■7/31(日) 10日目 烏帽子小屋〜三俣蓮華小屋
上り957m、下り944m 距離 12km *水晶岳往復分は含まず
荷物16kg
行動時間 10:15 (発1:20 着11:30)
宿泊地 三俣蓮華小屋 *予約不要 水無料
友人の計画書では、12時には三俣蓮華小屋に到着するはずなので、それに合わせて到着できるようにしたいと思いました。
三俣蓮華小屋までは、そこそこの距離があって水晶岳も往復したいので、1時半には出ておきたいところ。満天の星空の下、1時半前に出発しました。今日も予備ヘッデン5ルーメンの明かりを頼りに歩きました。
三ツ岳に登ると、富山湾の夜景が見えました。ただ西峰から降りる道がわかりにくくて、少し迷いました。なんせ5メートル先もあんまり見えないヘッデンですから・・・
野口五郎岳へ向かいました。だんだん明るくなってきました。空がとてもキレイです。
頂上でご来光を見るためでしょう。私も急ぎました。
頂上についても、まだしばらく日は昇らないようです。ガヤガヤと小屋からたくさんの人が登ってきたので、先へ進みました。
水晶小屋まで、暑い暑い、と思いながら登りました。
しかし、小屋に着くと、一気にガスってきて、水晶も鷲羽もガスの中に消えてしまいました。
荷物を岩陰に隠すようにデポして空身で水晶へ向かいました。空身は最高です。今回の行程中、空身で行動した最も長い区間です。気持ちよく、360度真っ白な景色の頂上を踏んで、北峰の三角点をナデナデしに行きました。
帰り道、たくさんの登山者が続々やってきてびっくりしました。こんなガスなのに、さすが日曜日の百名山です。
荷物を回収し、ワリモ分岐へと降って行くと、ガスは晴れて暑くなりました。
ワリモ分岐にも、鷲羽岳を報復していると思われる登山者の荷物がたくさんデポされていました。
祖父岳方面がよく見えました。友人がやってきていないか、目を凝らしましたが、それっぽい人影はありませんでした。
鷲羽方面へ少し登ったところで、足を乾かしてしばらく休みました。すると、猛禽類らしい鳥が、ホバリングしながら飛んでいるのが目に入りました。遠くで、よくわからなかったけれど鷲羽岳だからワシかなあ、と思いました。ともかく見事なホバリングでした。
友人の姿は見当たらず、こんないい天気なのだから、雲ノ平を8:00に出発なんてゆっくりしていられないはずだ、きっと先に三俣蓮華小屋まで行ってしまっているだろう、と思い、先へ進むことにしました。友人からは4日前に「劔沢に入った」と連絡を受けて以来、音信不通です。こう言うのはあまり連絡を密に取り合わないほうが楽しいです。私も、スマホ電池節約のため、通信はずっと切ったまま歩いていました。
鷲羽岳は気持ちよく晴れていました。鷲羽池もよく見えました。目玉みたい!
テントがチラホラと張ってあるのが見えます。
小屋を見たら、なぜかトイレに行きたくなってきてしまいました。
トイレ行きたい、と思いながら急ぎ足で小屋へ向かいました。
小屋で受付を済ませると、トイレはなんと小屋の中のみ。靴のまま入れる外トイレはありませんでした。ちょっと不便だなーと思いつつ、トイレを借りて、テン場へ向かいました。
テン場を縫うように小川が流れていて最高です。
水場ではパイプからジャージャー冷たい水が溢れ出ています。
水場のすぐ脇にテントを張っていた方がいたので、「ちょっと失礼します」と声をかけて荷物を下ろし、頭から水を被りました。頭ジャブジャブ最高に気持ちよかったです。ビショビショの頭のまま、テン場を進んでいくと、いました。友人Sです。いい場所を確保しておいてくれていました。
テントを設営して、小川でTシャツを洗って、濡れたまま着て、足も洗って、生き返りました。久しぶりの水浴びです。天気はカンカン照りなので、色々すぐに乾きました。
トルティーヤチップスとチキンのトマト煮!
ディルスープで作ったチーズリゾット風!
骨煎餅 with 明太マヨディップ!
そして大好物の落雁!
コーヒーに、お茶に、アサイージュースに、チャイも飲みました。
友人は、ウルトラライト仕様のテントです。
中を見せてもらいました。ベースの広さは私のステラリッジ2と同じだと言いますが、狭く感じました。上部空間のせいでしょう。2、3泊なら狭くてもいいですが、長期の場合、私は広い方がいいなあと思ってしまいます。
どうしようかなあ、と迷いましたが、今日もソーラー発電できたので、ともかく槍までは小屋の電気を借りずに頑張ろうと思いました。
出発時、三俣蓮華小屋についた時点の調子で、槍穂に向かうか決めようと思っていたのですが、この時はすでに、穂高の稜線を抜けて焼岳まで行くぞ!と元気いっぱいでした。
■8/1(月) 11日目 三俣蓮華小屋〜槍ヶ岳山荘
上り1316m、下り787m 距離 11km
荷物15.5kg
行動時間 7:00 (発2:45 着9:45)
宿泊地 槍ヶ岳山荘 *予約不要 水200円/ℓ
槍ヶ岳のテント場が確保できるか心配なので、暗いうちに出発しました。
もう少し後で出ると言う友人に別れを告げました。友人は双六岳頂上を巻く中道ルートで行って、この日新穂高温泉に降りる予定です。
私は「多分、分岐のところで追いつかれると思うよ」と言い残して、去りました。
荷物もだいぶ軽くなっています。私の場合、15kgになると空身と同じペースで歩けます(もちろん、空身より疲れる)。
やはり今日も5ルーメンの暗いヘッデンで、三俣蓮華岳に登りました。後ろから明るいヘッデンの光が追ってくるのが見えます。多分、友人のでしょう。
頂上で、降り口がどこか分からずちょっと迷ったものの、グングン進みました。
双六岳の分岐のところで、だいぶ明るくなりました。友人の姿が近くに見えます。ここでお別れだなと思って手を振ったのですが、頂上へ行くこちらの道へやってきました。
分岐を過ぎたところで、追いつかれた |
中道ルートだと、ハイマツなどの茂みで濡れそうだし、日の出がキレイだから頂上に行きたくなったとのこと。
せっかくなので写真いっぱい撮って貰いました。
ここで、友人と別れ、西鎌尾根へと向かいました。
見えていた登山者を全部抜きして、10時前には槍ヶ岳山荘に着いてしまいました。
元気いっぱいです。昨日たくさん食べたおかげでしょう。食事の大切さを身に染みて感じました。
早く到着した甲斐あって、テント場はいい場所を指定されました(ここは、小屋から張る場所を指定されます)
混雑している時に登るつもりはなかったので、テントでゆっくりしました。
今日もソーラー発電がはかどった、と充電しようとしたら、なぜか充電できなくなってしまいました。ランタンの明かりは点くのですが、外部への充電ができない。USBポート部分がイカれてしまった様です。
どうしようか迷った挙句、小屋の充電コーナーを使わせて貰いました。ここは30分100円でした。ここで西穂山荘のテント場の予約を入れました。
午後、雲が湧いてきて、夕方には少し小雨がぱらつくガスガス天気になりました。
槍はしばらく見えなくなって、登頂のチャンス!と思いました。
ほんの時々、槍の頂上が見えるようになったので、登りに行きました。
同じことを考えていたのか、男性がひとり途中にいました。ただ、また雲が厚くなってしまってどうしようか逡巡している様です。「まだ大丈夫、行けますよ!」と声をかけて、先に登りました。頂上に着くと、ほら、やっぱり雲の切れ間になりました。
今夜は風が強くなる、と誰かが行っていた通り、風のある夜となりました。
■8/2(火) 12日目 槍ヶ岳山荘〜穂高岳山荘
上り849m、下り936m 距離 6.7km
荷物15kg
行動時間 7:45 (発3:45 着11:25)
宿泊地 穂高岳山荘 *予約不要 水無料
風のおかげで、フライはバッチリ乾いていました。
靴とテントは常に濡れているもの、と思っていたので、どちらも乾いているのが、奇跡の様でした。3時、もう槍の頂上に登っている人たちがいました。昨日の夕方に登っておいて良かったと思いました。
風がそこそこあるなか、今日も暗いヘッデンで出発です。
槍を振り返ると、小屋とテントの明かりが街の様に見えました。
今日もいい天気が続きそうですが、明日は崩れる予報。当初、この日は北穂のテン場に止まる予定でしたが、明日の行動時間をできるだけ短くしたいので穂高岳山荘まで行くことにしました。
所々立ち止まって待ちながら進んでいたためか、自分のペースを崩し、一度滑ってスネと尾骨をしたたかに打ってしまいました。痛かった!
その後、写真撮影している2人組を抜いて、もう一人抜いて、北穂への急登まできました。向こうから1人降りてくるところだったので、下の離れたところで待っていました。すると、ルート外したのか、でっかい落石!落とした本人もびっくりしていました。
もし、近づいていって、途中ですれ違おうとしていたら、落石に当たっていたかもしれません。待っていて良かった!そして、ヘルメット必須だな、と思いました。
登りはなかなか楽しいクライミングでした。後ろから、さっき抜いた人が追いついてきて、先を譲ろうと思ったのですが、そのまま同じペースで一緒に行きました。いろいろ話していたら、クライマーだとわかって、話が弾みました。クライミング業界は狭いので、共通の知り合いもいました。
北穂の小屋で別れて、穂高岳小屋を目指します。
北穂の登りも暑かったのですが、さらに日が高くなるにつれて、涸沢岳の登りも暑くてまいりました。
最低コルまでくると、前穂北尾根がよく見えました。
場所を先に確保してから、受付するシステムの様だったので、広くて水平なところに荷物を置いてから受付しました。
今日はヘリが来るので、軽い荷物は全部テントに入れておく様に指示されました。
テント泊の人向けの充電コーナーがあって、なんと、1回200円でした。1時間じゃないです、1回。相変わらずソーラーランタンから充電できない状態だったので、喜んでバッテリーをつないでおきました。これでメインのヘッデンが復活します!
テント設営終えて、ゆっくりしていると、涸沢の谷を抜けてヘリがやってきました。が、ドアをちょっと開けて操縦士の方がこちらに手を振って、新穂高温泉の方へ行ってしまいました。
やがて、ヘリが戻ってきました。
今度は荷物を持っています。荷を下ろして、小屋からの荷を取り付けて、去っていきます。
ヘリは全部で6回くらい行ったりきたりしていました。
ヘリ作業中はテントを張ってはいけないらしく、後から到着した人たちは、テン場で待機させられていました。早めにきて良かったです。
ドラム缶も運んでいました。
穂高岳山荘は、電気も水も十分にある様でした。トイレ、ウォームレットでした。お尻あったかくてびっくりしました。水もテントの人は無料。こんな場所なのにすごいです。
夕方はやはり雲が湧きましたが、雨は降りませんでした。
奥穂高岳が夕焼けのガスに包まれて幻想的でした。
明日も、西穂高岳へ抜けるまでは天気が持ってほしいと願いました。
山テン予報では、朝のうちから風があり、午後は風も雨も強くなりそうな感じです。
明後日も荒れる見込みなので、もし、すごく早く西穂山荘についたら、一気に焼岳まで行って降りてしまおうかな、とも思っていました。
最終日は食料なくなっても構わないから、と、この日たくさん食べておきました。
■8/3(水) 13日目 穂高岳山荘〜西穂山荘
上り549m、下り1171m 距離 4.8km
荷物14.5kg
行動時間 7:25 (発3:50 着11:15)
宿泊地 西穂山荘 *事前予約制 水200/ℓ*諸事情により無料になった
奥穂への登りは最初、梯子や鎖のある岩場なので、明るいメインヘッデンで行きました。
すでに、先行している一行がいる様です。頂上近くになると雲がわっと湧いてきてしまい、視界が悪くなりました。頂上で、先行パーティーに追いつきました。頂上で撮影会していました。昨日あった、ガイドパーティでした。頂上踏みたかったので、しばらく待って、祠のあるてっぺんにただ登って降りて、西穂へ続く稜線へ向かいました。少しいったところに注意書きの看板があって、そこで一息つきました。こんな天気で大丈夫だろうか・・・と少し不安でした。
が、雲が一気に晴れて、奥穂頂上が現れました。
いきなりナイフリッジで、緊張気味でした。動きが硬いのが自分でもわかります。
日が昇るにつれて、緊張も和らいで、どんどん進みました。風は冷たいですが、まだ稜線は雲に覆われていないのが幸いでした。
そろそろジャンダルムかな、という頃にガスったり晴れたりになりました。
くだりのせいか、ペンキで付けられたマークが見当たらず、岩を巻くのか頂点を行くのか迷うところもありました。迷った時はなるべく高いとこを通る様にしました。
だいたい外さず行ったと思うのですが、途中、鎖もなく垂直に登る所があって、もし岩の頂上に行く道で、降り口がなかったらここを150%安全に降りられるかな?と疑問に思いました。
登ってしまってから考えよう、と進んだら、ちょっと先に鎖が見えて、安全に降りられました。
そこここに懸垂下降点があって、おそらくいろいろな登り方ができると思われました。
結局、どれがジャンダルムなのかわからないまま、過ぎてしまいました。だから、ジャンダルムの頂上へは行っていません。残念。
「ジャンダルムはもうすぐですかねえ」と聞かれたのですが、どこがジャンダルムかわかってなかったので、曖昧に返事しました。「ここのガレ場を登ったら、多分すぐじゃないですかねえ」
西穂から来たにしては早いな、と思いました。まだ6時半くらいです。
岳沢からかもしれないし、やはり天気の良いうちに、と思って暗いうち西穂まで登ったのかもしれません。
しばらく行くと、少し平らになった広い斜面のところに出ました。
6:48分。あたりは真っ白なガスで覆われていました。
荷物を下ろして、用を足しました。終わって立ち上がると同時に、霧の中から
「おーい」という男性の声が聞こえました。
声のした方向は、岳沢側の崖の下のようです。
最初、グループの誰かに呼びかけているのかな?と思いました。もうすぐ天狗のコルで、岳沢から上がってくる道があるはずなので、そこに誰かいるんじゃないかと。
耳を澄ましてみたけれど、最初の「おーい」から後は何も聞こえませんでした。
(もしかして、遭難者かも?)そう思って私も「おーい」と叫んでみました。
私、声の通りには自信があります。
しかし、返事はありませんでした。
そこでハッと気づきました。これは「山でおーいと呼ばれたら、おーいと返してはいけない」ってやつじゃないのか?!
私は山の怪談が大好きで、黒部の山賊の話ももちろん読んでいたのですが、すっかり抜けていました。おーい、と言われたら、ヤッホーと返すべきでした。
もう返事をしてしまったものは仕方ないので、少し先に進んで、岳沢方面が見える(実際はガスで真っ白)ところで、「ヤッホー」と言ってみました。返事はありません。
さらに降っていくと、天狗のコルに出ました。じっと気配を伺いましたが、誰かが登ってくる感じはありませんでした。
(ともかく、山荘の人にでも、話してみよう)と思い、不安な気持ちのまま進みました。何か悪いことが起こる予兆な気がして、慎重になりました。
1時間くらい歩いたところ、前方から人の気配がしました。4人くらいのパーティでした。
挨拶をして、天狗のコルで「おーい」と呼ばれたことを伝えたのですが、あまりピンと来ていないようでした。そのパーティーは4:30に西穂山荘をでたそう。
その後、たくさん人がやってきたので、これだけ人が通れば、もし遭難者だったら、また呼びかけるに違いないと思って、あまり気にしないことにしました。
すれ違った人たちは皆、この風の中、馬の背越えていくんだろうな、大変だなと思いました。
やがて人とも会わなくなって、延々ガスの中歩いていくと、看板のあるところに出ました。
「この先上級者ルート」みたいな内容のやつです。
ここから先は、もう道がいいのだな、と思いました。P1と岩にペンキで書いてありました。
少し先に、西穂高岳の道標がありました。頂上には誰もいませんでした。
ホッとして、記念撮影しました。
山荘まで行く途中、たくさんのハイカーに会いました。子供も軽装の人もいました。
こんな天気なのに、みなさんよく登ってくるな、と思いました。
西穂山荘に到着して、テントの受付をしましたが、ヘリが来る予定なのでテントは張らないで待機していて欲しいと言われました。寒かったので、早く暖かいものが飲みたかったのですが、我慢して外でじっと待っていました。軒下等での自炊は禁止、らしいので、残りわずかな行動食を少し齧って、休憩中の他の登山者と少し話したりして、待っていました。
焼岳まで行ってしまった方が良かったかな?と後悔し始めた頃、今日はヘリがこない可能性が高いから、テント設営して良いと言われました。寒い中、じっと待っていた姿がかわいそうだと思ったのか、山荘の方が、お待たせしてしまったので今日は水無料でいいですよ、と言ってくださいました。
テントを張ったら雨が降ってきました。
夜、予報通り、雨が強くなりました。
食料が残りわずかで、ヒモジイ夜となりました。ラジオもよく聞こえませんでした。
■8/4(火) 14日目 西穂山荘〜中の湯バス停
上り679m、下り1731m 距離 11.7km
荷物14kg
行動時間 7:30 (発3:50 着11:20)
雨はかなり降っていましたが、一日雨だから、食料も少ないし、なるべく早く下山しようと思いました。ただ、やはり撤収時の土砂降りは避けたくて、タイミングを見計っていました。
いまだ、と思って撤収作業を始めたら、隣のテント(高校の山岳部?)にいる男の子が、「誰だ、テントのそばにいる奴は!離れろ!」と喚きだしたではないですか。
そばにいるも何も、先に張ったのは私の方で、そっちが近くに張ったんじゃないか、と思いましたが、寝ぼけて、熊か幽霊がいると思っているのかな?と思いました。
同じグループで4つくらいテントがあって、他のテントは明かりがついて起きているのはわかっていました。ワイワイ話していた彼らもシーンとなってしまいました。
その後も、ずーっと喚いていて、指導者らしき人がか細い声で「どうされましたか」みたいに出てきたのですが、私がただ荷物をまとめているとわかると、引っ込んでしまいました。
例の隣のテントの中からは狐憑きにあったかのように男の子がずーっと喚き続けていて、不快を通り越して不気味でした。
昨日「おーい」と呼ばれたことと関係していたりして・・・
と、嫌な気分になって出発しました。
メインのヘッデンで歩き始めたら、20分も行かないうちにバツンと電池が切れてしまい、予備ヘッデンに切り替えました。樹林帯、雨の夜明け前は暗かったです。
やっと明るくなって、ぬかるんだ道を延々と歩きました。
残りの食料は、
ミルクファッジ1つ、チョコ1かけ、飴7粒、カロリーメイト2本でした。
焼岳小屋を過ぎた頃、少しだけ雲の切れ間になりました。
新穂高温泉方面に降りる道は、復旧中で通行止めでした。うまい棒食べ放題の「ひがくの湯」に行きたいなあ、と少し迷いがあったのですが、これで迷いが吹っ切れました。
もしかして、少しだけ晴れるかも?と淡い期待を胸に焼岳を登りました。
雨のせいか、登山道はグシャグシャしていて歩きにくかったです。
バイバイ、穂高。
晴れるか、と思ったのも束の間、頂上に近づくにつれて雨が激しくなってきました。
ところどころ、硫黄の匂いが濃く、蒸気が吹き出していたり、地面が暖かい場所があったりしてドキドキしました。まだ、「おーい」に返事をしてしまったので、連れて行かれてしまうんじゃないか、という不安がありました。
このタイミングで噴火してしまったりして・・・
頂上の分岐まで来ました。
荷物を置いて、空身で頂上へ向かいました。煙が勢いよく吹き出しているところが近くにあって、緊張しました。頂上の道標が見えました。着いた!と思って道標に近づいた途端、
「ドドーン」と鳴り響く音。噴火したのかと思って肝を冷やしましたが、雷の音でした。
ささっとシャッターを切って、トンボ帰り。
が、道は川になっていました。
降りれば、降りるほど、大きな川に育っていくようでした。
川を避けて歩くのは困難なので、沢下り気分でジャブジャブしました。
今日は誰にも会わないだろうな、と思っていたら、半分くらい降りたところで登ってくる登山者とすれ違いました。お互い「こんな日に登る奴いるんだ・・・」みたいな顔をしていたと思います。
車道が見える頃には、雨は上がっていました。
車道近くに可愛い花があったので撮影。ピンボケ残念です。
車道に出て、延々つづら折りの道を中の湯バス停まで歩きました。中の湯温泉まで、ショートカットする登山道があるのですが、松本行きのバスまで余裕があるので、歩きやすいアスファルトを延々歩く方を選びました。
中の湯の外来入浴受付は12時からなので、温泉は諦めていました。家まで我慢します。
中の湯バス停には、確か、バス待合所のような小屋があったと思ったので、そこで着替えたりしながら待とうと思っていました。
平日というのに、安房峠の道路は交通量が多かったです。
釜トンネル前の分岐まで来ました。ガードマンが2人いました。
バス停はあっちだよ、と指し示されたところは、ただの道路脇、屋根もベンチも何もありません。売店でコーヒーでも飲んで休んで行ったらいいよ、と言われ、初めて売店があることを知りました。卜伝の湯がやっていないので、何もないとばかり思い込んでいました。
道脇のホースから温泉が出ていたので、手を洗いました。
軒下で濡れた靴とレインウェア下を着替えさせてもらってから、中に入りました。
売店の人は、温泉客の送迎もやっているらしく、留守でした。
しばらく待っていると、戻ってきたので、コーヒーを注文しました。ちょこっと甘いお菓子もついています。
いつもはブラックですが、この時は砂糖・ミルクも入れました。
なんでもいいからカロリーを摂取したかったのです。
普通のお菓子も売っていましたが、山小屋価格だったので敬遠しました。が、お土産の栗入りの1口羊羹みたいな和菓子が6個入り550円で、コーヒーのお釣りと同じ値段だったので買うことにしました。中の湯のお土産みたいだし、ちょうどいいと思いました。
そうしたら、売店の方が、ひとつどうぞと、買ったやつと同じ和菓子をくれました。
何かもう少し食べたかったので、嬉しかったです。
バスまでまだ時間があったので、ト伝の湯のこととか、少し話をしました。
冬の上高地に入る人たちも、ここでバス待ち休憩していくんだそうです。
やがて、バスが来る時間になりました。外はまた雨が強くなっています。
バス停まで、傘使っていいよ、と貸してくれました。後で回収するから、置いといて、と。
バスが現れると、売店の人が外に出てきて、運転手に合図を送っています。
目の前にバスが止まり、私は手を振って、バスに乗り込みました。
■捕捉
・ソーラランタンは、家に帰ると充電ができる状態に復活していました。
・槍〜北穂で転んで打った尾骨は、椅子に座っていると痛くて、帰りの移動中辛かったです。
・「おーい」という男性の声は、熊の声を聞き間違えた可能性もあります。しかし、あまりにも平然とした人間の声に聞こえたので、動物の声とは信じられないでいます。帰りの移動中、翌日、翌々日も遭難事故の情報を調べましたが、該当する事故はなさそうでした。ただ、10日ほど前に天狗のコルで死亡事故があったようです(女性)
・帰宅後、数日たって体重は1.5kg減。基礎代謝が1150kcalくらいなので、1日2200Kcal摂取していたとすると、5、6時間の行動でシャリバテ状態になるのは納得です。
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