルパインと星空ハイキング

駐車場に着くと他のクライマーも準備しているところで、どこに行くのかと聞かれました。ルイス山のカインルートではなくシャイニングと答えられたら良いのですけれど。

ここでまた、やらかしたことに気づきました。水1Lをテントに忘れてきてしまったのです。もう1つのプラティパス1Lだけでは心もとないので、500mlのナルゲンボトルを持って行き、途中の沢で水を組みました。

ルイス山の手前までは、6kmほどですがトポにある時間よりかかってしまいました。ここでも雷鳥に出会いました。

Mt.Louis

今までもそうですが、今回もアプローチを少し迷って時間がかかり、取り付きと思しき地点まで結局3時間くらいかかってしまいました。
カインルートの出だしの北西面の下部はだだっ広い緩傾斜の壁のためどこでも登れてしまうために迷いながら登ったので、ここでもまたリッジに出るまで時間がかかってしまいました。

取り付きから上部を見上げる


快適なリッジ






雨上がりのため、滞在中で一番空気が澄んでいました。空気も冷たくなって、風もあります。寒くて早く南東側に出たいなあと思っていたら、下からノースリーブ短パンの男性と普通に長袖長ズボンの女性がコンテでやってきました。私がリッジでビレイしている時に追いつかれました。

彼らもバガブーに行くつもりだったらしいです。
やっぱりアメリカ人でした。見た目がいかにもヨセミテクライマーっぽかったのです。
彼らとほぼ並行してランチタイムレッジまで行きました。

青い空気が谷に溜まっている



ダイヤモンドフェースは真っ平らに見える



快適なリッジその2



駐車場であったクライマーが南東壁の別のルートのぼってきて、私たちより先に上部を抜けて行きました。
素晴らしい天気で日曜日で昨日雨だったのに、この山には今日たった三組しかいないようです。




ヨセミテ組を先に行かせて、私たちは名前の通りランチタイムレッジでランチにしました。シンプルなトルティーヤのハムロールがとても美味しい!

Cory Passとそのトレイル

ヨセミテ組は変なところを行ったのか、女の子がトラバースで怖がって停滞していました。結果彼らより一足先に、最後のやや急なクラックピッチに到着。駐車場出会った先行クライマーに追いつきました。


最後のクラックと先行クライマーたち



近くにMt.Edith,遠くにMt.Randle


ヨセミテ組は左側の壁を登って行った

ヨセミテクライマーたちもすぐに追いついてきました。
待つのが嫌だったのか、そういう趣向なのか、左側のオフルートをフーフー言いながら登っていました。



頂上から北側を見る

頂上は360度の展望、どこもかしこも山だらけです。

Mt.Louisの頂上から。
はるか遠くピラミッド状のアッシニボイン山が見える

風が冷たく、時間も迫っていたためあまりゆっくりはできず、下降開始しました。


日が落ちてきて、急いで下降

よく整備されていてわかりやすい懸垂ルートです。落石の流れとかロープの流れをよく考えているようです。トポ通り、1時間ほどで地面につきました。

地面に着


ヨセミテたちもすぐ後から降りてきました。ヨセミテの彼はちゃんとジャケットとズボンを着用していました。さすがに寒いよね!

トレイルに戻った時はすでに日が沈んでしまいました。帰りの真っ暗な林の中、見上げると星が綺麗で、素敵なナイトハイクになりました。


暗くなってしまった


駐車場に戻ったのは22時半を過ぎてしまいました。
いろいろと時間はかかってしまったのですが、私にとっては今回で一番満足した登攀だったと思います。コンテとか懸垂とかも1ピッチとして数えると22ピッチくらいでした。
全部コンテにしてたら全然早かったのになあと思いましたが、ルートや支点がどうなってるかよくわからないと慎重になってしまいます。

ところで、トポであるBanff Rockの裏表紙には「シングル、マルチ、セミ・アルパインのルートが含まれています」とあるのですが、セミ・アルパインって初めて聞きました。ルイス山はセミアルパインでしょうかね。

街のお店ももう開いていないので、キャンプ場に戻って、バガブーで食べるはずだったパスタを食べました。パスタ茹でるのに時間がかかり、ガスがなくなったのでこの夜でもう自炊はおしまい。
就寝は24時を過ぎてしまいました。



10日目 キャンモアの障子岩と湖畔のジリス


朝、キャンモア移動。朝焼けが綺麗です。


キャンモアの朝焼け


エレベーションプレイスの駐車場で、事前に約束していたKさんと会いました。
バガブーのことで事前に色々情報をいただいて、滞在中もなにかと心配してくれたKさんに感謝です。

キャンモアから近い石灰岩のスポートエリアであるハートクリークにKさんたちと一緒にいきました。Upper Amphitheatreは障子岩の二階に似ていなくもない。

説明を追加

夕方から仕事のためKさんと別れ、私たちはさらに奥のエリアを見に行きましたが、プリクリの課題ばかりのようで食指がわかず、滝を見ただけでハートクリークを後にすることにしました。
最後に動物(ジリス)が見たいという私の希望で湖へ行きました。偶然にもジリスの穴だらけの場所にたどり着きました。


たくさんの穴を掘ったジリス


Lake Minnewaka



11日目 さよならルイス、さよならロッキー

帰国の日。早起きしてパッキング。私は食料の分減ったので楽々でしたが、相方はなぜか荷物を2つに分ける羽目になってしまいました。カナダエアは2個まで無料で預けられるので良かったです。

今まで気づかなかったけれど、ルイス山はトンネルマウンテンロード(キャンプ場から街場へ降りる道)からも見えました。さよならルイス!

最後にレスト日に行ったビュッフェにまた行って、たらふく食べました。

運転中、ビッグホーンシープの群れを見ました。エルクやマウンテンゴートとか、シカっぽい動物には今回あまり合わなかったので嬉しくなりました。



カナディアンロッキーの動物
コロンビアジリスとマウンテンゴートに会いたかった


あっという間にカルガリー空港についてしまいました。
空港は閑散としている上に、チェックインから荷物手続きが無人化されていて、出国審査もなく、スムーズでした。搭乗までゆったり。

帰りの飛行機からはロッキー山脈を見たかったのですが、行きと違って北極近くまで飛んでロッキーを越えない航路のようで、ずっと湿原や畑や雲しか見れませんでした。

あまり眠れない上に、朝いっぱい食べたのにすぐに空腹になってしまい、トポを読み返して過ごしました。

いいトポもあるし、登るところはたくさんあるし、アクセスもいいし、キャンプ場は快適だし、リスはたくさんいるし、美味しいお店は多いし、夏はまたバンフに来たいと思いました。

もちろんバガブーも再チャレンジしたいです!



baked potato
カナダの芋は美味しい
終わりに
今回、現地で即興の計画を立てて、楽しく登ることができましたが、3年前の自分では無理だったことだなと感じました。

英語のトポをすぐに読むことができたのも、ここ数年で各地のトポやクライミング関連の記事を英語で読んできた経験があってこそだと思いました。
そして、壁の大きさやアプローチの距離にビビらず、簡単だけどボロいところでプロテクションがしばらく取れなくてもある程度は平気になってきているので、今回のようにいろいろな場所を登ることができたと思います。

もっと登攀スピードが早ければもっとたくさん登れるので、その辺は今後の課題だなと感じました。

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