2020 東北の沢ツアー 葛根田川・大深沢




今年、やっとクライミングに専念できる生活を得たというのに、コロナの影響で計画がオジャンになってしまった。GWはレッドロックスに、夏はまたハイシエラへ行くつもりだったのに。。

しばらく海外遠征は無理だなあ、ということで、このところ沢ばかりです。
今までは、クライミングするには天気が悪い場合の代替として年に数回行く程度だったのが、結構な頻度で沢に通っています。まあ、簡単なところばかりですが。

せっかく沢に慣れてきたので、普段の週末では行けない場所で、泊まりの沢に行くことにしました。

休みが7/25〜30の6日間、梅雨も明けて暑く沢日和だろうと思っていたのですが、まさかの梅雨明けず。中央アルプスから上信越、東北地方の各沢を候補にして、天気予報とにらめっこ。結局、天気が読めないので一番最初に行こうと思っていた葛根田川へ行ってみることにしました。


途中、SAから見た空模様

雨は降っていないものの、どんよりとした空。1日目は移動のみです。


田沢湖 湖畔のレストランにて

けれども、夕飯食べている間に晴れ間が出てきて、綺麗な夕焼け空になりました。明日は意外と天気よくなるかも?!と期待が膨らみます。


秋田駒ヶ岳も見えました



田沢湖近くの無料キャンプ場

4連休のせいか有料のキャンプ場はどこも予約でいっぱいだったので、無料のキャンプ場に行ってみました。バイクのお兄さん1人以外誰もいませんでした!オレンジが私たちのテントです。テントを張っていたら、管理人のおじさんがやってきて、虫が多いけど我慢して、とか、熊が怖いから食料はしまっておいて、などと言われました。やっぱり、熊が多いんですね。
昨日までは、ここのキャンプ場も人がミッシリいたそうです。天気が悪くなったせいか、連休の最終夜だからか、空いていて快適でした。
夜中、ヨタカやトラツグミの鳴き声が聞こえました。トラツグミの声を聴いたのは初めてでしたが、ちょっと不気味です。そして明け方はそれなりに雨が降りました。

翌朝、空が白むと雨も上がり、乳頭温泉郷へむけて出発しました。
当初は、沢のトポで紹介されている通り、滝ノ上温泉から葛根田川本流を遡行し、八瀬森に抜け、大深沢へと下降して、大深沢を遡行する3泊の予定で計画していました。しかし、大雨で増水すると滝ノ上温泉へ戻るのが難しくなりそうだったので、葛根田川の支流の戸繋沢から下降して葛根田の”お函”の上流に出て、大雨がきたら水量の少なそうな中ノ又沢から稜線に上がるように変更しました。


戸繋沢の源頭

一般登山道を登る途中、雨にざっとふられました。小一時間ほど登った後、戸繋沢へと入りました。この沢は、葛根田川への下降に釣り師がよく使う沢で、鉱物の影響で魚が住んでいないそうです。葛根田川へ合流する手前で、大石沢と出合うと魚がいるそうです。

最初チョロチョロだった沢がだんだん大きくなった

沢を下降してアプローチする、というのは初めての経験でした。ただの苔むした溝だったのが、大きく成長していくのを見ながら進むのは感動的でした。
くるぶしほどの水量なのに、途中、小さな釜の淵でコケて胸まで浸かってしまいました。


赤と緑のコントラストが綺麗

水が綺麗

だんだん川幅が大きくなってきました。流れも緩やか。しかし、思っていた以上に水量が多く距離も長いようです。途中、金堀沢との出合に「ここは金堀沢」という立派な看板があって、びっくりしました。金堀沢に入って遭難が多発したのでしょうか。

ナイアガラの横を下る

やっとナイアガラの滝に到着。トラロープがあったので、拝借して降ります。上の写真の後、ずるっとコケて盛大に尻餅つきました。今回、ゴム底できたのですが、失敗でした。フェルトにすればよかったです。この後も何度もコケます!

正面から見たナイアガラの滝

ナイアガラをすぎると大石沢が合流するはずですが、なかなか現れません。地形図見ても、標高がほとんど変わらないので、どのあたりか見当つけられず、右岸から合流する沢に注意しながら降りました。地形図をみる限り、それなりに大きい沢のはずですが、それらしき沢は見当たらず、ちょっと焦って急ぎます。途中、左岸から大きな支流が合流し、一気に水量が増えました。合流地点にはビバーク用に整地された跡も。こんな沢あったっけ?と思いましたが、先を急ぎます。

綺麗なナメ

それにしても、この沢、かなり綺麗です。雨直後のせいか、水量も豊富。晴れ間が出てきてとてもいい感じですが、本流目指して急ぎます。

本流なみの水量?

かなりの水量があり、本流が遡行できるのか不安になってきました。


流れが早いので落ちたくない!

川幅が狭まったところはかなりの水流です。絶対に落ちられないです。(私は泳げないので)


落ちたらかなり深い!

へつりまで出てきました。もし、1日目で雨が強く降ってきたら戸繋沢を戻ればいいと思っていたのですが、こんな状態では絶対に増水したら戻れない!と思いました。

と、下流に釣り人の姿が見えました。やっと大石沢出合だ、と喜んでいくと、、、
釣り人によると、ここはもう”お函”の下流だと言うではありませんか。
なんと、さっき、へつってきたのが有名な”お函”だったのです。
左岸からの”大きな枝沢”だと思っていたのが、本流でした。言われてみれば、間違えようがないのですが、大石沢のことばかりに気を取られていたことと、思った以上に戸繋が大きい沢と思って焦っていたので、枝沢と思い込んじゃったんでしょうね。おかしくて、大笑いしました。あのまま、釣り人に合わなかったら、もっと下流まで、もしかしたら入渓点のあたりまで行ってしまったかもしれません。

もともと、本流に出たら、荷物を置いてお函を見にいく予定だったので、行程にはあまり影響はなっかったのですが、二泊分の荷物を背負ってのへつり往復となってしまいました。

戸繋の出合に戻り、よく地形を観察してから、中ノ又出合へと向かいました。途中、強く雨が降ってきました。天気は不安定です。
釣り人たちは、「本当は泊まりの予定だったけれど、明日の夕方から50mmの大雨が来る予報だから、お函を見たら引き返す」と言って去って行きました。私たちは2泊の予定できましたが、それを聞いて、おそらく1泊にしなければならないだろうな、と覚悟しました。


ビバーク地

中ノ又出合に無事到着して、泊まりの準備をしました。着いたら、また晴れ間が出てきました。川床から離れた高台なので、増水しても安心です。実は、泊まりの沢は6年ぶり、2回目です。しかし同行者が慣れているので、安心です。

おはぎ作りました

沢で泊まるなら、やりたかったことの1つ、おはぎ作りです。美味しくできました。



焚き火

直前の雨のせいで、湿った薪しかありませんでしたが、なんとか焚き火ができました。同行者は、中ノ又沢、本流と釣りに出かけましたが、全然釣れず、夕飯は持ってきた食料をおかずに食べました。釣りの時、大滝のところで熊にあったそうです。

明日まで、雨があまりふらないといいなと思い、横になりました。焚き火はあまり勢いがなくて、途中で消えてしまったようでした。
夜中、雨音で目を覚ましました。かなり降っているような気がしました。タープは雨音が大きく感じるから、まあ、大丈夫だろうと思って眠りました。その後も、何度か雨音で目が覚めたり、寝たりを繰り返していましたが、3時には起きることになりました。頭が濡れてきたのです。濡れないようにダウンや靴下を脱いでしまって、沢服に着替えました。
明るくなったらすぐ出発できるように準備しました。私は、雨が小降りになってから出発するほうがいいなと、思っていたのですが、じっとしていると寒いのと、裸足になった足に物凄い数虫に刺されてしまって痒くて辛いので、結局なるべく早く出発することに同意しました。顔も、寝ている間に刺されたのか、お岩さん状態です。
朝食を食べていたら、いつの間にか周りが池のようになってしまいました。



濁流の本流。左が中ノ又

明るくなったところで、下の沢を覗いてみると、やはりかなりの濁流になっていました。写真だとあまり迫力が感じられませんね。


増水した中ノ又沢

中ノ又へ入るところはなんとか岸が残っていたので、入れましたが、その先のいくつかの小滝は登れそうにもなく、右岸を高巻くことにしました。


顔腫れてます

枝沢が一つ分岐したところで水量が減ったので、沢に戻りました。雨も上がって、濁流もだんだんと茶色が薄くなってきて一安心です。でも、寒かったです。


水が減って一安心

水が透き通ってきたせいか、あちこちに魚影が現れました。晴れ間も出てきました。


いきなり釣れた

今回の沢行の目的の1つは、イワナ釣り。なので、同行者、早速竿を出しました。
びっくりするほど、すぐ釣れました。

水玉が可愛い

それなりの大きさでしたが、今日はもう駐車地まで戻ると決めたので、調理している暇はありません。リリースしました。このあとも、何匹か釣れました。
イワナがウヨウヨたむろっている現場を私も確認できました。かなり上流の方までいました。

稜線に詰める沢を1本間違えて、いったん戻ったりウロウロしましたが、無事登山道に着きました。この時はまた雨でした。ここの登山道はあまり人が通らないのか、刈り払いされておらず、水が流れていて、まるで沢の続きのようでした。
大白森山荘に着いたときは晴れ、休憩して、大白森の湿原に出た時にはまた雨と不安定な感じが続きますが、少しでも晴れ間があるのは嬉しいです。


どろんこ

登山道でも顔から転んで泥だらけです。



大白森の湿原

湿原はかなり広かったです。お花もそこそこ咲いていました。

天気が悪くて残念

この後も、雨が降ったり止んだりで、泥だらけの登山道を乳頭温泉郷まで戻ったのでした。
登山道なのに、ところどころ泥沼になっていて、膝くらいまで泥にはまりました。

ブヨに刺されまくった足

駐車場に着いてから、雨がドバッと降ってきて、夜までかなり激しい雨となりました。釣り人の言っていた50mmの大雨って予報が当たったようです。
残りの日程をどうしようか、翌日レストしながら決めることにしました。


翌日、本来行くはずであった滝ノ上温泉の様子を見てから、八幡平側へ移動することにしました。天気が回復しそうなので、一泊で大深沢の上流に入る計画です。

滝ノ上温泉近くの発電所

発電所は、ダムじゃくて地熱発電でした。川沿いの発電所なので、てっきりダムだと思っていました。

鳥越の滝

葛根田川は大増水してました。駐車場にも誰もいませんでした。
この日はずっと雨が降ったり止んだり。雨が早めに上がるようなら八幡平あたりをハイキングしたかったのですが、夕方まで降っていました。明日の駐車地とアプローチに使う赤川への道を確認してこの日は終了です。

翌日、なるべく早起きして赤川へ行きました。

赤川

赤川は釣り師がよく使うアプローチの沢らしいです。簡単な沢登が楽しめます。

ニッコウキスゲが咲いています



登山道は花でいっぱい

まだどんより曇り


露が綺麗

車百合

登山道に上がってもガスが重たい感じでした。晴れていれば、すごく景色が良いだろう道です。景色はダメでしたが、花がたくさんあって綺麗でした。
続いて、仮戸沢を降りて行きます。鞍部から藪漕ぎです。

藪漕ぎ開始

ミッシリ笹

下りなので、藪漕ぎは楽チンです。笹の倒れている進みやすい方向に行けば、沢に当たるはず。


沢どこっぽいところ発見


いきなり水流に出ました

水流がある程度出てきたら、だんだん晴れてきました。
下りの途中、小滝の側壁にて岩ごと落っこちて、今回一番の大コケしました。足捻らなくてよかった!
十字峡(仮戸、北ノ又、東ノ又の三叉路)に着く頃には日差しがさんさんと降り注いできました。

十字峡から下流を眺める

十字峡の真ん中で休憩

真ん中に気持ちの良い岩場があったので、ここで装備を乾かしながら休憩しました。釣りもしましたが成果なしでした。


ナメのしぶき


休憩後、釣りをしながら東ノ又沢へ入りました。ナメ滝が良い感じです。

東ノ又沢の入り口

緑の淵と赤い岩

ナメを歩く

赤いナメが続く

ここの赤いナメがとても綺麗で、日本にこんなすごい風景があったなんて驚きでした。観光名所でも景勝地でもなくて、釣り人と沢登者しか知らないなんて・・・!
ナメをすぎたあたりで、イワナが釣れました。葛根田川の方より、腹がオレンジっぽいです。


イワナ釣れました


塩焼きと味噌汁にしました

この日は東ノ又を3分の1くらい行ったところで、泊まることにしました。
川沿いにタープ貼りました。しかし、前日までの大雨のせいか、湿った薪しか集まらず、なかなか火が付きません。対岸にダケカンバが生えていたので、皮を拝借して焚きつけました。物凄い勢いで火がつきました。マタギの本で、カバの皮を焚きつけ用に持ち歩いている、と読んだので、試してみました。効果絶大でした。(同行者は知っていたようです。沢では常識?)

本日の宿泊地

焚き火の勢いは衰えることなく、夜を迎え、夜空には星も見えました。ブヨや蚊もほとんどいなくて快適でした。そしてイワナはとても美味しかった!
夜中、パラパラと雨が降ってきましたが、大雨にはならず、よく眠れました。
朝はコマドリのさえずりで目覚めました。空は晴れています。服も乾いていて、元気に出発です。が、ゴーロ歩きでコケていきなりザックごと全身ずぶ濡れになりました。でも、今日は天気が良いからすぐ乾く!


連続する滝

しばらくするとゴルジュっぽい感じに小滝が連続します。水量そこそこ、滝壺深いので側壁をへつって行きました、が、途中高巻も必要でした。

青空が気持ちいい

ニッコウキスゲがたくさん

滝の連続地帯をすぎると、静かな沢歩きになりました。日差しが気持ちよかったです。

朝日の差し込む小滝

神秘的な光に照らされた滝を発見。うまく光が撮影できました。

赤い岩地帯

赤い岩地帯を抜けて、最後はクネクネと蛇行した沢を詰めます。最後の方まで魚影がありました。沢の上の方は灌木や笹に覆われて、藪漕ぎ状態です。そして最後、水がなくなった頃、本当の藪漕ぎが登場しました。ほぼ平坦なのに、笹の向きに逆らって進むのは大変です。しかし、藪漕ぎは10歩くらいで終了。登山道に出ました。登山道を進むと湿原に出ました。

こんな湿原がたくさんある

休憩敵地を探して登山道を進みました。三俣山荘への分岐に出るととても景色がよく、ここで休憩しました。

6日目にしてやっと見れた岩手山

なんとも長閑な風景

この後大深岳を経由して、赤川へ戻り、駐車地へと下降しました。
大深岳は展望がなくて、残念でした。休憩したあたりが一番景色がよかったです。

遠くに(この前行ったところとは別の)大白森が見える

遠くに大白森が要塞のように見えました。葛根田川を詰めて、大白森経由で明通沢下降というのがポピュラーみたいです。この辺りは同じ沢の名前や同じ山の名前があって紛らわしいですね。明通沢もたくさんありました。

駐車地に降りたら、日差しがすごく強く、装備広げて乾かしました。ずーっと湿っぽかったので気持ちよかったです。
もともと、最終日は帰るだけのつもりでしたが、泊まりにして昼に車に戻る予定に変更して、よかったです。帰りの運転&翌日の仕事はちょっぴりしんどくなりますが、美味しいイワナに綺麗な赤いナメを歩けて大満足でした。



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