3月初旬の仙丈ヶ岳

北沢峠から仙丈ヶ岳に登ってきました。ガイドブックでは雪山入門コースとして紹介されていますが、「正月をすぎると登山者はほとんどいなくなるとともに積雪は次第に増す。3月頃までは大変なラッセル要するだろう」との注釈も添えられています。静かな山が好きな私、今シーズン雪山登山をちゃんとやろうと決めた者にとって、3月初旬に仙丈ヶ岳を登るのは良い目標だと思い計画しました。もしかしたら白い雷鳥に会えるかもしれないし・・・
これまでは、公共交通機関・単独・テント泊でやってきたのですが、前泊+タクシー利用しないと4日間の休暇では仙丈ヶ岳は無理と判断。なので、今回は同行者あり、車利用です。

 日程:
 3/3 戸台川駐車場 → 北沢峠 (テント泊)
 3/4 北沢峠 → 仙丈ヶ岳 → 北沢峠(テント泊)
 3/5 北沢峠 → 戸台川駐車場

休みは4日あったので、余裕があればアサヨ峰にも行きたかったのですが、天候と体力の都合で諦めました。

仙丈ヶ岳の真上に飛行機雲



■1日目 3/3(木)
朝発で戸台10時出発ぐらいでいいかな?と思っていたのですが、直前になって丹渓山荘から北沢峠までのラッセルが心配になり、前夜発に変更しました。途中八ヶ岳PAで車中泊して翌朝戸台へ向かいました。途中の林道に大きい落石があってどかすのに力使いました。

駐車場にも雪が積もっていました。

今回は2人なので、いつもより荷物が軽いです。2月の鳳凰三山で、寒すぎると食欲なくなることが分かったので食料も控えめ。

駐車場に朝陽が当たった7:45に出発しました。天気も良く、元気よく出発しました。

出発!


駐車場近くには猿の大群が出現しました。


河原歩きは、距離はあるけど傾斜はゆるやかなので3時間もあれば余裕だと思っていたのですが、白岩堰堤を過ぎて甲斐駒ヶ岳が見えてきてからがとても長かったです。雪の積もったゴーロは地味にアップダウンがあって、足場も悪く消耗しました。途中、アイスクライミングの人たちを見かけました。アイスの人たちと思われるトレースがいくつかあって、雪を避けて歩いたためか時折、右岸寄りになったりクネクネ蛇行していました。だんだんペースが落ちていると分かって、今日中に北沢峠までたどり着けないんじゃないかと心配になって、懸命に歩きました。

甲斐駒ヶ岳が見えて、テンションが上がる

上の写真から40分後、景色が変わってない!?


やっとこさ、廃屋の丹渓山荘に着いたのはなんと12:45。5時間もかかってしまいました。先月の鳳凰三山で、今回より思いザック背負って芦安バス停から夜叉神峠まで標高差1000mの10kmを歩いた時より時間がかかっています!

廃屋の丹渓山荘

出来る限り、行けるとこまで行こうと、パートナーと話して、八丁坂を登りました。森の中を歩き出すと心が落ち着いてきました。坂の途中で単独の男性とすれ違いました。駐車場に2台車があったので、さっき河原で見かけたアイスの人たちと、この男性の車だったようです。どちらまで、と聞かれたので、今日北沢峠に入って明日仙丈に行きますとニコニコ答えました。私からは、どこに行ったか聞きませんでした。ああ、やっぱり山レコやヤマップに記録がなくても、メジャールートだから人がいるものなんだなあ、と思いました。


すれ違った男性のトレースがあったおかげか、八丁坂はいいペースで登れて、すっかり気分は明るくなりました。急登を終えて、藪沢を挟んで林道が見える見晴らしのいいあたりにテントを張った後がありました。私たちのように河原歩きに予想外に時間がかかってここで暗くなってしまった人がいたんだなと思いました。私たちはまだ時間があるので、北沢峠へ向かいました。林道に上がり、大平山荘前についたのが16時。あとひと登りで北沢峠です。

大平山荘


明るいうちに北沢峠について一安心。長衛山荘のテン場まで行こうとしたら、なんとトレースが全くありません。途中の登山道沿いのテント跡は、さっき下山した男性のものだったようです。そして、仙丈への登山道にのみトレースがついていました。おそらく、途中まででしょう。


自分のテントにゲストを迎えるのは初めてのことでした。2人用ですが、積雪期の荷物で中で炊事するのに2人なんて窮屈で心配でしたが、意外と快適に過ごせました。夜中、犬の吠えるような声がしていました。フクロウです。そういえば、登山道にフクロウの羽が落ちていたことを思い出しました。


■2日目 3/4(金)
入山前に確認していた天気図では、この日は移動性高気圧がドーンとやってくる最高の日です。無風快晴。起床時テント内は−10°Cでしたが暖かく感じました。雪がそこまで多くないと分かって、出発は明るくなってからにしました。6時にテントを出ました。準備ができた私から先に出発。

北沢峠

北沢峠の登山口から、6:30に登り始めました。ペースは順調、2合目で後発のパートナーが追いつきました。3合目まで、ほぼ夏のコースタイムで登ります。カッコイイ北岳も樹林の合間から見えて気分がいい道です。

北岳

4合目手前のあたりで、トレースがなくなりました。迷った末に時間切れとなった模様。さあ、ここからが本番です。とりあえず、無理やり急坂を突破して、尾根の歩きやすいところまで行きました。所々にある目印のテープを見つけては、ここが道だと信じて、ガシガシ歩きました。森林限界まで行ければ、頂上まで行けると信じて頑張りました。「私、ラッセルが上手でしょう?」「うまい、うまい、早い」と同行者に”おだて”を強要して、頑張りました。

ひたすらラッセル

木がまばらになり、視界が開けた時はとても嬉しかったです。

木がまばらになって、歩きやすくなってきた

雪が硬くなってきたところでアイゼンとピッケルに換えました。

ラッセルで疲れたせいか、目の前の小仙丈ヶ岳までの登りが急坂でおっかなく感じました。パートナーにトップを変わってもらい、慎重に登りました。

もうすぐ小仙丈ヶ岳の頂上

小仙丈ヶ岳から見える甲斐駒ヶ岳と栗沢山、アサヨ峰

馬の背越しに中央・北アルプスが見える

小仙丈ヶ岳に登ると、カールを従えた優美な仙丈ヶ岳の姿がドーンと見えました、背後には甲斐駒ヶ岳、アサヨ。遥か遠くに北アルプスがよく見えます。

ホシガラスが飛んでいました。夏はハイマツの実を貪り食べていましたが、冬はどうしているんでしょうか。後で調べたら、リスのように食料を蓄えているそうです。

仙丈へ行く途中の雪壁みたいに見えるところが心配でしたがとりあえず近くまで行ってみました。

仙丈ヶ岳への登りは、雪が多そうに見えた

小仙丈ヶ岳を降る。空が蒼い!


近くまで行くと、傾斜はそれほどでもなくて一安心。仙丈ヶ岳まで20分と道標に書いてあります。

雪壁に見えたところ。実際は歩きやすかった。

雪の斜面を登ると、仙丈ヶ岳の山頂らしきところが見えました。そこまで小ピークが2つ。すごく遠くに感じて、一番手前のピークが山頂じゃないのかと地図を確認してしまいました。

もうすぐ山頂のはず・・・

本当にあと15分?と疑問に感じましたが、実際行ってみるとすぐそこでした。すぐそこなのに、最後の登りは息切れしながら、一歩一歩ゆっくり登らなければいけないくらいでした。これくらい、いつもならヒョイヒョイなのに・・・なんだかヒマラヤ高所登山してる人みたいになっています・・・

山頂ついたよ。


頂上に着いた時、感動よりも「おっかない」気分でしばらくハアハアしていました。予報通り無風快晴だったので、山頂でゆっくりできました。休んだら、おっかない気分も和らいで、山頂からの景色を楽しむ余裕ができました。頂上到着は13時くらいでした。河原歩きの途中で、登頂は無理かもしれないと思ってしまいましたが、諦めないで行けるとこまで行こうと頑張ってよかったです。そして、車を出して同行してくれたパートナーに感謝です。

背後に北岳

仙塩尾根。遠くに塩見岳。
山頂でゆっくりしてたら雲が出てきた。


森林限界を越えてから、ずっと電波が入るか気にしながら登っていました。戸台の駐車場は携帯の電波がありましたが、河原歩きから頂上まで、私の携帯では全く電波が入りませんでした。もし、どちらかが滑落したら、救助を呼ぶまでにものすごく時間がかかるでしょう。人がほとんどいないこの時期のこのあたりは、技術的に難しいところはないとはいえ、何かあった場合は助からないだろうな、と思います。そんなことを考えていたので、余計におっかない気持ちが強かったのでしょう。

美しいカール。でも、落ちたら大変なことになる。



少し雲が湧いてきました。樹林帯まで入ってしまえば暗くなっても大丈夫だから、ゆっくり慎重に帰ろうと言って、頂上を後にしました。ゆっくり降っても、明るいうちにテントに着けました。仙丈でもうお腹いっぱいな感じだったので、翌日は天気のいいうちに下山することにしました。アサヨ峰はまた別の機会に。

夜はまたフクロウが鳴いていました。

帰り道



■3日目 3/5(土)
下山するだけなので8:00にテント地を出発しました。あたたかい朝でした。炊事したら、テント内は5℃まで上がりました。

八丁坂を下り切ったとこで10時。ペースは順調です。河原歩きも、ワカンでいけば往路よりもペース上がるかなと期待しましたが、行きと同じくとても時間がかかりました。駐車場に着いたのはなんと15時!やはり5時間かかりました・・・

予報通り天気はだんだん悪くなり、風はとても強く、しかも向かい風でした。風に吹かれてヨロヨロでした。稜線の風はもっとすごいことになっていたでしょう。

雲が湧いて、流れている

すこしみぞれが降ってきた

駐車場が見えた時、遥か遠く!と思ってしまった。
実際は10分もかからなかった。

河原の雪はだいぶ溶けていて、景色が違いました。違って見えてたせいか、早く帰りたい気持ちが強いせいか、渡渉ポイントを間違って早く渡ってしまったりしました。河原にはカワガラスのつがいが元気よく飛び回っていました。久しぶりにカワガラスに出会って、ほっこりしました。土曜日なのに、駐車場には私たちの車しかありませんでした。

下山が15時と中途半端な時間だったせいで、空いている食堂があまりなかったのですが、高遠の街のお店を覗くと、休憩中だったらしい親父さんが店に入れてくれて、とても美味しいソースカツ丼をいただきました。味噌汁、小鉢、漬物が着いてボリュームもあるのに1000円!


帰り道、ラジオでこの日、春一番が吹いたことを知りました。もう冬は終わったのだと思いました。でも、まだしばらく雪山を歩いてみたいと思います。白い雷鳥に会いたい。仙丈では会えませんでした。糞がありましたが、カラカラだったので秋ごろの残りのやつかもしれません。

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