久々の海外遠征 カナダ 1ヶ月 その4 Assiniboineは、はるか遠く

 その3からの続きです

カナディアンロッキーのマッターホルンことMt.Assiniboine




■19日目 7/31(月)まさかの「山火事で道路閉鎖」再び

朝6時にキャンプ場を出ました。あまり暗いうちから歩き出すのは熊が心配だ、と言ってそんなに急いでいませんでした。AssiniboineLakeへのトレイルヘッドになっている駐車場までは、キャンプ場から車で1時間半ほどなので、8時には歩き始められるでしょう。



山火事はどんどん広がっているようで、朝からガスがかっていました。RadiumHotSpringsから93号線に曲がり、いったん国立公園に入ります。国立公園内を少し走って、クートネー川に沿った未舗装路へと曲がりました。曲がるとき、『#〇〇 WildFire・・・』という張り紙が見えました。こちらでも火事が起きているらしいです。


途中、1台に追い抜かれました。道路にもうもうと砂埃が立ち上がっています。
そのまま進むと左手(これから行く方向)に山火事の煙が立ち上っているのが見えました。嫌な予感がします・・・

果たして、次の曲がり角にて、『RoadClosed』と掲げられていました。
パーク職員がいたので、聞いてみましたが「VERY dangerous」なので「Turn back to town」せよとのことでした。


頭が真っ白になりました。
Beckey =Chouinardを諦めてAssiniboineにしたのに!
HindHut、頑張って電話して予約したのに!
そのために金土日の3日間ゆったり準備してきたのに!

Sは、もう諦めてこれからバガブーに行こうか、と言いましたが
HindHutも降りてきてから泊まる予定のInvermereHostelもキャンセル不可なのです。
$250を無駄にしてしまうし、何よりも、今、諦めたら、この夏のAssiniboineは絶望的でしょう。

とりあえずBanffに行こう、と言いました。
HindHutまではまだ他にも行く道があるのです。

私たちが行こうとしていたのはBC(ブリティッシュコロンビア州)側からのアプローチで、距離は短いけれど、標高差もあるし、氷河を渡らなければならないので、難易度の高いアプローチでした。(図の赤矢印)


一般的なのは、アルバータ州カナナスキスエリア側のMt.SharkトレイルヘッドからいくBryantCreekアプローチです。(緑色の矢印)
もう一つは、カナダ滞在2日目に行った国立公園内にあるSunshineスキー場のゴンドラで上がってから行く方法。(紫色の矢印、水色太線が車で迂回した道、100km以上ありました)


私の持っている地図の案内情報だと、

BryantCreek アプローチは、Assiniboineが見えるまで時間が長く、つまらない道が続く。Magog Lake(麓の湖)まで8−10時間、Elevation gain:460m

SunshineVillage アプローチは、最初から素晴らしい景色で、距離は少し長いが「標高差が少なく歩きやすい」。Magog Lakeまで9−12時間、Elavationgain:400m

とありました。

BryantCreekアプローチのことは、バーベキューの時にTOさんが「たるい道で面白くなかった」と言っていたし、キャンモアから未舗装道路を1時間近く走ることを考えると、歩き出すのが午後になってしまいそうです。

SunshineVillageアプローチの距離は29.0mらしいですが、これからBanffに行ってParkPassを買って、ゴンドラに乗れば11:00には歩き始められるはずです、そこから29kmを8時間で歩いて、19:00にGmosersHighWayに入って、22:00までにHutに辿り着ければ・・・何とかなる!のではないかと思いました。

多分、急いで歩くのは辛いと思うし、もしHutを目指すならば途中でやめることはできません(基本公園内では野宿しちゃいけないし、Assiniboine付近のキャンプ場は予約でいっぱいだし、Hut前提だからテントは持っていかない)。

Sに30km 歩いてでも行きたい、と言いましたが、
今からじゃ絶対間に合わない、暗くなってからGmosersHighWayは危ない、と否定的でした。
*GmosersHighWayとは、一般ハイキング道からHindHutまで行くクライマー道のことです。この時は、ノンクライマーは通れない道、くらいの認識しかありませんでした。雪が残っているのか、アイゼンアックスがいるのかも知りませんでした。

とりあえず、ダメだったら引き返せるところまでハイキングしよう、
Assiniboineの姿を一目見たいから、とりあえずシタデル峠(9km地点)まで行って話し合おう、と必死に訴えました。それで、その峠まで行ってみよう、と言ってくれました。

その後、Sunshineスキー場のゴンドラの値段が$60と知って、高くてやっぱりBryantCreekにしようかと迷いましたが、日帰りハイキングで終わってしまうかもしれないので、ここは金に糸目をつけず「ゴンドラを降りたらすぐに素晴らしい景色」の広がるコースで行くことにしました。それに、Assiniboineの姿を見たらSも、行く気になってくれる気がしたのです。

バンフの街まで行ったものの、パスが買えるビジターセンター付近に車で近づけません。周囲が歩行者天国になっているようです。駐車場も全て有料で、街中をグルグル回ってしまいました。時間がないので、Sを車に残して、ビジターセンターまでダッシュしました。レイクルイーズの時みたいに、外に自販機あるか探しましたが見当たらず、センターの中のカウンターで、3日分のPassを購入し、またダッシュで戻りました。そしてSunshineのゴンドラ乗り場へと向かおうとしたのですが、街中の踏切で貨物列車通過するところで足止めを喰らいました!(前も書きましたが、貨物列車すごく長い・・・)ハラハラしながらも通過を待つしかありません。
そして、Sunshineの駐車場へ向かいました。

駐車場は夜間停めっぱなしでもOKなのか知りませんでしたが、デカいザックのハイカーがたくさんいたので多分大丈夫だと推測しました。ゴンドラチケット売り場で、係の人に「今日戻らなくて明日になるかもしれないけど帰りも乗れるのか」と聞いたら、チケットに何か書いてくれました。


トイレを済ませて早速出発です。ゴンドラで6kmと登高差525mを稼ぎ(私の持ってるガイド地図情報による)、15分くらいで上に到着しました。ゴンドラから、作業道路を歩いて降りるハイカーの姿が見えました。ゴンドラの終了時間18:00に間に合わなかったら1〜2時間かけて埃っぽい道路を歩かないといけなくなります。もし今日、引き返すとしたら、ゴンドラに間に合うように・・・と頭で計算しかけましたが、引き返したくないと思い、Hutまで間に合うプランの計算に切り替えました。
何としてもシタデル峠まで3時間以内に行って、Sを説得しなくては!


ゴンドラを降りたら、係の人にハイキングのルールの説明を受ける必要がありました(整備した道以外歩かない、トイレは所定の場所でする、などです)。この時間も惜しいと思ってしまいましたが、説明は聞かなくてはいけない(Have to)決まりだとのことでした。

SunshineVillageの敷地を黙々歩いて、いったん州立公園内に出たと思ったら、今度はバンフ国立公園内になりました。シタデルまでは国立公園です。
目の前にMeadowが広がり、心地よい風が吹いていました。私の足取りは、かなり早かったようで、振り返るとSはずいぶん後ろにいるようです。(絶対無理だと思って、ゆっくり歩いているんじゃ・・)と思って、どうしようか不安になりました。


遥か前方に目を凝らすと、ニョキッと1つだけ目指すピークが見えました(赤丸)



あれは、もしかしてAssiniboineではないかしら?
Assiniboineはこの辺で一番高い山ですが、周囲をそこそこ高い山に囲まれているので、どの車道からもその山容は見ることができないのです。
以前、私が見たのもMt.Louisの頂上からでした。

振り返るとスキーのリフトが見えました。


コロンビアジリスが、今まで見たことないくらい沢山、活発に走り回っていました。




途中、ガイドツアーらしきハイキングの集団や、日帰りハイクを楽しむ高齢の夫婦など、人にたくさん会いました。





Meadowを抜けて、木のまばらな森を抜けて、湖へきました。




ハワードダグラス湖です。ほとりにキャンプサイトがあります。





湖にをすぎた頃には、遠くにあるトンガリは絶対にAssiniboineだ、と確信を持ちました。





しばらく行くと、前方に人影がありました。大きいザックです。もしかして彼らもAssiniboine?

シタデル峠につきました。Sunshine Villageの敷地から9km、2:45でした。悪くないペースです。ここを目的地として引き返す日帰りハイカーもいました。

前方にいた大きいザックのペアは、OgLakeまで行くとわかりました。私たちはOgLakeからさらに10kmくらい先のHindHutまでです。私たちはHindHutまで行く、と言いましたが「?」という反応でした。



さて、SはすでにHindHutを目指すと決めていてくれたようです!
この感じの道なら、何とかなりそうだと思ってくれたようです。よかった!!!

ここから下りが始まりました。500m近く降りました。(シタデル峠は標高2360、降りた一番下が1876m!)
登高400mで、急な登り下りのない歩きやすいトレイルと書いてあったはずなのに、説明と違うじゃないかと思いますが、地形図で見てかなり下るのはわかっていました。


降りて、森の中になりました。しばらくAssiniboineの姿とはお別れです。


南側の斜面で、標高も落ちたせいか暑かったです。
黙々と歩いて、シタデルから約10km、ハイキングの2/3地点にあたるOgLakeを目指しました。
人はまばらになりましたが、OgLakeに向かう人や、こちらに歩いてすれ違う人がちらほらいました。やがてロックガーデンのような地点になり、Assiniboineが再び見えてきました。



ロックガーデンにはゴールデンマントルジリスがいました。彼らはよくペアで行動しています。


再び見えたAssiniboineは、近付いたような近付いていないような・・・山火事由来のガスのせいでしょうか、まだまだ、ぼんやりと霞んでいました。


OgLakeに到着しました。16:30くらいです。十分間に合いそうなペースです。
キャンプ場があるので水が補給できると思っていたのに、湖面は遥か下、湖に流れ込むCreekは全て枯れ沢で、水道はありませんでした。

水補給は諦めました。喉はカラカラでした。水をあまり持ってきていなくて、6時間以上歩いているのにひとり600mlくらいしか飲んでいませんでした。


OgLakeを過ぎて、また広大なMeadowとなりました。大きなでっぷりジリスが駆け回っています。Assiniboineの姿は、だんだん大きくなってはっきりしてきました。


途中、大きな岩の上にもジリスがいました。

Meadowの最中で、AssiniboineLoge(多分お金持ちがヘリコプターで来て泊まっている、高級ロッジ!?)から散歩にきたと思われるファミリーに会いました。Sunshineから歩いてきたの?すごいわねー見たいなことを言われました。Magog Lakeが近くなったのだと思って嬉しくなりました。でも、大変なのはMagog Lakeの先なのです。

Magog Lakeのキャンプ場に着いたのは19時をまわってしましました。予想より長い道でした。キャンプ場内に水道があって助かりました。掲示板のところで水をゴクゴク飲んでいると、Wardenらしきおじさんに話しかけられました。

「今着いたところかね?」
これからキャンプ場に泊まる人だと思われているかもしれないので、
「実は、今からHindHutに行くんです、遅い時間だってわかってるけど」と答えました。
「Hutへの道は危ないよ?」
「わかってます」
「道を知っているのかい?」
「知ってます」
おじさんは私たちの格好を見て、Sのザックにアックスとヘルメットがぶら下がっているのをみて、「じゃ、気をつけて、GoodLuck!」と去って行きました。カナダ国旗のワッペンのついたナップザックを背負っていました。

道は知っていると言いましたが、Geographicaアプリの地図に”HindHutHeadWallApproach”って道が載ってるから大丈夫なんじゃないかな、と思ったのです。詳細は知らないです。でも、もし、AssiniboineLodgeから定期的に管理する人が通っているなら、そんなに難しい道じゃないんじゃないかなと楽観的でした。
が、いざHeadWallを目の前にしてみると、かなり険しい崖に見えて不安になりました。


何だかデカい滝の高巻きをするような感覚です。
それでも、近づいたら意外といい道、ということはよくあります。とにかく先を急ぎました。

キャンプ場から先はまだ普通のトレイルが続いていましたが、突然、”HindHut”とかかれた木の手作り風の看板が現れて、道は崖の方へと登って行きました。

水の流れるガリーを通過しました。そこに、マーモットが現れて、こっちだよ、という風に先に登って行きました。ハルクの時にも、アプローチの途中の岩場にマーモットが現れて、無事ベースキャンプにたどり着けたことを思い出しました。私にとっては、幸運のマーモットです。このまま無事にHindHutに行けるのだ、と思いました。


もう一つガリー状を越えて、ザレた斜面を斜めに登って行きました。1箇所だけ、雪解け直後でザレた地面が怖かったのですが、その他はバガブーの各アプローチと比較してもそこまで悪い道ではありませんでした。

やがて壁のトラバースっぽくなってきました。懸垂支点が出てきました。ちょっと間違って上に行き過ぎてクライムダウンしました。高度感があって緊張しました。もう一つ、懸垂支点が出てきました。ふと怖くなって、ロープを出してほしい、とSにお願いしました。が、Sは何で出すの?という感じでした。

ロープを出してみたものの、浮き石に引っかかってロープが重たくなるし、すぐにロープは邪魔なだけだ、とわかりました。ごめん、間違ってた、と謝ってすぐロープを収納。トラバースを続けました。Sの読み通り、ロープは全く要りませんでしたが、間違ってよろめいたら、下に真っ逆さま!だと思って慎重に歩きました。どこまでトラバースして、どこから上がるんだろう・・・先が分からないので、長く感じました。

やがて、トラバース道がなくなり、上に登るらしいとこまで来ました。よーし、登るぞ、と張り切って露出感のある壁に取り付きましたが、冷静になって、こんなにクライミングっぽくはならないはずだ、とあたりを見回しました。
やはり、ちょっと戻ったら登やすいガリーがありました。

ガリーを登ったら、もう崖の上に出たようです。振り返って写真をとる余裕がでました。いつのまにか、夕暮れになっていて、絵のような美しい光景が広がっています。
明るいうちに、崖上まで来れてよかった!



ただ、まだ標高は2500mでした。あとまだ400mくらい登らないといけない、と思い込んでいたので、ペースを緩めず、ゴーロ帯を登り続けました。
Assiniboineは薔薇色に染まっています。



ちゃんと確認したところ、実はあと200mだとわかりました。私はHindHutは3000m近い標高にあると思い込んでいたのです。実際は2700mでした。
*9000フィート、と記憶していたのですが、100フィート=330mで計算してたのです!

あと少し、とわかって喚起したものの、HindHutの姿は全く見えません。
やがて「Hut見えた!」と声を上げましたが、山の斜面についた雪をHutの屋根と見間違えただけでした。
が、その後すぐに本物のHutが現れました。今度こそ幻覚ではない!
到着時、22時を回っていました。もうヘッデンが必要になるくらい暗くなっていました。Hutに灯りは灯っていません。

Sは、管理者がいるはずと思っていたようですが、私は、基本的に無人だと思っていました。




中に入ると、果たして・・・
入り口に靴がありました。誰かいるようですが、もう寝ています。中は暗いので、赤目のヘッデンを付けて、ゴソゴソしていたら声をかけられました。(SはNewヘッデンで赤目のやり方分からずピカーっとしていました)

私「遅くに到着してゴメンなさい」
親切な人「予約はしてあるんだよね?どこから来たんだい?」
私「予約してあります、本当はAssiniboineLakeの方から来るつもりが、今朝、山火事で入れないと分かって・・・」
親切な人「僕らも同じだよ、ぐるーっと回って長い道を歩いたよ、僕らは今日登って明日朝イチで降りるだけだから、こっちの奥を使いなよ。あ、水はそこに汲んである、ガスはここ、トイレは外の向こう側、君たちはすごーくお腹が空いているだろうから、気にしないで、早く何か食べたほうがいい」
と、何とあれこれと親切にしてくれます。

その上、Hutの外に出て、アプローチはあの辺がいい、アックスもクランポンも要らない、などと教えてくれました。

とはいえ、もう1組カップルがベットの上段にいるらしいし、朝早く発つ彼らがよく眠れるよう、私たちも早く寝ようと思いました。TimHortonのバニラカプチーノとジャスミンティーを飲んで、エナジーバーとジャーキーを少し食べてすぐ就寝しました。

この日、ハイキング中に食べたのは、ポテチの食べかけの残りと、粉ジュースと、エナジーバー1本だけでしたが、お腹は空いていませんでした。ただ激しく喉が渇いていました。
興奮しているせいか、疲れているはずなのになかなか寝付けません。Hutに辿り着けた喜びで胸がいっぱいでした。0時半を過ぎているのを時計で見ました。その後、いつの間にか眠っていました。





■20日目 8/1(火)この山を遠くから見て、登りたいと思ってから6年・・・

翌朝、6時前に目が覚めました。一番遅くに到着したくせに、一番早く目が覚めたようです。
昨日親切にしてくれたクライマーたちも起きて、出発準備をはじめました。

親切な人「君たちが去るときは、戸締りとガスの元栓を閉めるようにね、水は向こう側の氷河から汲めるよ」とまた色々説明してくれました。
さらに去り際に、「ゴミある?」と言って、私たちのゴミまで持っていってくれました。

上のベットのカップルはまだ起きないようですが、最後、親切なクライマーが去る時に「昨日はありがとね!」見たいな挨拶をしていました。

日の出直前の、空がとても美しい時間帯に親切な彼らは去って行きました。


最初、色々説明してくれるので小屋の人かと思った、とSに打ち明けました。
こういう無人小屋に泊まったことがなかったので、どういうものか分かりませんが、やはりクライマー同士、色々協力する文化があるのかもしれませんし、彼らが特段に親切だっただけかもしれません。

ともかく、必死に30km近く歩いて、未知のGmorsersHighWayを突っ切って、日の入り後に小屋に到着したら、こんなに暖かく迎えてれる人たちがいたことが、すごく嬉しかったのです。

さて、朝ごはんを食べて、8時くらいには出発しようか、と準備に取り掛かりました。
まだ水分が足りていないのか、お茶を何杯も飲みましたが、私にしては非常に珍しく、食欲がありませんでした。なんか腹も痛くなってきました。



上の段のカップルも起き出しました。コーヒーが大好きみたいで、ちゃんとドリッパーと粉持ってきていました。モカエクスプレスのタトゥーも入っていたから、コーヒーショップを経営してるのかもしれません。ハッピーな感じの若いカップルでした。

「君たち、昨日はBIG DAYだったみたいだね、今日は頂上まで行くだけだからSmallDayだね!」見たいなことを言って笑っていました。


水場を見に行ったら、薄氷ができていて、面白い模様になっていました。


トイレに行ったら、愕然としました。
予定よりも1週間くらいはやく生理が来てしまったようです!
なんでだろう、昨日の”山火事どうしよう”状態であれこれ悩んで、精神的負担がかかったせいでしょうか・・・
ほとんど備えがないので、気が重くなりましたが、ロキソニンを飲んで、気持ちを切り替えて出発しました。予定より早く7時半前に出発しました。

教えてもらった通り、ケルンの後を丁寧に辿って、黒い帯の間を抜けるようにして尾根状に乗っかりました。(多分、緑のライン)
Hutからは凶悪なScreeに見えましたが、近づくとGmosersよりずっと歩きやすかったです。


多分、黄色のラインがNorth Ridgeだと思われます。線はかなり適当です。

朝からガスが流れ込んでモヤ〜っとしています。


最初、少しリッジを離れ過ぎてしまい、壁状になってしまいました。


ちょっと迷いましたが、リッジに戻ると、ケルンや足跡がありました。


ずっとリッジというわけでもなく、ケルンや踏み跡を追ってウロウロしながら、なんとかレッドバンドまで到着。レッドバンド、グレーバンド、の2箇所がちょっと急な壁で核心という位置づけらしいです。



少し雪がついている斜面もありました。


北東側を覗き込むと、急峻な壁!


その後、グレーバンドで一応ロープ出しましたが、出さなくてよかったかも?という感じでした。ザレている斜面を歩く方が緊張しました。岩はGoodです。
グレーバンドを超えると、いよいよ頂上へまっしぐら、と言った感じの稜線でした。
段々、山頂に向かって幅が狭くなってきた感が出てきました。


高過ぎて、現実味がありません。


山頂まであと少しです!上部は意外と横長です。



山頂につきました!



ちょうど正午です。

ジャーン!

6年前とヘルメットもウエアも一緒・・・
思えば6年前の2017年にバンフに初めてきて、Mt.Louisの頂上から見えて気になったトンがった山がAssiniboineだったのです。その時帰りに地図を買って、こうして役に立って、今ここにいるのだと思うと、ジンと来るものがありました。

山頂には特に何もない?と思いましたが、岩垣の中に・・・


SummitPostがありました。登頂リストに名前記入してきました。
今まで、何度か見かけたことがありましたが、初めて記入しました!


しばし、山頂からの眺めを楽しみました。上の段にいたカップルは今日降りるだけだった模様で、この日、他に誰もいませんでした。Assiniboineは貸切状態。Hutから頂上まで4時間半くらいでした。


カナナスキス方面の湖は色が違いました。
通る予定だった、とても綺麗だと評判のAssiniboine Lakeは山頂から見えませんでした。


さて、下降の方が時間がかかりそうです。30分ほどゆっくりして、下降開始しました。


Magog Lakeがはるか下です。


Hutがすごくちっちゃく見えます。


Hut、だいぶ近づきました。


帰り道も、同じくらいの時間でした。下りのほうが地形がよく見えて、ルートがわかりやすかったです。BC州が設置した4つの立派な支点の他、加えて2回誰かの残置スリングで懸垂しました。


Hutに戻ったら、もう誰もいませんでした。ここも貸切です。外のベンチでAssiniboineを眺めながらお茶を飲んだり、昼寝したり、ゆったり過ごしました。とてもいいひと時でした。

Hutは別荘のようで、居心地がよかったです。鍋や食器は一通りありましたが、ヤカンはなかったです。お世話になったので、床を掃除したり、寝マット(フカフカ!)を拭いたり、きれいにしました。


端の荷物みたいなのは、昼寝している私です。


全部で12人寝れます。サーディンスタイルで。
英語で、サーディンスタイルというんですね!


トイレも写真撮ればよかったです。岩壁を利用したやつで、ApplebeeDomeのトイレににていました。トイレの蓋に、アルパインクライマーの写真が貼ってありました。トイレを作った人でしょうか?文章もありましたが文字が霞んで読めませんでした。

夕日を浴びて真っ赤になったAssiniboineを撮ろう、と思っていましたが、赤くなりませんでした。残念。

このあと遅くに、誰か来るかもしれない、と待ち構えていました。
来たら昨日の夜みたいに、私たちも親切に出迎えるのだ、と張り切っていました。足音がして、来たぞ!と外に出ても誰もいませんでした。風でベンチが揺れたりする音を足音と聴き間違えたようです。結局誰もやってきませんでした。



未明、トイレに起きたら、満月が綺麗でした。


■21日目 8/2(水)ゴンドラには乗れるのか?


日の出前6:00にHutを出ました。
私は引き続き食欲がなくて、朝ごはんを半分Sにあげてしまいました。
帰りは少しゆっくり歩いても11時間あればゴンドラ乗り場に到着できるだろうと踏んでいました。早く到着したらSunshineVillageのレストランで何か食べたいです。

Gmorser’s HighWayの、ザレていて怖かった場所の下降が一番心配でした。

薄明の中、Head Wallに向かって歩き出しました。




ありがとうHindHut! 




さよなら、Assiniboine!



朝の景色は、昨日と同じようにとても綺麗でした。
最上部の急なところを無事降りて、トラバースに入ります。



朝日を浴びて、赤くなった壁がきれいです。


一度だけ懸垂で降りました。
心配していたザレのところも問題なく通過できて一安心です。



まるで門のようなガリーを降りて、最初に登った濡れたガリーまできました。幸運のマーモットがいたところです。


そうしたら、また、マーモットが先に現れました。やはり、私たちが降りる道の先の方へ行ってしまいました。無事を祝ってくれているかのようでした。



少しSに離されました。
ガリーから降りてくる私の姿が小さく見えます。


この先はクライマーオンリー!の注意書きです。
行きは急いでいたので写真を撮れませんでした。


MagogLakeキャンプ場の荷物置き場です。
熊対策でずいぶん高いところまで持ち上げられます。


結局、Magog Lakeキャンプ場まで3時間かかってしまいました。
30km歩いて疲れた体で迷いながら登った時間と変わらないとは・・・
一昨日、いかに集中して頑張っていたかに気づかされました。

ちょっとだけ遠回りして、湖沿いのトレイルを通ってAssiniboineロッジに立ち寄ることにしました。もし、売店みたいなのがあったらアイスが食べられるかも、と少し期待して・・・


ロッジは、宿泊客以外にはアフタヌーンティーしか提供していないようでした。アイスは売っていませんでした。



ヘリ待ちの人たちがたくさんいました。
そういえば、火事でBC側アプローチがNGになった時、ヘリのことも考えたのですが、ヘリは週3日、特定の曜日にしか出ていなくて、私たちの日程とは合いませんでした。
帰る日の、この日、水曜日はヘリが飛ぶ日でした。
ヘリがいくらなのか調べていませんが、もしかしたらゴンドラ$60よりコスパがいいかもしれません。


ロッジを見学して、Og Lakeへ向かいました。
湖沿いの道も、ロッジからMeadowに出る道も、来るときに使った馬OKのトレイルよりずっと歩きやすかったです。


振り返ると、Assiniboineはだいぶ遠くなりました。

Meadowに出る前の森の中で、大きいウンチを発見しました!熊?熊のなの?!
慌てて熊よけの声を張り上げましたが、前方にワイワイ集団ハイカーたちが歩いているのを見てホッとしてやめました。


思ってたよりOgLakeは遠くて、ジリスのいた岩のところでいったん休憩しました。


OgLakeでまた休憩です。ちょうど掲示板の影にベンチがあって良い休憩場所でした。


しかし、予定より時間が押していました。
OgLake到着10時のつもりが、11時15分でした。

そして、Ogを過ぎてロックガーデン地帯に入り、Porcupineキャンプ場との分岐まで、1時間くらいかな、と思っていたのに、もっとずっと時間がかかってしまいました。

2人とも、歩くペースがかなりゆっくりになっていたし、頻繁に休憩が必要でした。喉もすぐに乾いてしまいます。行きより水は多めに持っていましたが、足りなくなりそうでした。

分岐(Ogから5.5km)の手前で休憩したとき、もう13時でした。
ここからシタデル峠まで8kmくらいあります。しかも暑い斜面を500m登高しないといけないのです!

疲れたぼんやり頭で計算してみました。
ゴンドラ乗り場からシタデル峠まで、行きの急ぎ足で2:45かかりました。ゴンドラが18時に終了することを考えると、15時にはシタデル峠にたどり着きたいところです。
2時間で、行けるかなあ、結構ギリギリだぞ、と思いました。



そこで、Sが絶対にゴンドラは無理だ、と言い出しました。
そもそも、一昨日のDayチケットで帰りのゴンドラに乗れるのかも確証がありません(私がチケット売り場の人に、帰りは翌日になるかもしれない、と言ったので、チケットに手書きで7/31 or 8/1と書かれていた。この日は8/2)

それでも、私はなるべくはやく帰りたかったので、
「最初から無理だと諦めて、だらだら歩くのはよくないと思う!水も足りなくなっちゃうし、私の股も心配だし、(もうナプキンないし、替えのパンツも持ってきてない!)、そもそもSは足は元気で、肩が辛いって言ってたじゃない、さっさと歩いてはやく荷物を下ろした方がいいんじゃないのけええ!」と勢いよく言いました。
そう、Sはサブザック に重たいものを入れていて、私は大きいザックにかさばるものを入れていたので、Sは肩が痛そうだったのです。


あと8km、時速4kmでシタデル峠まで2時間で登れるでしょうか。
帰りはゆっくり景色をみながら、ハイキングを楽しみたかったのですが、結局急いで歩くハメになりました。

Sは覚悟したのか、スイッチが入ったようで、2倍くらい速度が早くなりました。
さっきまで、私が前を歩いていて、Sが休憩したいと言っていたのに。
なんだやればできるじゃん、最初から速く歩けばよかったのに、と思いましたが、
OgLakeのあたりからスピードが落ちていたのは私も一緒です。暑かったのと疲れていたのもありますが、行きの私たちは相当頑張って早く歩いていて、帰りの所要時間の計算がうまくできなかっただけだと思います。

長い斜面のトラバースに入ると登りに切り替わります。それからつづら折りに登ってゆく道でSが全く見えなくなりました。
途中、股がどうしても気になってしまうのでマイクロファイバーの雑巾を当てがいました。そうしたら、濡れた感じがしなくてすごく良くて、早くこうしておけばよかった!と思いました。

坂を登り切ったら、シタデル峠までまだ距離がありました。やっとSが見えました。
ずいぶん離されたかと思いましたが、それほどでもなかった模様です。

結局、シタデル峠に着いたのは15:30でした。
ゴンドラ乗り場まで、2時間半で行けるでしょうか???

とりあえず、まずは湖まで頑張ろうと思いました。
行きは早く歩くのに集中していて、全く記憶になかったのですが、湖までは登り坂でした。振り返るとAssiniboineはもう霞んで見えなくなりそうでした。



下りになったら、重力に任せて小走りです。
湖の先が小山になっていて、そこの登りがキツそうです。


湖は波立っていて綺麗でした。
時間があったら泳ぎたかった。


湖の先の小山の登り坂は、思っていた通り、しんどかったです。シタデル峠への500mアップで、力を振り絞ってしまっていたので、ここで力を振り絞っても残りカスのような力でした。

登り切ると、目指すゴールが見えました。
はるか遠い!
あと7kmくらい?


喉がカラカラでした。水はまだ少し持っていましたが、ザックを下ろして飲む時間がもったいないので、Sの腰に下がったボトルをゴールデンマントルジリスのように狙って近づき、何口かもらいました。


やがて、スキーのリフトが見えてきて、分岐の道標のあたりに、人影が見えました。
ゴンドラに間に合いそうだと思って、嬉しくなりました。人気ハイキングコースのはずなのに、ここ3時間くらい誰も見かけていなかったのです。

最後、Shunshieの敷地内の作業道みたいな道を降りていきましたが、突然、Sが「この道であってる?記憶にないんだけど・・・」と恐ろしいことを言い出すので、私も「道間違った?」と焦りました。
結局、道はあっていました。数分後、ゴンドラ乗り場が見えてきてホッとしました。

さあ、最後に、一昨日のチケットで載せてくれるかどうか、です。乗れなければもう90分ほど、暑い埃っぽい未舗装車道を歩かないといけません!

係の人に、なんて言おうかな、すごく疲れた顔をすれば同情して乗せてくれるかな、それともあまり変なこと言わないでサッとのっちゃおうかな、とあれこれ考えていましたが、
係の若い女の子がダンスしていたのを見て、これはOKそうだ、と思いました。
それで、「Return way, OK?」とチケットを見せたら、「Uh,OKey!」とニコニコ返してくれました。


そんなわけで、帰りもゴンドラに乗れました。
行きだけの片道切符で$60は高いけれど、帰りも乗れたから、まあいい買い物だったと思いました。(後で知りましたがオンラインでチケット買うと$5値引きされるらしいです)


すごく喉が渇いていて、行きに見かけていた自販機でコーラ買いたい!とワクワクしていましたが・・・


Sold Out
でした。冬しか使われていないっぽいです・・・
それで、車の中にあった温まったカナダドライを飲みました。後、灼熱の車中でいい感じに熟したバナナも食しました。美味しかったです。



それから、またInvermereまで移動しました。私が運転しました。
チェックイン18:00にしていたので、念のためメールで遅くなるよと連絡しておきました。
InvermereのスーパーSobeyに売っていた鶏の丸焼き(たったの$12です)を買いに行こうと思いました。


Kootney側の道路は山火事でますます煙たいことになっていました。Invermereも、街中に、山火事の灰が飛んできていました。



これでは、BC側(バガブーとか)のクライミングはちょっとリスクが高そうだと思いました。道路が閉鎖になる恐れもあるし、天気も不安定だし、明日からキャンモア方面に戻ることに決めました。

楽しみにしていた鶏の丸焼きは、時間が遅かったせいで、もう売っていませんでした。残念!

*後で、SのGPSログだと、SunshineVillageからAssiniboine頂上まで 累積標高は3708mだったとわかりました。ログ上、SunshineVillageは2166m Assiniboine頂上は3552m(実際は3618m)です。海抜0mからAssiniboineの高さまで上がるより、高く登っていたのです・・・!

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