笹山ダイレクト尾根

前から気になっていた笹山ダイレクト尾根に行ってきました。私の持っている古いエアリアには点線すらひかれていない、比較的新しい道です。
尾根の急登をラッセルして、山梨百名山を登頂したら面白そうだと思いました。好きなとこにテント張れて、公共交通機関で行きやすいのも◎。

日程:
 3/14 甲府駅で前泊
 3/15 甲府→下部温泉→奈良田→2300m付近
 3/16 笹山南峰・北峰ピストン
 3/17 奈良田へ下山

笹山南峰から北峰を眺める。左は塩見岳。


でも、もう来週という時期になってもなんだか、気合が入りませんでした。今シーズン一番、費用をかけているにもかかわらず、です。
甲府まで特急あずさ使用、甲府でホテル前泊、下部温泉まで特急ビューふじかわ。そうしないと、朝一の早川乗り合いバスに間に合わないからです。

気合い入らない原因は、気温でしょう。3月に入って一気に春めいて、笹山入山前の土日から5月の陽気でした。せっかく、これまで寒さ対策をしてきたのに、なんだか気が抜けてしまいます。


■前泊 特急で移動、甲府でホテルに泊まる

八王子からあずさ55号、各停でも良かったけれど、なるべくたっぷり寝たかったのです。あずさは快適でした。920円の価値は十分あります。

甲府駅に着いて、明日乗車する身延線の特急切符が券売機で買えるか見てみましたが、売っていないようでした。(翌朝、身延線ホームに特急券売り場あるのをみました。早朝はあいてないので、車内で車掌さんから買いました)
身延線はJR東海の管轄だし、IC対応していないし、甲府駅での乗り換えが面倒です。

北口方面で、駅構内の隅っこで寝ている山屋がいました。寒い時期の平日ならうるさくいわれないのかもしれないです。昔、駅で寝ようとしたら、寝れなくて(見回りの人いた)、バス停のベンチで寝たことを思い出しました。そのときは寝袋もダウンジャケットも持っていませんでした。若かったー!

コンビニで朝食を買って、甲府プリンスホテル朝日館に行きました。あのプリンスホテルとは関係なさそうです。駅近くでは1番安かったです。朝食込で4000円くらい。朝食は7時からなので、今回は残念ながら食べられません。
部屋は古いけどけっこう広め。

甲府プリンスホテル朝日館の部屋


今回、荷物は、20kg越えました。
前泊ありなのでメガネ(とケース)、快適さをもとめて、浄水器にランタン、雨対策に軍手やレインウェア、ザックカバーを追加したせいでしょうか。


■1日目 雨の甲府→下部温泉→奈良田→笹山ダイレクト尾根

5時起床。ホテルではよくねれました。4000円の価値があります。パイナップルカップでコーヒーのんだら、味が落ちた気がしました。

歯磨き用のコップ?


雨雲レーダーをみて、早めに駅に行くことにしました。受付のオジサンに、「山いくの?雨ふるよ〜!」と言われました。はい、とだけ笑って答えましたが、「どうせ移動中に止むし、たとえ雨でも行くだけ行くし」と心のなかでつぶやきました。

駅まで5分ほどの道、雨が強くてけっこうぬれました。駅についたら小雨になっていました。雨雲レーダーハズレでした。
ザックカバーはつけませんでした。カーボンプロでザックをコーティングした効果を見たかったのです。濡れても移動中に乾くし。
雨蓋等はまあまあいい感じでしたが、肩ベルトはビショビショ、サイドに取り付けた銀マット等もビショビショでした。そういえば肩ベルトはスプレーしていませんでした。
ヤッケは全然ぬれませんでしたが、カーボンプロの効果ではなく、もともと超撥水していました。太腿も靴も濡れました。

雨の甲府駅前

濡れたズボンとザック


そういえば、駅でゴロ寝の登山者はまだ寝ていました。始発じゃないんですね。

初めて乗るワイドビューふじかわ。ギリギリまでやってきませんでした。3号車の乗客は3人だけでした。
ワイドビューというだけあって、窓は大きく眺めがいいです。櫛形山は黒い雨雲に覆われていました。あの向こうに笹山があるはずです。鰍沢口より先は秘境感ある田舎風景となりました。

ワイドビューふじかわの車窓から


下部温泉は無人駅でした。すっかり雨は上がって青空です。駅舎の前をツバメが飛んでいました。もう、渡ってきたのですね。早くないでしょうか。

下部温泉駅舎



時間通り、早川乗り合いバスのカワセミ号がやってきました。乗客は、ほとんど通学の中学生でした。
下部温泉〜奈良田温泉まで、荷物料金込で1000円。1200円だと思って小銭を作ってきてしまいました。さらにビューふじかわの特急券を買ったお釣りもあり、小銭がジャラジャラです。

奈良田で降りたのは私一人でした。噂の長い吊橋を渡りました。渡ったら雨が降ってきました。お天気雨です。すぐ乾くと思って、とくに雨対策もせず、そのままいきました。ダム湖にはマガモとシギがいました。チドリだったかもしれません。

吊り橋でダム湖を渡る


9時くらいに登山口。取水口工事の人たちがたくさんいてびっくりしました。工事用の運搬レールを越えて、手摺のある道を1000mまであがったとこで、一息いれました。9時半でした。

取り付きの植林帯

植林帯を抜けて尾根にあがると、気持ちの良い森になりました。標高1300くらいから、少し雪がありました。1340付近で休憩しました。10時半くらい。

多分、笹山が見える

1603の水場分岐(11時くらいに通過)までは、アプローチシューズで問題ありませんでした。水場分岐より上に行ったら、スネがうまるくらい雪があったので、冬靴にはきかえました。

木々の合間に富士山


さらにもう少し登ると膝くらいの深さのグズグズ雪だったので、ワカンはきました。それ以後ずっとワカン。うっすらと古いトレースがありました。

ワカン履くついでに揚げ餅食べました

雪が歩きにくく時間がかかりました。1930の平坦地通過が13時くらい。2000が13時半、2100が2時、2256が3時くらい。30分で登高100mくらいのペースに落ちていました。

湿雪でワカンに雪がこびりつく


見晴らしのいいガレ場の淵で、キレイな三角の北岳が見えました。

ちょこんと北岳


2300がテン場に理想的なのだと思って、頑張りました。疲れたけど、泊まるのにとてもいい場所で良かったです。テント張ったり雪集めたりして、落ち着いたのが17時くらいでした。ホシガラスが近くでガーガー鳴いていました。

ソーラーランタン


疲れているはずなのに、なかなか寝付けませんでした。月明かり綺麗な夜でした。時折、強い風が吹いてテントを揺らしました。


■2日目 笹山頂上へ

5時起床。すでに空が白んでいました。風もありません。なかなか寝付けなかったせいか、寝たりない気がしました。

ランタンの明かりはとても良い

今日は、余裕日程だからゆっくり出発でもよかったのですが、雪の状態がいいうちに登ってしまいたかったので6時半くらいにでました。
最初からワカンを履きました。昨日と違い雪は沈まなくて歩きやすかったです。木が密集して道がわかりにくそうな箇所もありましたが、テープがびっしりあるので迷うことはないと思いました。古いトレースもところどころ残っていました。

うっすらトレースあり

しばらく行くと急登で雪が硬いので、アイゼンにかえました。最初からアイゼンで良かった気がしました。すこし登ってみて、ストックもピッケルにかえました。さらにすこし登って、テムレスを軍手に、ヤッケをぬいで、毛の帽子を手ぬぐいにかえました。7時前にして、すでに暑かったのです。
ちなみに起床時のテント内は0℃でした。

ところどころ、落とし穴があるかのようにハマって抜けるのに苦労しました。気温はぐんぐんあがって、空はかすんでいました。
見晴らしのいい2560地点から、悪沢岳がみえました。笊ヶ岳も。ぼんやりとかすかに聖岳も見えました。富士山は霞んで影も形も見えず残念でした。

悪沢岳。奥に微かな聖岳。どちらも昨夏縦走した。懐かしい。


時折、強風になって、雲が出てきたようです。頂上まであと少しのところでヤッケ、帽子、テムレスを装着しました。

獣の足跡みたい?


そこから、ちょっと登ったら道標がちょこんと顔を出していました。

ちょこんと道標


頂上は穏やかで、特に風が強くもありませんでした。これで山梨百名山70座目です。

ザックの上にスマホのせて自撮り。ちょうど北岳が隠れてしまった!


まだ9時前。北峰を目指すことにしました。
と、目の前をホンドリスがチョロチョロと走り回っていました。こんな標高高いところにもいるんだなあ、と感心しました。

すぐそこに北峰が見えますが、いったん樹林帯に降ります。道を間違ったようで、腰まで埋まったりしましたが、さすがに近かったのであまり時間かからず。眺めは、北峰のほうがよかったです。特に塩見岳は圧巻でした。

北峰は東海製紙が建てた標柱


北峰にて。時間に余裕があったので、次の選択肢がうかびました。
1、テント撤収して最終バスにのって帰る
2、テン場でまったりする
3、もう少し、稜線を歩いてみる

3にすごく惹かれました。とても気持ち良さそうだったのです。でも、結局2にしました。バスは、ギリギリになってきっと走ることになる。3は計画書にも書いてないし、体力的に登ったり降りたりは辛いかもしれないと思ったのです。

白河内岳へ続く稜線


南峰に戻って、しばらく休憩しました。またリスが出て来るかもしれないと期待したのです。リスの足跡を探しましたが、分かりませんでした。しばらく待ってもリスの気配はなく、9時45分に山頂を後にしました。

下りの樹林帯


くだりも何回か落とし穴にハマりましたが、下るだけなので楽でした。ほんの1時間で、テント場についてしまいました。また、最終バスのことが頭に浮かびましたが、ゆっくりするのだと自分に言い聞かせて、お湯を沸かして昼ごはんにしました。その後、少し昼寝をしました。カラスの声ばかりしていましたが、しばらくすると、たぶんアカゲラの声と、よくわからない小鳥の地鳴きがしました。気持ちよくまどろみました。

窪地の先にテントがある


起きて、ブログをかいたりしていると、人の声がしました。若い男性二人組。顔を出して挨拶をしました。トレースありがとうございます、といわれたので、もとからありましたよ、と応えました。まだ14時。もう少し上まで行くのだそうです。2560の見晴らしのいいとこにとまるのかしら。
と、おもったら、すぐ近くでワイワイしている声が聞こえました。私に遠慮してもうちょっとだけ上の方でテント張ったみたいです。

ラジオを聞いたり、読書したり、まどろんだり、の繰り返しで夜になりました。松濤明の風雪のビヴァークの、甲斐駒や仙丈のでてくる章を読みました。先日初めて戸台から北沢峠の道を歩いたので、読み返すとまた違った視点で面白かったです。

昼寝したせいで、あまり眠れず、23時に起きてコーヒータイムにしました。

ドリップ持ってきました

横になって月明かりで揺らめく木の陰をテント越しに見ていると、テントが持っていかれそうな大きな揺れが起こりました。強風にしては音がしなくて、変だなと思いました。山全体が揺れているようです。地震だと気づきました。ラジオを付けて、東北で震度6強の地震が起きたことを知りました。しばらくラジオのニュースを聞きました。


■3日目 下山

9時50分のバスに余裕を持って間に合うよう4時に起床しました。テン場を、5時半に発ちました。

雪は締まって歩きやすくて気分がよくて、動物の鳴き声のような雄叫びをあげて歩いていました。ふと、前をみるとオレンジ色のテントがありました。雄叫びをやめましたが、たぶん聞こえてしまったでしょう。ちょっと気まずいです。

近づくと中から男の子が顔をだしました。地震がありましたね、と言われ、少し会話しました。昨日、奈良田13時着のバスで来て、時間切れでここに止まったそうです。もし、私も前泊せずにきていたら、もっとずっと下の方に泊まることになったでしょう。3人分のトレースがあったとはいえ、やはり若者は体力あるなーと感心しました。

雪が溶けて汚くなっている

おとといに比べて、雪はかなり溶けたようでした。
4人分のトレースのおかげでぐっとあるきやすくなっています。

日が昇った

初日と同じく、ビューポイントで北岳がよくみえましたが、富士山は全く見えませんでした。

北岳は何回見てもカッコイイ

途中、冬靴やアイゼン、オーバーズボンなどキレイにしてザックにしまい、夏道をサッサとおりました。高度を下げるにしたがって、鳥たちの声が賑やかになりました。カケスがトンビの泣き真似のような声で鳴くのがおかしかったです。
バス出発の30分前には到着しました。

行きと同じくカワセミ号です

顔を洗ったり、コーヒー飲んだりしていると、ニホンハチミツやキツネの毛皮を、つくってる地元の方が来て少し話しました。笹山ダイレクト尾根は道迷い遭難で死者がポツポツ出ているそうです。だから、過剰にピンクテープがつけられたのかもしれません。そんなに悪い道とは思いませんでしたが、暗いとき下りを初見だと迷うのかもしれません。

ご飯もお味噌汁も美味しい

下部温泉駅前の丸一食堂で肉厚ジューシーなトンカツ定食を食べて帰りました。甲府駅乗り換えでふと、登山者が駅寝していた一角をみると、まだいるようでした。山屋じゃなかったみたいです。

2日目のゆったりキャンプのおかげで疲れはあまりなく、帰宅ラッシュに巻き込まれることもなく各停で自宅まで帰りました。

雪が少なくて、少し期待ハズレではありましたが、ランタンと浄水器と“フランス製ベッド”のようなマットレスのおかげで快適な山キャンプができたのは良かったなと思いました。でも何故か、プラティパスの水がすぐに凍ってしまうような厳しい寒さが恋しく思われてなりませんでした。

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