北アルプス縦走 親不知〜焼岳 前編

去年の夏は、南アルプスだったから、今年は北、という単純な理由で長期縦走の計画を立てました。
今年の1月に、山と高原地図(槍ヶ岳・穂高岳)の周辺図を見て、こういうラインだな、と当たりをつけました。調べてみると、栂海新道というのがあって、日本海から北アルプス稜線につながるらしい。焼岳から登って、穂高・槍を抜けて日本海まで行くルートがポピュラーらしいことがわかりました。
足りない地図(白馬、鹿島槍・五竜)を買ってきて、ルートを検討しました。
それで、二週間あれば行けそうだ、と思いました。下山したとき、交通の便が良い方がいいので、日本海から上高地に向けて行くことに決めました。

日本海の親不知から上高地近くの焼岳までの長期縦走です。




北アルプスは人が多くて敬遠していたため、一般ルートの縦走経験はありませんでした。
今回のルート上で、行ったことがあるのは、北穂頂上付近のみ、です。(ただし、今年4月に白馬岳頂上付近に行きました)
部分的に行ったことのある道をつなぐよりも、初めて通る道が多い方が、ワクワクします!

縦走する上で、いくつかルールを決めています。
1、食糧はすべて自分で持っていく(小屋で買ったり食べたりしない)
2、すべてテントで泊まる(避難小屋も使わない)
3、同じところに連泊しない

ただし、
 小屋で水は買ってもよい
 主ルートを外れる場合、荷物をデポして頂上を踏んでも良い
 他の登山者から食べ物を頂いてもいいが、お返しに何かをあげる



準備した食料(ここから少し減らしました)


本格的に準備を始めたのは、4月の白馬(白い雷鳥プロジェクト)」が終わってから。
北ア縦走を念頭に置いて、信越トレイルと常念山脈の縦走を6月に行いました。
食料、荷物を調整してスタート時の重さは、水含めて20kgになるようにしました。
食料は1日500g、2300kcal、タンパク質が体重1kgあたり1gになるようにして、7kg。

もうすぐ出発という時期、梅雨明け10日を狙って、7月下旬から開始としたのに、天気は戻り梅雨のようになっていました。
焼岳が噴火警戒レベルが上がって一時、登山禁止になっていたので、西穂で上高地に降りるかもしれないと思ったり、
体力が持たなくて、槍・穂は行かずに笠ヶ岳へ抜けて新穂高温泉へ降りるかもしれないと思ったり、
槍ヶ岳の混雑にうんざりして、穂高に行かずに横尾へ降りるかもしれないと思ったり、
ちょっと弱気になっていました。





■7/21(木) 登山開始前日 自宅から親不知へ移動

移動日です。当初は各停で行こうとしていましたが、なんだか疲れが溜まっていて、親不知でゆっくりしたいと思い、急遽、大宮から新幹線はくたか号に乗って糸魚川まで移動することにしました。親不知観光ホテルに連絡して、送迎時間を早めてもらいました。

昼に出たのに、電車は学生やら夏休みお出かけ家族やビジネスマンで結構混んでいました。
糸魚川駅で越後トキめき鉄道に乗り換え。やっと人が、少なくなってホッとしました。

親不知駅で下車、ホテルの送迎車が待っていました。


どこまで行くのか、と聞かれ、上高地までというと、私の荷物の少なさに驚かれました。

もう一人、明日から上高地まで縦走する人が泊まるらしく、その人もやはり2週間の予定なのだそう。私の倍くらい荷物があると言います。本当に?40kg?!



宿に荷物置いて、早速海岸へ行きました。




海面を手でピチャってやつをやりたかったのです。
タイマー自撮りしようとしたら、何かに追いすがるような写真になってしまいました。


そうじゃなくて、こうですね。




今にも雨が降り出しそうな空模様でした。
階段を降りる途中に、トンネルがあったので入ってみました。トンネルが好きです。どこか知らない世界に繋がっていそうで、ワクワクします。



トンネルの中は涼しくて、いい感じにライトアップされていました。
新幹線を使って早く来て良かったと思いました。


海岸を散策した後、夕食まで時間があったので風呂に入りました。これから2週間、風呂に入れないのでじっくり浸かりました。


夕食はなかなかに豪華でした。
釜炊きの白飯はおかわりできたようです。食べ終わってから他の人がお替りお願いしているのをみて、知りました。残念です。


ホテルは建物が古いものの、細かいところに気配りがされている感じを受けました。とても良いホテルでした。
明日に備えて早めに布団に入りましたが、なかなか寝付けませんでした。



■7/22(金) 1日目 親不知〜栂海山荘

 上り2242m、下り714m (いずれも累積)
 距離13.4km 
 荷物20kg
 行動時間10:55 (発3:00 着13:55)
 宿泊地 栂海山荘 *テントの場合も、事前にメールで連絡必要

予報通り、雨が降っていました。
暗い中、レインウェア上下で歩き始めました。
標高が低いのでとても蒸し暑く、すぐにレインウェア上を脱ぎました。ずぶ濡れで構いません。雨は結構強く、周囲が明るくなる頃には靴も濡れてしまいました。


白鳥小屋に行く前に、トレラン風の男性に抜かれました。やはりレインウェア着ておらずずぶ濡れでした。
雨なので、水場の水涸れの心配は全くありません。
白鳥小屋の中で、いったん靴を脱いで休憩しました。そしたら、雨が止んで少し晴れてきたようです。喜んで歩き再開したら、また雨強くなり、ざんざん降りとなりました。
黄蓮の水場につく頃には下着までグッショリでした。風もあって、寒くなってきたので、レインウェア上を濡れた肌の上に着ました。

黄蓮の水場で水1リットル汲んできた直後

栂海山荘が近づくと、お花がいろいろ出てきて癒されました。


小屋直前で、同じような大きな荷物を背負った女性が降りてきました。
最後の登りがキツく、イチ、ニッ、サン、シッ、と号令かけながら上がりました。
小屋が見えた時は、「着いた〜♪」と喜びの声をあげてしまいました。


山荘の中に入って、料金箱にお金を入れました。誰もいませんでした。
小屋の水樽の上に、モリアオガエルの卵がありました!


テントを設営し、ゆったりしていると、外が明るくなってきました。


予期せぬ晴天!

しばらくして、ガヤガヤとグループが到着した模様。
顔を出して挨拶すると、「さっき会った方ですよね?」と言われました。
どうやら、小屋の直前ですれ違った女性と思われたようです。全然顔違うのですが、雨の中フードかぶっていたからよくわからなかったのでしょう。グループは朝日小屋から来たようで、先ほどの女性も栂海か白鳥に泊まる予定と言っていたそう。
ずぶ濡れになりましたね、大変でしたね、とお互いに今日の悪天を慰め合いました。


トイレはオープンエアーで、トタンの滑り台から野に放つタイプでした。

初日のこの日が、行程中、最も距離が長く、累積の上りが多く、荷物も重いという、一番ハードな日でした。でも、親不知ホテルの豪華夕食のおかげか、頑張れました。
前日あまり眠れなかったので明るいうちに眠りにつきました。明日はだんだん天気がよくなる予報です。

と、夜中、雨音で目覚めました。テントがものすごく揺れています。
今までテント泊で経験したことがない程の土砂降りです。
ペグのカシャカシャいう音がして、抜けたな、と思いました。テントが半分持ち上がり、底は浸水していました。
雨が少し弱くなったタイミングを見計らって、外に出ました。
ペグはしっかり打ったのですが、物凄い雨量で地面がフニャフニャになって、抜けてしまったようです。地面の深いところに刺し直し、上に石を置いて再度固定しました。
作業中、心配になって見に来たのか、ただトイレに行きたくて外に出てきたのか、小屋泊りの1人がヘッデンでこちらを見ていました。声はかけられてないと思いますが、風雨がすごかったので聞こえなかっただけかもしれません。

無事、修復してテントに入り、二度寝しました。


■7/23(土) 2日目 栂海山荘〜朝日小屋

 上り1271m、下り678m  距離12.8km 
 荷物19kg
 行動時間 8:05 (発7:35 着15:40)
 宿泊地 朝日小屋 *予約不要、水無料

朝3:00、起きては見たものの、相変わらず風雨すごく、明るくなるまで待つことにしました。
8:00になっても状況が変わらなかったら、今日は見送ることにしよう、と思いました。
携帯電波状況悪く、山テンの最新気象情報は得られていませんでした。
7:00くらいにだんだんと雨が弱くなって来たので、出発準備をしました。

テントを撤収していると、小屋泊グループも下山出発するところでした。
お気をつけて、と言って見送ると、もう1人、グループの方ではない男性が出てきました。
親不知観光ホテルに泊まっていた、やはり上高地に行く方でした。昨日、私が早々と寝てしまった後に到着していたようです。
「大雨警報出てるけど行くの?自分は停滞するよ」と言われました。彼は、前日に小屋泊の予約をいれて、ダメだったらテントで泊まるというスタイルらしい。食料もたくさん持ってきているから、ゆっくり行くのだそう。食料15kg、荷物全部で30kg!昨日は私が出発した30分ほど後に出たそうです。

そして気になることを言われました。
朝日から来たグループの人が、「雪渓のところの渡渉が、下手したら腰まで浸かることになる」と言っていたんだそうです!私の見立てでは、そんな渡渉が出てくるような地形には思えませんでした。
まあ、ダメだったら戻ってきますよ、と言って出発しました。

犬ヶ岳に登ると、携帯電波があり、山テン気象情報メールを受信しました。やはり、昼過ぎから天気回復の見込みです。雨風も今はそれほどでもないし、問題ない、と思い先へ進みました。
稜線で、足先の黒い何かの動物が横切りました。
彼らも夜の風雨で動けなかったのでしょう、今、お腹を空かせて活動中なのだな、と思いました。
水がもうなかったので、北俣の水場に行こうとしました。黄蓮の水場同様、立派な看板が設置されていますが、小屋からは結構離れています。
往復10分とありましたが、ちょっと降ったら道が滝のようなので、道を流れる濁った水を少し汲んで戻りました。浄水器があるので、いざとなったらこの泥水を飲みます。先に水場はたくさんありそうなので、今、このひどい道を降りなくてもいいや、と思ったのです。

いいペースで黒岩山まで来ました。天気は相変わらず、降ったり止んだり。
ここから湿原へ降りていきます。

ニッコウキスゲの群生が現れ、わあーっと気分が明るくなりました。


そんな気分とは正反対に、雨は激しくなりました。


水芭蕉も綺麗です。湿原に雨は似合います。


いくつか沢を越えました。増水してはいますが、腰どころか、足首がつかるようなことはありませんでした。
腰までの渡渉って一体どこなんだろう・・・
すると、雪渓を横切る場所が出てきました。赤いペンキで印されたルート沿いに亀裂が入り、下は池になっていました。



確かに、落ちたら腰まで浸かりそうです。
ですが、上部の雪渓を歩けば問題なしです。ホッと一安心でした。

その後も、雪渓を横切る箇所が何箇所かありました。そこそこ傾斜のある雪渓で、どう渡ろうかとあたりを見回すと、オス雷鳥が1羽います!標高2000mに満たないところです。
ライチョウさん、なんでこんなところにいるの!と話しかけると、俺の勝手だろ、と言わんばかりにスタスタと雪渓を登って行ってしまいました。呆然としていると、クゥクゥ〜とメスの鳴き声がして、オスの後を追いかけてメスも雪渓を登っていきました。

真ん中の黒い点がライチョウ

雪渓を登って、さらに上に行くと長栂山でした。標高は低いながら、ハイマツ帯が発達していて、なるほど、雷鳥が住みやすい環境だな、と納得しました。彼らも悪天で、標高を下げて避難していたのかもしれない、と思いました。
長栂山の周辺は風雨に晒されて、びしょ濡れの体が冷えてしまいました。長いこと留まっていると、低体温症になるかもしれない、と思いました。

少し行くと、風景は一変し、八兵衛平という池のほとりに出ました。増水で池になっているわけではなく、いつも池なんだと思います。


もうすぐ、吹上のコルです。名前からして、風雨が凄そうです。
正午を過ぎても、雨は止まず、山テン予報は外れたようです。
低体温症にならないよう、食料を口にし、一気に朝日岳を越えよう、と決めました。
予想通り、吹上のコルで横殴りの風に当たりました。
風を避けられるところを記憶に留めつつ、登りました。半分くらい登ると風が当たらなくなりホッとしました。誰もいない山頂を足早に過ぎて、朝日山荘へと降りました。


体が冷えたせいか、疲労と空腹を感じ、今日は予定を変更してバターチキンカレーを食べちゃおう、と考えながら歩きました。
そういえば、沢で3口ほど水を飲んだだけで、あの泥水は飲みませんでした。

吹上のコルの分岐から複数の足跡があったので、今日ここを通った人たちはいるようでした。土曜日ですからね。
しかし、この日登山道では誰一人にも会いませんでした。


朝日山荘が見えてきました。視界は非常に悪かったです。
山荘と思われる建物に近づいたら、もう一つ同じような建物があって、どこにテント受付があるのかわかりませんでした。
テント設営中の方に声をかけて、教えてもらいました。
こんな天気なのに、テント場にはそれなりに人がいました。


小屋のチャキチャキした感じの良い女性に、こんな天気で大変だったわね、と言われました。
小屋泊の人はたくさんいるようで、色とりどりのレインウェアや靴が乾燥室に干してありました。

私のボルダーXはすっかり沢靴と化していました。
今日も下着までびっしょり濡れネズミです。


テントの中で、乾いた服に着替えると人心地つきました。
お湯を沸かして、アルファ米に注ぎます。
間違えました。バターチキンカレー食べようと思ってたのに、アルファ米を作ってしまいました。カレーはナンで食べようと思っていたのです。諦めて、予定通りの夕食になりました。

山荘からアナウンスが流れました。「おいしいおこわ、焼き立てのクロワッサン、日持ちするパンなど、いずれも300円で販売します、購入希望される方は、大至急(強調)、売店までお越しください」北アルプスは誘惑が多そうです。

今回、持ってきた道具を少し、紹介します。
今年も、チキンラーメンの箱を切り抜いて作った敷板を持ってきました。段ボールは使い勝手が良いです。


さらに、衛星面に気を遣って、
クシ、歯ブラシ(毛量少なめ)、手鏡も持ってきました。すべて無印。とても軽いです。



洗っていないと頭が痒くなるので、
まず、クシで梳かして髪の汚れ・ホコリを落とす→シーブリーズを吹きかける→しばらくして再度よく髪を解かす の手順で毎日ブラッシングをしました。

歯ブラシは、ヘッドの毛が少ない方が乾きがよく、衛生的です。
鏡は、目にゴミが入った時、おしりや背中を虫に刺された時にチェックするのに使います。

明日こそ、天気が回復しそうです。
かなり疲れたので、翌日はゆっくり出発して、ゆっくり行こうと思い就寝しました。


■7/24(日) 3日目 朝日小屋〜白馬岳頂上宿舎

 上り1327m、下り740m  距離12km 
 荷物 21.5kg
 行動時間 9:50 (発4:30 着14:20)
 宿泊地 白馬岳頂上宿舎 *事前予約制、水無料

明るくなってから出発しました。
朝日岳の頂上は踏まず、水平道経由で雪倉岳へ向かいます。
白馬は水が有料だから、と変な節約心を持ち出して、水を3リットル持ちました。
天気もいいし、テン場も予約してあるから、のんびり行こうと思ったのです。

水平道を行き、振り返ると朝日小屋が可愛らしく見えました。


朝焼けが綺麗です。朝焼けだけれど、今日はとてもいい天気になる予感がしました(予報もいい天気です)

水平道は、崩れた箇所や雪渓や濡れた草木が生い茂って、そこまで楽な道ではありませんでした。朝露を全身に浴びて、乾いていなかった靴がさらに水を吸ってチャプチャプしています。しかも、何かの虫に左足のふくらはぎを刺されたようで痒い。
水平道を終えて、赤男山を巻くように付いた道を行きますが、なかなか休憩に良い場所がなく、2時間くらい歩きっぱなしでした。やっと少し開けたところで、靴下を絞って休んでいると、前後から来た登山者が何人も通り過ぎていきました。
すると、昨日テント受付の場所を教えてくれた女性2人組の方が来ました。私のことを覚えてくれてたみたいで、一緒に休憩してお話ししました。ナンと、お住まいが隣駅でした!
こんにゃくゼリーと梅飴を頂いたので、お返しに塩あんこ飴を渡しました。

2人より先に出発し、少し行くと風通しのいい、気持ちい稜線へと出ました。日差しも強く、これなら靴も次期に乾きそうです。

雪倉岳の頂上で、足を乾かしながらゆっくりしました。
前の二日間、ずっと濡れ鼠だったので、生き返りました。


お天気の良い日曜日なだけあって、山頂はたくさんの登山者で溢れていました。
山頂でビールを飲んでいる人もいます。とても美味しそうです。
ただ、雲がもくもくしていて、夕立が心配です。ある程度靴が乾いたところで山頂を後にしました。


雪倉岳を降る途中に雷鳥の羽を拾いました。花も綺麗でした。
三国平に行く間、でかいスコップを持ったオジサンとすれ違いました。私が不思議そうに見ていたからか、「ステップ切っといたんだよー」と笑って言いました。その後、3回くらい雪渓を渡りました。なるほど、ここの整備をしていたようです。雪渓のうち1つは結構急で、滑って落ちたら大変な怪我をしそうでした。しっかりステップ切られていたおかげで、アイゼンを出す必要はありませんでした。
(しかし、超軽装の若者グループが雪渓で滑っているのを見てハラハラしました!)

長池が見えた

三国平までの登りは暑く、しんどく感じました。
後ろから、雪倉岳でビールを飲んでいた男性2人に追いつかれました。
また登りきってビール飲んだら最高でしょうねえ、と言ったら、
下山後は車なので、もう飲めないんだそうです。
私は山でお酒は飲まないことにしていますが、(すぐ酔っぱらうので)今日は冷たいビールが羨ましく思いました。

三国平につくと、登山者は倍増しました。
4月、三国平にきているはずですが、見覚えのない場所でした。ここは二重山陵で、積雪期はもう一つ向こうの稜線を行ったからのようです。
山頂に向かいました。4月、ちょっとおっかないと思ったところは夏道ではなかったようです。特に悪いところもなく、見覚えのある山頂に到着しました。
向こう側の、山荘のある方から続々と登山者が登ってきます。
この前は、山荘がどこにあるか見えませんでしたが、頂上からほんの少し歩いただけで、すぐそこに立派なホテルのような山荘が現れました。こんなにすぐ近くにあったなんて、驚きでした。


水を3リットルも持ってきたのに、500mlしか消費していなかったので、荷物は重いまま、かなり疲れていました。
テントの受付を済まして、ふと近くの雪渓を見るとパイプから水がじゃんじゃん溢れています。
あれ、水は有料じゃなかったっけ・・・?
自分でまとめてきた宿泊地リストを確認すると「白馬岳頂上宿舎 水無料」とちゃんと書いてありました。せっかく重いの我慢して運んできたのに・・・誰かにこのことを聞いてもらいたくて、テン場近くの蛇口で水を汲んでいる男性に、「水が有料だと思って、3リットルも運んできちゃったんですよ!」と話してしまいました。「それは良いトレーニングになりましたねえ!」と笑われてしまいました。それで、私も笑い話ができて良かったと思えました。

雪渓から溢れ出す水!冷たくて気持ちよかった。

テン場は窪地になっていて、到着時には見えなかったのですが、行ってみたらテントがぎっしり張られていてびっくりしました。これで、受付の人曰く「予約はいっぱいではないので、空いている好きなところに張っていいですよ」なんだそうです。


なるべく平らなところを探しましたが、端っこのちょっと凸凹したところでした。
ゴミが散乱していて汚い・・・ガラスの破片なんかもある。なるべくゴミをどかして張りましたが、翌朝撤収時、グランドシートにガムが付いていて、辟易しました。

テン場はともかく、ロケーションは最高です。イワヒバリのさえずりがこだまし、高山植物は咲き乱れ、なぜか白馬山荘の方からオカリナで「エーデルワイス」の曲が流れて聞こえます。

白馬三山の1つ、杓子岳

食事の後、周辺を散策しました。
雲は湧いているものの、夕立にはならなそうです。

白馬岳を振り返る

旭岳

エーデルワイスの曲がよく似合う風景

気持ち良くて、その辺にゴロンとした

丸山まで登って、周囲を眺めていました。不帰ノ劍を越えてきた人たちも続々きました。結構大きい荷物を背負っている人もいました。
私も重荷で越えられるかな・・・と少し緊張していました。何より天気が心配です。予報ではまた明日から崩れてくる模様です。私はクライマーなので、一般登山道の岩場は100%大丈夫だと思うのですが、雨でびしょ濡れになった状態で風に吹かれたら、低体温症になるんじゃないかと心配でした。


夕飯は、予定通りバターチキンカレーとナンでした。
ナンは、ジェットボイルでスチームして温めました。そしてオニオンスープにクルトンをたっぷり入れて、オニオングラタンスープ風です。


3日間、重荷で頑張ったので、明日はレスト日です!


■7/25(月) 4日目 白馬岳頂上宿舎〜天狗池

 上り441m、下り439m  距離4.3km 
 荷物 18.5kg
 行動時間 3:50 (発6:30 着10:20)
 宿泊地 天狗山荘 *事前予約制、水無料

朝はゆっくり起きようと思っていたけれど、明るくなったのと、周囲が撤収する物音で4:00には完全に起きてしまいました。じっとしていられなくて6:30に出発しました。
昨日ゆっくりしていたはずなのに、まだ疲れが残っているようです。疲れがあっても、乾いた靴で出発できるのがとても嬉しかったです。

朝の天気は良かったのですが、上空から暗い雲が迫ってきていました。
出発直後、杓子岳の頂上はまだ雲に覆われていないようでした。


太腿に疲れが溜まっているようなので、超ゆっくり進みました。
岩場で飛び交う鳥を観察したり、


高山植物をじっくり観察したり。


ハクサンチドリではないと思いますが、ナントカチドリだと思う紫の花がとてもいい香りでした。出くわすたびにクンクンしました。


白馬大雪渓が見えました、今日もたくさんの人が登ったり降りたりしているようです。


私が杓子岳の上りに差しかかる頃、雲が降りてきて小雨になりました。白馬側からの上りはガレた急坂で、ちょっと悪かった。頂上は真っ白で何も見えず。


ガスって先がよく見えません。多分左側が絶壁のはず。


下が見えたら、そこそこおっかない道と思われます。


先の白馬槍ヶ岳方面の道はそれほど急ではなく、安心して降りられました。
降りて巻道と合流したあたりで、斜面に這いつくばっている男性がいました。何かな?と思ったら、コマクサを撮影していたのでした。初めて見たらしく、興奮気味に「すごくいい」と言っていました。私も真似して這いつくばって撮影しました。


その先、白馬槍ヶ岳への急な岩場が続きます。
ここも超ゆっくりペース。紫の可愛いフォルムの花がたくさんありました。オダマキ?


登っていくと、すれ違った登山者に、そこに雷鳥がいる、と教えてもらいました。
岩陰に隠れてしまった雷鳥を撮影しようと四苦八苦していると、後ろからカップル登場、彼らにも雷鳥がいる、と教えました。


雷鳥さんは、見物人が3人もいて諦めたのか、岩陰から出てきてしばらく登山道を一緒に歩いてくれました。やがて岩場の崖の方へ消えていってしまいました。

真っ白な景色の中、白馬槍ヶ岳まで来ました。頂上にケルンが積んであったので、私も積み上げてみました。雷鳥風に。


せっかくなので、頭のてっぺんに乗せてみました。

この後、風であっけなく崩れてしまいました。

ずっとガスの中、天狗池に向かいました。
雨風そこそこあって、歩くペースは超ゆっくりなので、寒いくらいでした。唐松岳から来たという登山者に、コロナで唐松岳の山荘は閉鎖した、と聞かされました。おそらく白馬の山荘もまもなくコロナで閉まっちゃうだろうよ、と言っていました(後ほど、本当に営業停止になっていました!)

あちこち山荘が閉鎖した場合、テン場は大丈夫だろうか?水は確保できるのだろうか?と心配になりました。
不安な気持ちのまま、天狗山荘に着くと、唐松岳の山荘の情報が掲示してあり、テン場と売店は営業続行と知り、ひとまず安心しました。

天狗山荘の受付の人は、客が少なくて余裕があったからか、色々話してくれました。
事前予約で、行程のところに「親不知から上高地まで行く途中」と書いたので、頑張ってくださいね、と言われました。が、これから天気がしばらく悪いみたいだから気をつけて、とも言われました。空いているので小屋泊まりに変更してもいいよ、とも。

天気はずっと悪いのか・・・?と疑問に思いました。
確かに、ウェザーニュースの予報は向こう1週間ずっと曇り雨でした。が、山テンでは明日午前中までは晴れのはず。山テンは明後日までの予報しか出ないので、なんとも言えません。
気象庁の週間予報では、そこまで雨ばかりではなかったはずです。ざんざん降りで強風でなければ予定通り行動しよう、と思いました。

実は天狗池到着時、左のふくらはぎがパンパンに晴れてしまって、痒くて大変でした。昨日、朝日小屋を出て水平道を歩いている時に刺されたところです。しゃがみにくいくらいに腫れていて、心配になったのでアレルギーの薬を飲んでおきました。

天狗池のテント場は最高でした。前の白馬と違って、水平だし、ゴミはないし、何よりテントが少ない!携帯電波も安定して入ります。11時前にはテントでゆっくりしていました。

ただ、ガスが濃くて、トイレから戻ろうとしたら「私のテントがない!」と焦りました。フライが白いので、ガスと同化してテントが見えなかったのです!

実は、真ん中にテントが写っています

夕方、少しガスが晴れてきて、白馬槍ヶ岳の姿が見えました。

明日、暗いうちに出発する予定なので、少し下見に行きました。

水場

天狗池

天狗の頭へ行く途中!

天狗の頭へ行く途中 その2



今日はそんなに濡れてはいないのですが、テントの中はいつも服を干しています。


明日は、今回初の破線ルート、不帰ノ劍を通過します!



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