北アルプス縦走 親不知〜焼岳 中編

 前編の続きです。


■7/26(火) 5日目 天狗池〜五竜山荘

 上り827m、下り1057m (いずれも累積)距離 7.6km 
 荷物18kg
 行動時間 7:50 (発3:00 着10:50)
 宿泊地 五竜山荘 *事前予約制 水200円/ℓ

午前中の天気が良いうちに不帰ノ劍を通過したくて3:00に出ました。他3張くらいあったテントの人たちも皆、起きて準備しているようでした。
よく晴れていて星空が綺麗でした。月もありました。天狗の頭まで、ヘッデンの明かりで1時間ほど歩きました。

4:00、ほんのり明るい中、天狗の大下りを降りはじめました。ここから破線ルートになっています。ヘルメットなどの装備は、不帰キレットで付けようと思って、そのまま降ったのですが、降りる前にヘルメット着用した方が良かったなと思いました。後続がいなかったので、落石の心配はあまりなかったのですが、結構ガレていました。

下りの途中、岩稜が見えました。あれが不帰ノ劍か?と思いましたが違いました。


さらに下っていくと、はっきりしました。これが、不帰ノ劍です!

5:00、不帰キレット。ヘルメットと自作のチェストハーネス装着です。
実は、直前までヘルメットを持ってくるつもりがなく、「焼岳噴火したら嫌だから」ヘルメットを持ってくることにしたのでした。
でも、ここでもあって良かったと思いました。ヘルメットを被ることで「縦走モード」から「クライミング・モード」に切り替わりました。

日も昇って、一気に明るくなりました。


上の方で声がしました。後続が天狗の頭に着いた模様です。
天気はまだまだ持ちそうですが、なるべく早く通過したいので、あまりゆっくりせず出発しました。

剱方面もいい天気のようです。友人が今日、早月尾根に取り付く予定です。


天狗の頭を振り返ると、後続の2人組はいいスピードでやってきているようでした。

一峰に到着。雲海です。石楠花が綺麗。

その後、鎖場、梯子を越えていいペースで進みました。自作チェストハーネス持ってきて良かったと思いました。ちょっと乗り越すときに、確保しておくと精神的に楽で、余計な力が入らず疲労を軽減できました。
途中、男性1人とすれ違いましたが、他誰にも合わず、後続にも追いつかれず、渋滞やすれ違いで時間を取られることなく、マイペースで唐松岳まで行けました。


自作のハーネス、と言ってもスリングをちょこっと結んで環付きで止めただけです。
ウエストにも1本付けて、脇の締め付けを軽減しています。
ガッツリ落ちたら痛いでしょうし、怪我は防げないと思いますが、何百メートルも滑落してしまうよりマシ、くらいのものです。でも、あるとないとでは大違い。



不帰ノ劍を振り返ると、だいぶガスって来ていました。早く出て良かった。
唐松岳頂上山荘を巻くように稜線を歩いて、五竜へ向かいます。
装備を外してしまっていたのですが、また岩場の鎖場が連続していたので、再度装着。
ウキウキした気分で大黒岳まで歩き、ちょっと休憩しました。なんだか一気に疲れがきました。それにハラヘリです。私はいつもそうですが、単に歩くよりも、クライミングの方がずっと腹が減ります。飴玉を舐めながら、大黒山を降りて、白岳への上りにかかりました。
雲に覆われて、今にも雨が振り出しそうでした。

最後の方は、栂海山荘直前の上りでやったように、
イチ、ニッ、サン、シッ、ゴー、ロク、シチ、ハチ、
ニー、ニッ、サン、シッ、ゴー、ロク、シチ、ハチ、
サン、ニッ、サン、シッ・・・
を30セットくらい繰り返しました。ただし、今回は声に出さずに。
すると、遠見尾根への分岐が現れて、五竜山荘は目の前でした。


ガスガスではあったものの、雨に降られずにすみました。
宿泊の受付は11:00から、と書いてあったので、テントですがなんとなく遠慮してトイレに行ったりして10分くらい暇つぶししました(10:50着だった)
小屋の前に山岳パトロールの方がいました。まだ20代前半くらいの若い男性でした。
その後、キレット通過してきた方がパトロールの人と話していて、「明日天気が悪そうだから、唐松に止まって白馬に行こうとしてたけど、やめて今日、遠見尾根から降りる」と行っているのが聞こえました。そっか、明日は天気悪いんだ・・・と、明日キレット通過予定の私は暗い気持ちになりました。

テント受付したとき、小屋内に明日の天気が掲示してあるのを見ました。「明日の朝は晴れ」と出ていました。夕方、山テン予報を見て決めようと思いました。

テントを設営したら、早いけど夕食です(昼ですが)


今回持ってきて良かった食料No1。マヨネーズ1本丸ごと!
コンビーフと混ぜ混ぜしてご飯のおかずにしました。


天気が崩れなかったので、外で美味しくいただきました。
こんな天気のせいか、テン場は空いていました。
しかし、気になるテントが1つ。いや、テントではなくて、ツエルト!自立型のテントみたいなやつじゃなくて、本当に下はシート1枚でストックで立ててるやつです。
雨予報で、この標高でツエルトなんだー、と感心しました。

夜、やはり雨が降ってきました。


■7/27(水) 6日目 五竜山荘〜冷池山荘

 上り1074m、下り1139m  距離 8.1km 
 荷物18kg
 行動時間 9:20 (発4:10 着13:30)
 宿泊地 冷池山荘 *事前予約制 水200円/ℓ ただし1ℓは無料でもらえる

朝、早めに起きたものの、雨が結構降っているので、出るタイミングをどうしようか迷っていました。風があまり強くなさそうなので、雨が止まなくても行くつもりでした。
ただ、テント撤収時はできれば強く降っていない方がいい。荷物をまとめて、靴を履いて、テント入り口でスタンバイしていました。
3:40くらいに、今だ!と思って外に出て撤収作業始めた途端に、強雨。勘が外れました。
ずぶ濡れになって、テントをザックに押し込んで、小屋の前にひとまず退避。
トイレを済ませて、雨が落ち着いたと思ったところで出発しました。
他のテントもいくつか明かりが灯っていて、出発準備中のようです。
例のツエルトも。

先行して登っていく人がいました。
私も登り始めました。鎖場の手前くらいで、後ろから追いついてきた人がいました。
先どうぞ、と譲りました。短パン、チェックのシャツに帽子、小さめザックで超身軽な人でした。頂上ピストンかな?と思いました。すると、さっき先行していた人が降りてきました。頂上まで行って降りてきた模様。

鎖場を越えると頂上はすぐそこでした。
と、土砂降りに近い強雨となりました。とりあえず山頂で1枚写真を撮って、休みもせず先へ進むことにしました。あれ、そういえばさっき追い抜いていった軽装の人は何処へ?キレットに向かったんだな・・・と思いました。


キレット方面に向かって降りました。雨は強かったけど、風はそんなでもないし、実線ルートだし、薄ら稜線が見えたとき、(大丈夫だ)と確信していました。


G4を超えた頃には雨が弱まって、北尾根の頭に着く頃には晴れ間も出てきました。下っていくと前方に複数の人影。先にどうぞ、と譲ろうとしたのですが、向こうも仕切りにどうぞどうぞというので、ありがたく先に行かせてもらいました。近づいたら、山岳パトロールの人たちでした。昨日も五竜山荘の前にいたので、毎日、五竜〜鹿島槍区間を往復しているのかもしれません。
すぐまた1人すれ違ったら、その人もパトロールの人でした。昨日見た人とは違いますが、やはりとても若い方でした。ふと靴を見たら私のボルダーXと全く同じで、思わず同じですね!と言ってしまいました。ファイントラックのサンバイザーも一緒!パトロールも愛用する良品ってことで、嬉しくなりました。ただし、私の靴は沢靴状態びっしょりなのに対して、パトロールのはバッチリ水を弾いていました。
ガイドツアーの団体が岩場を下ってくるからすれ違いに気をつけて、と言われました。
前方を見ると、なるほど、数珠繋ぎの一団がゆっくりと岩場を降りている様が見えました。

来た稜線を振り返ると、気持ちよく晴れてきていました。


こんな天気でもツアー続行するんだ、ガイドさんも大変だなあ、と思いました。
団体とすれ違って、岩場を登りました。登ったら、今度は下って、また上り・・・
もうすぐキレット小屋ですが、疲れたのでちょっと休憩しました。すると、小屋の方から1人やってきて、もうすぐそこが小屋だよ!と言われました。
なんとなく、小屋の前で休憩するの気が進まないんですよね・・・人が多いところが苦手だから。
そんなわけでキレット小屋を通過し(結局、誰もいなかった)、梯子などを登ったり降りたりして、鹿島槍の頂上へ向かいました。
途中、登山道上に、白い羽とキャラメルコーンのミニサイズみたいな糞を発見!雷鳥のやつです。近くにいるかな、と顔をあげたら、すぐそこに居ました。しばし、ライチョウ・タイムを楽しませてもらいました。


しかし、天気はまた下り坂。雨が降ってきました。
北峰に登って、下って、また南峰に登って、とアップダウンしました。

水滴がキレイ

渋い顔


あとは冷池山荘に向かって降るだけ、です。
ここまで来た道と違って、緩やかで歩きやすい道でした。
すると、また雷鳥さん登場。二羽います。


雷鳥観察に没頭していると、下から大勢の人が登ってきました。ツアーのようです。
ライチョウ、カワイイですよ!と教えてあげたら、みなさん喜んでいました。

さらに下って、布引山を通ると、男性2人が休憩中でした。「こんな天気だから、上まで行くの諦めちゃったよ」と何故か楽しそうに言っていました。
私は、テントでゆっくりしたかったので、休まず降り続けました。

今日も、すごくハラヘリです。
テン場に着きました。五竜山荘にあった、同じツエルトが張ってありました。朝、私を追い抜いていった超身軽の人です!ウルトラライトを極めてるなーと思いましたが、何故、今日は冷池までなのか、翌日はどこへいくのか謎でした。

テン場から山荘は、予想よりも離れていました。荷物を置いて行けば良かった、と後悔しました。
山荘に着くと土砂降りになりました。水が1ℓ無料でサービスだったらしく、ラッキーと思いました。今日、持ってきた水1ℓはほとんど飲んでいなかったので、追加で水を買う必要がありませんでした。

テン場は、大学の山岳部らしき団体がやってきて賑やかになりました。
土砂降りだった雨も止んで、晴れ間が出てきて、気持ちよく過ごしました。
とりあえず、不帰ノ劍とキレットが終わって、しばらく雨でもいいや、という感じでした。


■7/28(木) 7日目 冷池山荘〜針ノ木小屋

 上り1355m、下り1215m  距離 13.1km 
 荷物17.5kg
 行動時間 11:00 (発3:20 着14:20)
 宿泊地 針ノ木小屋 *予約不要 水200円/ℓ

この日は距離がそこそこ長く、アップダウンもあるので、早め出発にしました。
しかし、3:00のつもりが、ノロノロしていて3:20になってしまいました。
ヘッデンで爺ヶ岳へ向かいます。少し明るくなってきた頃、ヘッデンの電池が切れて、バスっと暗くなってしまいました。予告なしに、いきなりでした。このヘッデンで電池がなくなるまで使ったのは初めてだったので、こうなるのかーとびっくりしました。
しかし、メインヘッデンも電池切れ、スマホの電池も残量わずか、バッテリーも半分以下です。電池を節約しなければ、と思いました。
思ったよりも、晴れ間が少なくて、ソーラー充電がはかどっていないのです。

始めはガスっていましたが、だんだんと晴れてきました。
昨日登った鹿島槍の双耳峰が雲間から顔を出しています。


見事な雲海です。今日は雲海デーです。


爺ヶ岳の北峰はいつの間にか通り過ぎてしまいました。
中峰、南峰は登頂。


再び、雲海。とってもキレイです!


振り返ると、爺ヶ岳がもわ〜ん、と朝の光をまとっていました。

ここから、種池山荘に下り、トイレ休憩。爺ヶ岳へ出発する人たちがたくさんいました。
岩小屋沢岳へ登る間、草木の露に濡れて、もともと濡れていた靴はチャプチャプするほどになりました。新越山荘は小屋前に誰もいなくて、ゆっくり休憩しました。
鳴沢岳に登って、足を乾かして、また下って赤沢岳へ・・・事前に分かっていたことですがアップダウンするたびに、疲労が蓄積していきます。

赤沢岳で、2人組に会いました。雷鳥の親子がさっきまでいたんだよー、と言われました。今回の縦走で、まだヒナに会っていなかったので、すごく羨ましかったです。
雷鳥が出てこないか、しばらく足を乾かしつつ待ってみましたが、出てきませんでした。山頂にガスがかかっていたさっきの時間しか、出てこなかったのかもしれません。

待っている間、2人組(もう結構いい年らしい)に色々聞かれました。
親不知から上高地まで行くこと、全部テントで食料も持参していること、など話すと、
「自分もやってみたいけど、もう歳だしなあ」と苦笑していました。

これまでも、たくさんの人に、話しかけられました。
「テントですか?」→「(私)テントです!」→「いいですね」
「何泊ですか?」→「(私)13泊です」→「うへー」
「着替えはどうしているの?」→「(私)寝るときは着替えて、行動用は洗えたら洗って着干し」
「何キロ?」→「(私)最初は20kg今は○kg」→「みてるだけで疲れちゃうよー」→(私)なんで!?
「どこからどこまで?」→「(私)親不知から上高地」→「頑張って!」
そんな感じのやりとりです。

赤沢岳を下って、女性1人、9人の団体1組とすれ違いました。
黒部湖がよく見えます。黒部湖の向こう側を友人が歩いているはずです。



スバリ岳の登りに差し掛かった時は、雲が湧いてきました。
スバリと針ノ木を登ったらあとは降るのみ・・・標高差200mの登りが非常にしんどく感じました。
今までの行程中、一番苦しい。疲労が蓄積している・・・?いや、多分、シャリバテの一種だと思いました。食べ物が足りていない。ここ数日、5、6時間は普通に歩けるのに、後半の数時間がしんどいのです。この日、予想コースタイム(山レコやエアリアの記載時間ではなく、自分が予想した時間)は10時間でした。ここ3日間で一番長いのです。

数十メートル標高を上げては一息ついて、の繰り返しで、ペースが落ちています。
いつもなら、なんて事ない坂道が思うように登れない。そんな時、五竜に行く途中で言われたことを思い出しました。
「どこまで行くの?」「テント?」「食料も全部持って?」と聞かれて答えたら、大概「頑張って」「すごいね」「よくやるわー」みたいな返しが来るのですが、そのオジサンは、「そいつぁ、ロマンがあって、いいね〜」と言ったのでした。

そうです、長期縦走は、体力や忍耐力があるから、できるのではなく、ロマンがあるからできるのだ、とこの時に思いました。ザックひとつに衣食住を詰めて背負って、独りきりで雨の時もずぶ濡れになって歩くことに憧れていなければできません。そして2週間、風呂に入らなくても平気でなければ。

あまりにも疲れていて、思考がちょっと変な方向に行きましたが、これが「ロマン」なのだ!と言い聞かせて、頂上までたどり着きました。
あと、もうひとつ、針ノ木を登らなくてはなりません。




コマクサはここでもキレイに咲き誇っていました。
振り返るとスバリのシルエットがかっこいい。


針ノ木の頂上までの登りもしんどかったですが、なんとかたどり着きました。するとちょっとだけ晴れ間が出てきました。足を乾かして休みました。
あとは降るだけです。降りはさほど、しんどくないです。

途中、針ノ木に登るという2人とすれ違いました。テン場は空いてるよ、と言われて安心しました。
受付して一番下段の平らなところにテント張りました。トイレが近かったせいか、ハエが凄かったけど、水平でよく眠れました。ちなみに、ここのトイレは「槍見」という名前がついていて、用を足しながら、槍ヶ岳を眺めることができます。

この日から、アルファ米を2回に分けて食べる(半分は普通に、残り半分は、数時間後にスープご飯にして食べる)手法で空腹を乗り切ろうとしたのですが、
どうしても腹が減って仕方ないので、夜中、予備食の「どんべい」に手をつけてしまいました。深夜0時に食べる「どんべい」は最高に美味しかったです。


■7/29(金) 8日目 針ノ木小屋〜船窪テント場

 上り726m、下り807m  距離 5.9km 
 荷物16.5kg
 行動時間 5:30 (発6:15 着11:45)
 宿泊地 船窪テント場 *事前予約制 水400円/ℓ 2ℓまで

朝外へ出てみると、快晴でした。
昨日歩いてきた稜線を振り返ります。


遠く、槍ヶ岳が見えました(トイレからもよく見えました)


昨日はあんなに疲れていて、(上りはもう勘弁してくれ・・・)と思っていたのに、翌朝は元気に登れるから不思議なものです。
蓮華岳に向かって登り始めました。すると、昨日、針ノ木へ向かうと言っていた二人組に追いつきました。やはり今日、船窪まで行くそうです。
二人を追い抜いて、じゃんじゃん登っていくと、前方に6人くらいのグループが見えました。
彼らにも追いつき、さらにじゃんじゃん登ります。どんべいのおかげで元気になっています。

蓮華岳はコマクサだらけでした。


頂上に着くと、チョコチョコ走るやつがいました。雷鳥の雛です!母鳥も現れました。やっと会えました、雷鳥の親子!

サービス精神旺盛な彼らは(特に母鳥)、じっくり写真を撮らせてくれました。


なんて、いい場所に立ってくれることでしょう!


親子で向かい合う姿もパチリ。


夢中で写真を撮っていると、先ほどの6人グループが頂上に到着しました。彼らにも雷鳥がいることを教えなければ!と走って、雷鳥親子がいい場所にいることを伝えました。
しばらく、彼らとお話をして、何故か一緒に集合写真を撮って、先に蓮華の大下りをおりました。500m降ります。


しばらく降ると鎖場になりました。北葛乗越をすぎて、北葛岳へ登りはじめました。途中、2人とすれ違いました。
カヤクグリが枝先てチリンチリン鳴いていました。
このあたりから、少し雲が湧き始めていました。


標高下がると草木が多く、乾き始めていた登山靴はまた濡れてしまいました。
北葛岳は道標が壊れかけていて、何岳かわからない状態でした。
また、七倉乗越に向けて降ります。
降りで、足に異変を感じました。右足の三指、四指の甲側が痛みます。靴下の縫い目が当たって擦れてしまったようです。濡れた靴でずっと歩いていて、蓮華の大下りでかなり負荷がかかったせいだ、と思いました。テーピングを巻いて応急処置をしました。今後、傷が膿んだりしたら嫌だな、と心配になりました。


テーピングを施したら、かなりいい感じでした。

七倉岳の登りは急登で、ワイヤーや梯子がありました。
軍手でワイヤーを掴んだら、綻んでトゲになったところが指の腹に刺さって「イタタッ!」となり、(ワイヤーは2度と掴むものか!)と思いながら登りました。

山頂は晴れていたけど、すぐガスガスになってしまい、船窪小屋に向かいました。
分岐があって、テント場とは逆方向に一旦向かいます。
こじんまりとした小屋でした。小屋の周りにコマクサが咲いていました。
テント場の受付をお願いすると、お疲れ様、と言われあったかい緑茶が出てきました!
ただのテント泊なのに何て嬉しいサービスでしょう!

事前に知っていましたが、水場は崩壊して使えないので、ここで水を購入しました。400円/ℓは、他と比べて高いですが、テン場代が500円なので、トータルでは安いです。
船窪小屋を後にする時、ここもガスで覆われてしまいました。


テン場まではかなり距離がありました。小屋から下りで、15分。
ただ、冷池と違って、仮設トイレがテン場にあったので、トイレのために小屋に行く必要はありません。
平で、静かで、鳥がたくさんいて、いいテン場でした。蚊もブヨもいない。
テント設営してしばらくすると、雨が降ってきました。
雨の中、朝最初に抜いた二人組が到着したようで、上段のトイレ脇のスペースにテント張ったようです(彼らは、賑やかなのですぐわかりました)

ひとしきり雨が降った後、晴れて暑くなりました。
外の木陰でゆったりと過ごしました。
ソーラー充電もでき、なんとかスマホの電池も持ちそうです。


■7/30(土) 9日目 船窪テント場〜烏帽子小屋

 上り1174m、下り1102m  距離 9km *烏帽子岳往復分は含まず
 荷物16.5kg
 行動時間 8:50 (発3:20 着12:10)
 宿泊地 烏帽子小屋 *予約不要 水200円/ℓ

土曜日で、烏帽子のテン場は先着順で20張と小さめらしいので、なるべく早く行こうと思って暗いうちに出発することにしました。ただ、船窪山の山頂付近から、登山道の状況がけっこう悪いと聞いていたので、その頃明るくなるよう時間調整しました。

スマホを優先して、メインヘッデンは充電しなかったので予備ヘッデンのLOWモードで行きました。草木生茂る狭い登山道なので、暗くてゆっくり行きました。
*帰宅後に確認したら、予備ヘッデンのLOWモードはたったの5ルーメン(照射距離6m)でした!暗いわけです。

船窪山山頂付近の崩壊現場です。太い鉄パイプが設置されていますが、このパイプもちょっとした拍子に崩れ落ちるかもしれません。
 

その後も、崩れかけの場所がいくつかあり、(うわー、すっごい悪い!)と思った箇所は、私が間違って古い崩壊側の道に迷い込んでしまったところでした。エアリアにも「崩壊が激しい不動沢側の古い道に入らぬよう注意」と記載があったのに、入り込んでしまいました。

ここに来るまでに、親不知ホテルの人や、北アルプスの稜線に詳しい方に、「船窪〜烏帽子間のザレた道がヤバイから気をつけて」と言われていました。複数の方が言うのですから、相当なんだろうと思い、ここか?まだか?と気を張っていましたが、そこまで恐ろしいところはなく不動岳に到着しました。山頂付近の石楠花の藪で、今日も全身びっしょり濡れネズミです。

不動岳で、初めて登山者に会いました。その方も、「雨に降られたみたいに濡れたよ」と言っていました。その後、山頂で4人グループの方々にもあって、途中道が崩れて大変だったと話していました。
不動岳から見た南沢岳

不動岳から南沢乗越へおりました。エアリア注意書きに「滑りやすいから注意」とあった通り、泥と笹で滑りやすい道でした。1カ所、激しく崩れた跡があって、先ほどのグループが話していたところだな、と思いました。
尻餅をつかないよう、周りの笹を掴みながら慎重におりました。降りたところで、単独の方とすれ違い。

南沢乗越からは、見事なザレの斜面が見えました。


南沢岳への登りも、ザレた崩壊地の縁を歩きます。地面がサラサラして足場が崩れながら登るような箇所にはロープがありました。


そして、高度感があって恐ろしい箇所が出てきました。花崗岩の砂地で、左は崖、右は頼りない灌木帯、斜度もなかなかの細い道です。ここが「ヤバイから気をつけて」の場所だと確信しました。気を引き締めて、一歩一歩着実に登りました。登り切って、この悪い場所を写真に収めようと思ったのですが、安全な場所から斜面は見えなくなってしまいました。残念。

南沢岳の頂上は花崗岩の庭園みたいでキレイでしたが、すぐにガスってきてしまいました。
烏帽子田園と呼ばれる池のあるところへ降りて行きます。ここで熊鈴をつけた単独の若い方とすれ違い。「あら、珍しい」と言われました。烏帽子ー船窪間は、登山者が少ないらしいです。確かに、土曜日なのに、すれ違ったのは全部で4パーティーだけでした。

烏帽子岳の分岐まで、長閑な感じの道をテクテク歩いていたら、突然ガサガサと音がして漆黒の艶のある毛並みの獣がビョンビョン跳ねて茂みに逃げていくのが見えました。耳がピンとしていました。熊です。
「驚かせてごめんね!」と声をかけておきました。今、一頭逃げて行ったから、しばらくは熊は出ないだろうと安心して進みました。小屋の近くには、熊がよく出るらしいです。登山客や小屋から出るゴミを漁っていたことがあるのかもしれません。

烏帽子岳分岐にきました。ザックが一つデポしてありました。頂上に誰かいるようです。
私もデポして頂上に向かいました。途中、降ってきた男性とすれ違い、「さっき熊にあったので気をつけて下さいね」と言ったら、ものすごくびっくりしていました。



頂上に行くと、6、7人いました。なぜか女性が多い。
ガスっていたし、早くテン場を確保したかったので、トンボ帰りしました。女性グループと、単独の若い女の子と連なって歩きました。私が親不知から上高地まで行くことを知ると、女の子がすごく興味を持ってくれて、烏帽子小屋までずっとおしゃべりしながら一緒に歩きました。
楽しく会話して、おかげで疲れ知らず小屋にたどり着きました。

テン場は、ほどよく分散していていい感じでした。が、テント設営中に蚊にたくさん刺されてしまいました。設営終えると、雨が降ってきました。雷も遠くでゴロゴロいっていましたが、それほど激しい雨にはならず、夕方には晴れたので、小屋の周囲を散策しました。小屋の目の前はイワシャジンのお花畑でした。




今日も、とてもお腹が空いていました。
最後のアルファ米を食べました。半分は、やはりスープご飯にしました。
持ってきた食材で、創作したのですが、とても美味しかった!

材料:
 アルファ米 50g
 乾燥わかめ 適量
 干し梅 2つ
 丸美屋のソフトちりめん山椒ふりかけ 適量

器に全ての材料を入れて、お湯を注いで3分ほど待つだけ。


明日はいよいよ三俣蓮華小屋に行きます。
劔を越えて来た友人は、この時、雲ノ平にいるはずで、明日、三俣蓮華小屋で会えるはずなのです。

後編へ続きます

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