静岡・大浜海岸から韮崎へ 身延山地〜南アルプス前衛

山梨百名山も10座を残すのみ、となっていました。

七面山と十枚山は、繋げて縦走したいと以前から思っていました。そして、源氏山と富士見山も。どうせなら、これら四座を一気に片付けてしまいたい。




地図を見ると、静岡駅まで稜線が伸びています。
どうせなら、いっきに太平洋まで行きたい。

時期は、雪がまだ積もっていないけど、寒い晩秋が最適でしょう。静岡側のヒルが怖いからです。

そんな風に考えていたところ、12月初旬に韮崎で忘年会があるとのことで、
どうせなら、このラインを北上して忘年会に参加しに行こう、と思いついたのでした。
海へ行く方が標高差が少なくてすみそうですが、私は街から歩いて行く山旅が好きなので、どちら側から歩いてもたった数百メートルの差です。海がゴール、もいいですが、忘年会がゴールというのもまた面白いでしょう。


しばらく長い縦走をしていなくて体力に自信がないうえ、晩秋のロングハイクは経験が少ないです。この時期は、日が短く、雨になるか雪になるか微妙な気温なので、長い距離を歩くのは色々と工夫が必要そうだ、と思いました。
それで、ゆったり途中で宿に泊まる計画としました。七面山を降りて、麓の早川町の宿に泊まるまでが前半3日。後半3日で南ア前衛の山々を抜けて櫛形山を最後に街へ降りる計画です。


全行程

累積標高は上り約7300m、水平距離は111kmです。
途中の車道や林道も含みます。

それから、これまでの70リッターザックに20kgオーバーの荷を背負うヘビー&スロー スタイルから一転し、ウルトラライト(UL) スタイルに挑戦してみました。

持ち物では、シュラフをどうするか迷いました。私は厳冬期用のシュラフかシュラフカバーみたいなペラペラのポリゴンネストしか持っていないのです。
0度くらいならシュラフカバーのみでもなんとかなるのですが、今回最後に宿泊する予定の場所(祠頭)は、標高1800mあります。以前、年始に泊まったときは強い寒気が来て−15度くらいになったことがあるので、なるべく寒くないようにしたいです。

重さを測ってみたら、なんと
ポリゴンネスト+象足+ダウン上下=厳冬期シュラフ でした。

それで、氷点下の廻り目平で ツエルト+厳冬期シュラフで宿泊してみました。
とても暖かいけど、シュラフはそれなりに結露しました(冬はテントでも車中泊でも、寝袋の襟元と足元の結露がすごいのです。私の体温が高いからでしょうか?)

そして、0度に近い雨の中でツエルトで泊まってみたくて、雨の降るタイミングを狙って長沢背稜へ行きました。結果、雨は降ってツエルトが盛大に結露するなか泊まりましたが、気温は5度以上あって、寝袋の結露は???でした。そもそも暑くて半分寝袋から出て寝てしまいました。

しかしULと謳いながら厳冬期用シュラフとはいかに。棒ノ嶺の頂上で出会ったハイカーに「わあ、大きい荷物ですね!」と驚かれました。いつもの半分しかないんですけどね!


長沢背稜は、小沢峠からずっと県境を通り、雲取から石尾根を降りて奥多摩駅へ歩きました。
下山後に確認したら、ちょうど今回の静岡ー韮崎の山旅の半分くらいでした(標高も、距離も)
長沢背稜は1泊2日で、2日目はヘッデン下山となり、かなり疲れました。


軍畑駅→小沢峠→長沢背稜→雲取→石尾根

大浜海岸、静岡駅→韮崎


その後、クライミングしたり、高尾あたりを歩いたり走ったりして調子がとても良かったのですが、出発5日前になって風邪をひいてしまいました…
かなり焦りましたが、ありとあらゆる対策をしてなんとか乗り切りました。絶好調とは言えないものの、鼻水たらしながら出発です。


■11/30(土) 横浜の自宅から静岡駅へ

横浜駅で紙の切符を購入。熱海越えをすると、到着駅で精算が必要になるのです。土曜日の駅は大混雑でした。東海道線も混んでいました。


駅前の宿泊地に荷を置いて大浜海岸へ往復(TJARのゴールになっているところです)

静岡駅⇆海岸 往復で平地10km

天候:快晴


0日目

大浜海岸

大浜海岸にて念願の海面ピシャッをやってきました。夕暮れの空と富士山がとてもきれいでした。

私の後、小さいザックで走ってきた男性がやはり、同じ場所で、海面ピシャッ!をやっていました。



■12/1(日)静岡駅から賤機山・竜爪山を経て小鹿の池へ

行動時間10.5h、距離20km、累積標高(上)1800m
行程:静岡駅3:00 - 賤機山公園3:30 - 桜峠6:30 - 文殊岳10:10 - 真富士山手前の1112ピーク13:30 

天候:晴れ、賤機山公園で8度、その後ずっと暑い!

1日目


1日目の終わり


人がいない未明の時間帯をねらって賤機山公園に行ったのですが、正面の神社が夜間閉鎖されていたので迂回して井宮町側のハイキング道から入りました。夜景がきれいでした。タヌキがいました。


新東名をくぐって急な階段を通り、茶畑を抜けてトリカブトの段に到着。まだトリカブトが咲いていました。
歩いていると、下界でなにやらワンワン放送しています。ケータイの緊急アラートがなってびっくり、静岡市の津波警報です。が、訓練放送でした。モバイル通信オフでも届くのだな、と知りました。

東海自然歩道に合流すると、やたらといい道になりました。が、日曜なのにまだ誰にも会わないのです…
文殊岳の頂上にでてやっと、たくさんの人に会いました。天気のいい日曜日っぽい雰囲気になりました。人が多いのは文殊岳から穂積神社分岐までで、その先は一組男女に出会ったのみでした。

宿泊予定していた、1112ピークには予定よりもずっと早く到着しました。地形図をみて気になっていた池は、「小鹿の池」というかわいらしい名前でした。池のほとりでウォールデン気取ろうかとしましたが、湿度がたかく結露するのを恐れて、少し戻った見晴らしのいい広場に泊まることにしました。

伐採された広場

ゆったり落ち着いたら、疲れを感じました。とくに腰のあたりです。フレームのないザックなので、背中から腰に負担がかかったのでしょうか。


■12/2(月)青笹山を越え十枚山を登頂して刈安峠へ(虫に怯える)

行動時間10.5h 距離15km、累積標高(上)1200m
行程:1112ピーク5:00 - 青笹山10:00 - 十枚山14:50 
 - 刈安峠手前15:30

天候:晴れ(日暮れには、雲がかかった)

2日目

2日目の終わり、予定では刈安峠の先の台地だった。実際は峠手前1.5kmくらいのところ。


朝は霜が降りて、ツェルトにもたくさん霜がつきました。気温は氷点下いくかいかないか程度。風もあまりなく、寒いとは思いませんでした。

とくにゆっくり歩いたわけでもなく、熟睡できて疲れもとれて元気だったにもかかわらず、予定よりも時間がかかってしまいました。
それで、浅間原通過時、水補給をスキップしました。2.2L持ってきた水は、まだ1.6Lも残っていたからです。浅間原周辺から青笹山にかけては、しばらく刈払いされていない笹の道で、両側からのびた笹がジッパーみたいに組み合って、かき分けて進むのに時間と体力を奪われました。
笹薮と格闘後、青笹山頂上にでました。そこから先は広くて刈払いされた良い道が続きました。単独男性、二人とすれ違いました。この日会った人はこれだけでした。

気温が高くなり、ポカポカしたところで、ツエルトや寝袋を干しました。

岩岳の岩


岩岳は、名前の通り頂上付近に立派な岩があり、ライオンキングごっこができました。その岩にはクライミングルートが複数ありました。ボルトピカピカ、最近開拓されたように見えました。

日差しの強い草原状の上り坂は暑くてペースがあがりません。が、十枚山に着く頃、雲が湧き出しました。

十枚山の山頂にて

十枚山を越えると、テン場に良さそうな感じのところがたくさんあったので、刈安峠を越えずに手前で泊まることにしました。
理想的な場所を見つけ、ツエルトを張って食事の準備をしていたら、ツエルトの端が黒く汚れていることに気づきました。それは、汚れではなく、黒い小さな虫の群れでした。ツエルトだけでなく、マットや食料袋にもたくさん集まってきました。長沢背稜のときにもみかけた、地面にいる飛ばない細かい虫です。枯葉の下にいた奴らが、でてきたようです。

いまさら、ツエルトを移動するのも大変だし、ちょっと移動しても同じ虫が居るかもしれません。朝起きたら、シュラフの中がびっしり虫だらけ!なんてことになるかもしれない…と恐れおののきながらも、覚悟を決めてそのままそこで寝ることにしました。
虫が体を這っているような幻覚でなかなか寝付けず、三十分くらいおきに虫をチェックしました。どうやら、寝袋には入ってこない様子だったので、安心して眠りました。


■12/3(火)八紘嶺を越え七面山を登頂して、早川町ひのや旅館へ

行動時間14h 距離19km、累積標高(上)1400m
行程:刈安峠3:00 - 安部峠8:40 - 八紘嶺10:00 - 
七面山(敬慎院前)14:00 - 裏参道経由 - ひのや別館16:00

天候:晴れ、風がちょっとあって寒く感じた



3日目

3日目の終わり

昨日は、予定より手前の場所で泊まったし、疲れでペースが落ちる可能性を考えて、2時間出発をはやめました。3時出発です。ツエルトはまったく結露せず、気温は氷点下ない様子でした。虫はツエルト底面やシートにたくさんついていましたが、悪さはしていませんでした。

星空&夜景の未明ハイクをたのしみながら、サクサクあるきました。
が、安倍峠には当初の予定通りの時間(8:30)の到着となってしまいました。2時間早くでたはずなのに…

そして、安倍峠をすぎたトイレ(閉鎖中)のある駐車場まできて、水場を探したのですが水場がどこかわからない… どうやら、安倍峠から降りる登山道の途中にあるらしいと気づきました。戻るのも時間がかかるし、七面山(14:00着予定)まで、水補給はガマンすることに決めました。水は残り250ml。

八紘嶺までの上り坂は暑くて喉が渇き、少しずつ大事に水分補給しました。その先、希望峰までの樹林帯も立ち枯れの木が多く日差し厳しく、やはり喉がが渇きました。ハイチュウで我慢しました。

希望峰には予定より少し早く到着できてほっとしました。
七面山の山頂はイメージと違っていて「!!」となりました。
希望峰〜七面山では4組の登山者たちに会いました。

七面山周辺の崩壊地

敬慎院の前の広場で、ライブカメラに映りました。人がいない隙に踊りました。
奥の院へ行くと参拝者向けの無料休憩所がありました。お茶とお水が用意されていましたが、参拝しにきたわけではないので遠慮して、通り過ぎました。水は、もう50mlもなかったのですが、さっさと下界に降りてしまいたくなっていました。
駆け下りて2時間。ひのや別館で、お茶をたくさんのみました。

前半終了して、ひと安心です。快適な部屋で、ゆったり。
ところが、各種充電をしようとしたら、USBのアダプタが壊れていて、ヘッデンもケータイも充電できないことが判明しました!宿の人に言って充電器を借りようかとも思いましたが、ここは思い切ってケータイオフのまま後半いくことにしました。

このところスマホのGPS機能に頼りすぎていたきらいがあります。以前は地図とコンパスだけを頼りに歩いていたのですから、緊急事態の時に通話できる分があれば大丈夫でしょう。
書き込みをした2万5千分の1の地形図はあります。けれど、軽量化と称してコンパスを置いてきてしまったのです!
腕時計に簡易コンパス機能が付いていたのでよし、としました(うまく使えてなかったのですが、あれこれいじってみて、調整設定みたいなのを見つけてこの日初めて使えるようになりました)


■12/4(水)富士見山を登頂して、十谷峠へ
行動時間10h 距離15km、累積標高(上)1600m
行程:●水 ひのや7:00 - 富士見岳 12:30 - 十谷峠15:00
天候:晴れ

4日目

4日目の終わり

ひのや別館は、建物は古くこじんまりした宿でしたが、食事は美味しく、居心地がよかったです。お茶受けの干し柿も絶品でした。

早川の町を歩いて行くと、道路に南アルプスフロントトレイルの立派な看板があって、道迷いの心配はなさそうだ、と安心しました。が、薬袋(みだい)の里山に入っていく道に誘導され、あれっ?!となりました。
車道を歩いて、富士見山の稜線へ入る予定でいたのですが、南アルプスフロントトレイルは、車道ではなく里山を歩くようです。南アルプスフロントトレイル、セクション3の踏破はあきらめ、元の予定通り車道をいきました。

順調に登っていき、富士見山の手前、12時ちょうどに、ひのやで用意してもらったおにぎりを食べました。
海苔がパリパリのまま食べられるようになっていたり、ゴミがかさばらないように工夫されていたり、気が利いていました。もちろん、味も美味しかったです。

トレイルは特に悪いところもなく、淡々と十谷峠に到着しました。
十谷峠は一般車も入れる林道が通っています。道路脇の祠の前に、ちょうどよい平らな土地があり、そこで泊まりたいと一瞬思いましたが、夜中に走り屋が来るかもしれないと思い、先へ進みました。少し歩いたところで、若い男たちがウェイウェイしているような声が聞こえてビックリしました。幻聴か猿の声と思いましたが、もう一度声がして、峠の下の方に誰かがいるのだと確信しました。
それで、ひとつピークを越えた先で泊まりました。(虫がいないか念入りにチェックしました)


■12/5(木)源氏山を登頂して、櫛形山を越え祠頭へ
行動時間10h 距離16km、累積標高(上)1200m
行程:十谷峠5:30 - 足馴峠 10:00 - 源氏山11:00 - (●水場あり)
 - 池の茶屋林道終点13:30 - 櫛形山14:30 - 祠頭15:00 ●水場あり

天候:晴れ、午後から風がとても冷たかった


5日目


5日目の終わり


熟睡してしまい、腕時計アラーム聞き逃して寝坊しました。急いで支度して、なんとか五時半前に出発。あまり早く出ても暗くて道迷いリスクが高くなるだけなので、まあ結果オーライです。

倉尾山頂上直下は、ビックリするくらい急登でしたが、それ以外は快適な尾根歩きでした。
この日は風があって、ずっと長袖で歩きました。


源氏山分岐まできたら、イージーな道のりです。
源氏往復し、林道に出たら池の茶屋分岐まで車道歩きました。南アルプスフロントトレイルのセクション2は、車道と沿うように山道を通っていましたが、元々の予定通り車道を歩きました。
いつか南アルプスフロントトレイルのスルーハイクをする日が来るでしょうか?

頻繁に近くで見たコガラ

池の茶屋駐車場に着くと車2台ありました。1台には人がいて、挨拶しました。この日会った人はこの1人だけでした。腹がとても減っていて、櫛形山へ登る途中の富士山がよく見えるベンチでお昼にしました。お湯を沸かしてカレーメシを食べようとしたら風が強く時間がかかりました。たべる前より寒くなってしまって、失敗でした。
頂上を越えて、祠頭へ降りると、まだ陽が差していて風もなくポカポカでした。ここでご飯にすればよかったと思いました。
ここは立派な避難小屋があるのですが、私は小屋があまり好きではなくて、いつも外でキャンプです。富士山も甲府盆地の夜景も綺麗に見えるのでとても気に入っています。


■12/6(金)山を降りて、車道を歩いて韮崎へ
行動時間17.5h 距離20km、ほぼ下り&水平移動のみ
行程:●水 祠頭6:00 - 伊奈ヶ湖8:00 - 市之瀬9:30 - (昼休憩しながら)- 韮崎12:30
天候:晴れ、鳳凰三山は雲の中



6日目

6日目の終わり


シュラフには霜がはりました。ペットボトルの水が凍りました。
最終夜なのでカイロを使って盛大に暖まり、盛大に結露しました。シュラフはビシャビシャです。最終日であとは降りるだけなのでいくら濡れても構いません!なんて気楽なのでしょうか。

美しい朝焼けの中、登山道をただただ下って、伊奈ヶ湖の自販機でココア飲みました。
そして里に降りてから、のこり僅かになったバッテリーでケータイ充電し、電源を入れました。40%も充電できて、一安心。韮崎までの道案内をグーグルマップにたよりつつ車道あるきです。甲府盆地と周辺の山々をながめたり、チョウゲンボウを観察したり、ランニングする人たちとすれ違ったり、コンビニでいろいろ買って公園で休憩したり、道路も楽しく歩きました。


韮崎駅近くには、昼過ぎくらいに着きました。宿のチェックインまで公園でひなたぼっこして時間を潰しました。

■その後
4日目以降、ほとんど疲れを感じていなくて、韮崎到着の翌日もとても元気でした。足裏も痛くない。怪我した足のかかとも痛くない。体幹も疲れてない。もちろん筋肉痛もありません。
3日目、水を飲まずに頑張った日が疲れのピークだったようです。
荷物が軽いおかげでしょう。

それで、翌日は、駅前から大村美術館まで歩き、白山城後や武田神社を散策してから、大掃除&忘年会に参加しました。

さらに忘年会の翌日、韮崎駅周辺で行ったことのない荒倉山に登ることにしました。

この日、強い寒気が押し寄せてきて、八ヶ岳や鳳凰三山は真っ白になりました。荒倉山の山頂付近もパラパラ雪が舞いました。

帰り道、集落のお年寄りとお話しました。横浜から来たと行ったら、荒倉山なんかにわざわざ、とビックリしていました。この辺の山が好きなら移住したらいい、空き家がいっぱいあるよ、と言われました。

下山後、人気のみどりや食堂は人がいっぱいだったので、まだできて間もない風のベトナム料理屋でお昼を食べて、穴山駅から帰りました。
1週間以上、山や町やいろいろウロウロして、とても楽しい旅でした。

すっかり冬になった山々を眺めて、今年はちゃんと雪山に行きたいなあとおもいました。

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