■10日目 7/23(水)East Creek Basinへ移動
朝6時起床。晴れた!!
が、日射しが来るまで寒い!
が、日射しが来るまで寒い!
できるだけ荷を軽くしたいので、テントなど乾かすため陽を十分に浴びるまで待機。
不要な食料や服などをフードロッカーにデポして、出発は9時半前くらいでした。
早朝、2人組がBSコルへと登っていくのを見ました。なかなかの急登なので、ステップがしっかり刻まれてればいいな、と思いました。
BSコルの下で、私たちがアイゼン等準備している時、4人組が登っていたのですが、彼らは途中で右のガレ場にエスケープして、大落石を起こしました。
もし、続いて登っていたら私たちは2人とも無事ではなかったでしょう。
とっても心配だったのですが、テント等2泊分の装備背負ってのBSコル越えに成功し、ひと安心です。
ウキウキでVowel Glacierを歩きました。
目指すHowserはずっと雲に覆われていました。
1時間かからずピジョン=ハウザーのコルに到着。
途中、ガイドパーティにすれ違い、BSコルの状態を聞かれました。みんなBSコルのことが心配なのですね。
EastCreekBasinのテント場に到着。ここは州立公園外なので、有志のクライマーが整備しているらしいです。
明日、暗いうちに発つ予定なので、稜線の取り付きへいく道を確認しにいきました。
我々以外に誰もこないと思っていたら、なんとヘリが到着。
有名なクライマーなのか、単なる金持ちか?!と訝っていると、なんと盲目の7Sumitterがベッキーに挑戦するらしいのでした。
それから、もう1組が、ふつうに歩いて到着し、この日は全部で3パーティーが泊まったのでした。
ヘリ、到着 |
■11日目 7/24(木)いよいよベッキーです!
暗い中、4時出発。稜線への取り付きまでは前日の偵察通りでしたが、稜線に上がる途中で迷ってしまいました。
もたもたしているうちに、3パーティに追い越されました。盲目登山家はルート途中に1泊する計画なので、まだ来ていません。2パーティーはアップルビーからか、ハウザー=ピジョンのコルにビバークしていたのか?気になって前のパーティに声かけたものの、名前はわからんけどtopに泊まってた、風が強くて参った、と言ってました。topってどこのだ??
通常、ロープアップする場所に6時半。4パーティが集合していました。
(我々はロープをだして、1回スタッカート、その後サイマルスタイルでここまできた)
まずは5.5〜5.8くらいの3ピッチを登ります。
陽が差しきたけれど、風が強くてとても寒いです。前のパーティーのお兄さんたちも震えていました。みんなダウンを着込んでいます。上半身は、グローブしていないだけでアイスクライミングの格好と同じです。
足が冷たくて感覚がなくなってしまいました。私はいつも通り素足にクライミングシューズなので余計に寒かったです(相方含め、他の人はみな靴下着用してました)
レッグウォーマーがほしくなりました。
レッグウォーマーは持ってきていないので、フェレットの毛で作ったネックウォーマーとキャップを、それぞれ足首にまいてみました。少しマシににりました。
4ピッチ目(5.10-ある最初の難し目のピッチ)で、前のパーティーに追いつきました。そしたらなんと、前のパーティーはここで敗退を決めてしまいました。時間がかかると判断したのか、寒すぎたのか。
彼らが下降するのを待ったせいか、我々が遅いだけなのか、前の前のパーティーはもう見ることはありませんでした。
ここで、登るのにずいぶん時間がかかってしまい、これは、今日中にベースのキャンプ地に戻れないかも?と思い始めました。
寒くて、指や腕やあちこち体がつってしまいます。足は感覚がないままです。
5、6、7ピッチと相方のSが淡々とリードして、気温も上がってきてやっと調子良くなり始めたと思った頃、私の右足の靴がスタックしてうんともすんとも動かなくなってしまいました。
足はなんとか、靴を脱いで抜けましたが、靴が取れない…残置しようか迷うレベルです。
これ(残置された靴)をみたら、後続パーティーは大爆笑だろうな…と想像して一生懸命、ハンマーとナッツキーつかって取り出しました。ここでまた30分以上時間を喰ってしまったのでした。
日射しがあたたかいものの風は止まず、体感気温はずっと氷点下です。
寒さと疲労のせいか、芍薬甘草湯(漢方)を飲んでも、指も前腕も三頭筋もつりまくり!
私だけでなく、相方も同じくあちこち、つるようです。
ペースが遅いのはわかっていましたが、時間を気にせずとにかく登ことに集中しました。
Sは、さすが、すべてフリーでこなして行きました。しかも私のアックスをザックに付けたままスクイーズチムニーも。引っかかって登りにくいところもあったようですが。
私は、結局、歩きのようなピッチ以外ずっとフォローのままでした。
プロテクション不足で11P途中で一回きりました。 |
11P目を過ぎて、なんとか明るいうちに頂上にいけそうな雰囲気でしたが、13ピッチ目の途中(
うんちのあった棚)で、夕暮れっぽくなってしまいました。
21時近いのにあと2ピッチおわるのか?!
陽が弱まり、寒すぎて体が思うように動きません。風もどんどん強くなっていました。
低体温症を心配して、こまめに食料を口にしました。
今夜のビバークは寒そうだから頑張らないとなあ、とぼんやり考えていました。
で、この棚から、2番目のクラックを登るとのトポの記述通り登ったのですが、あきらかにオフルートでした。2番目って、右から?左から?どっちだよ!と思いました。
Sは登ることに一生懸命でオフルートとは気づかなかったらしい。
私は登りながら、右側に正規ルートがあるのだろうと見ていました。Sに追い付いて、どうしようか相談していましたが・・・
とにかく風がめちゃくちゃ強いし暗くなってきて焦ります。
14ピッチ目がよくわからかったけど、ここが最終の15ピッチ目だと判断してガリーを登りました。やっぱり、幸か不幸か、A0または5.10であるトラバース部分のところをスキップしてしまい、ちょうど最終ピッチの簡単なガリーに出ていたのでした。
ガリーを登り終わると、懸垂支点らしきスリングが目に入りました。
急いで懸垂して、岩峰の南面に降りたら風が弱まったので、とてもホッとしました。
レッジに降りた時点でもう22時でした。
岩棚は狭いけど、これ以上ウロウロして良い場所を探さずに、さっさとビバーク準備することに決めました。ツエルトをカムとロープて固定して中にロープを適当に敷いて、まずSを押し込みました。
岩棚に固定したツエルト |
一人が岩に寄りかかって横になれる程度の小さな棚でしたが、中は思ったよりも暖かく居心地も良かったです。ただ、足先だけは風にさらされて冷たくなりました。
(私はメッシュのスニーカーにネオプレーンのソックスだから余計に寒い)
とっときの足用カイロを相方にあげたのに「全然暖かくなかった」そうです。
狭いツエルトの中で、体勢を変えようとすると、からだ中がつりまくり。
それでもSはいびきを書いて熟睡していました。
私は、Sの足元で猫のように丸くなって寝ました。
■12日目 7/25(金)山頂へ、そして下降
朝は寒いけどいい天気で、風も夜よりおさまっていました。6時に出発。
山頂までは、4級 時々5級のムーブで150m〜200mとあったので1時間くらいで登れると思ってたのに、疲れか寒さか、頂上に着いたのは8:40でした。
山頂到着時はガスっていて、下降点を探してしばしウロウロしました。
そしたら、ちょっとだけ晴れたので急いで撮影しました。寒さのせいで、私の携帯はここでバッテリアウト。そもそも通信圏外なので、ケータイはただのカメラとして持ってきていました。
そう、我々は通信手段一切なしで、割り切って登ることに決めていたので、もし、体調不良やアクシデントが起きても救助は一切呼べないのでした。他の人たちのようにInReachとかを持っていればいいのでしょうけどね。
最初、下降は合っているのかどうか、不安でした。が、30mほど降りたら立派なラッペルステーションがあって安心しました。その後はトポの説明通りでした。
途中、岩角にロープが引っ掛かったり、結び目をあげてしまいそうになったり、少々トラブルは合ったものの順調に11回の懸垂をこなしました。
下降したら、山頂の雲から抜け出して陽が当たると期待していたのに基部までガスガスで寒かったです。
最後はシュルンドを越えて氷河の上へと降り立ちました。
まず、相方がアックスを持って先に降りました。セカンドで続く私。見事にシュルンドに落ちてしまい、上には崩れそうな氷の棚が覆いかぶさり、怯えて軽くパニックになりました。自力で上がれず相方に引っ張り上げてもらってなんとかなりました・・・
最後11回目の懸垂下降 |
この後、足がハマる |
安心して氷河をテクテク歩いていたら、今度は、柔らかくなった雪にはまり、下の氷の層を踏み抜いてしまい、足が抜けなくなってしまいました。今回の私はハマってばかりです。股まで埋まって、足か引き抜けません。
「どうしたらいい!?」とSに訊いても、「気合いで頑張るしかないね」と言うだけでした。気合だけではどうにもならないので、周りの雪を掘ってから、アックスで足の周りの氷を割ってなんとか脱出しました。
氷の層の下に、水の層があって体全体が沈んでしまうのではないかと思って、これもまた恐怖でした。
なんだかんだでベースに戻ったのは15時でした。
テントを出て戻るまで35時間。
疲れていたので、今日はもうアップルビーには行けないね、と相方と話して、この日もここに泊まることにしました。明日の天気予報は、雨だったので、できれば早く戻りたかったのですが、仕方ありません。
しばらく、あったかいはずなのに、体がブルブル震えてしまいました。2人とも、です。
そして、びっくりするくらい足がジンジン痛く、明日歩けるのか不安でした。
夜は雨がザーザー降りました。
ザックは外に置いたままで、雨でビショ濡れになるなと思いながらそのままにしてしまいました。
■13日目 7/26(土)駐車場へ
足先は腫れて痛かったので、あらかじめロキソニンを飲みました。
バッチリ効いて、昨日の不安はどこへやら、元気よく歩けました。
と言うのは半分ウソで、痛みは消えて歩けましたが、のぼるとすぐハアハアしてペースが上がりませんでした。
で、BSコルです。雨が降っていたら、落石が怖いので、遠回りしてスノーパッチ=ピジョンのアイスフォール側の懸垂下降をしようと思っていましたが、天気はまだ大丈夫そうなのでBSコルを降りることにしました。
下降しようとしたら、2人組が登ってきたので待ちました。
結構時間がかかっていました。しかも、この2人素手だし、ロープも何もクライミングギア持っていない・・・後方の1人は最後悪くて登れず、私たちのロープを掴んで登ってくる有様・・・どこにいくのか効いたら、ノープランだそう。
結構時間がかかっていました。しかも、この2人素手だし、ロープも何もクライミングギア持っていない・・・後方の1人は最後悪くて登れず、私たちのロープを掴んで登ってくる有様・・・どこにいくのか効いたら、ノープランだそう。
で、BSコルは無事に3回の懸垂下降で降りました。BSコルは、雪がとけてしまって、もう私には登るのが厳しそうでした。
ボルダー地帯を歩いていたら、疲れのせいかフラついて転倒し、お尻をしたたかに打って悶絶しました。思わず「チキショウ!」と悪態をついてしまいました。
ボルダー地帯を歩いていたら、疲れのせいかフラついて転倒し、お尻をしたたかに打って悶絶しました。思わず「チキショウ!」と悪態をついてしまいました。
一般ハイキング道まで出てから、ザックを置いて、空身で単身アップルビーへ荷物を取りに走りました。水もゲット。Sの待っているところまで戻って、アルファ米食べて元気いっぱいです!「早かったね!」と褒められました。頑張って走ったからね。
そこからは、良いハイキング道をひたすら降るだけ、イージーモードです。
途中、「昨日ベッキー登った」という2人組に会いました。我々が下降した日に登ったようです。確かにテン場には新しくテントが4、5張ほど増えていました。
彼らが知り合いと話しているのを盗み聞いたところによると「24時間かかった」そう。
途中、「昨日ベッキー登った」という2人組に会いました。我々が下降した日に登ったようです。確かにテン場には新しくテントが4、5張ほど増えていました。
彼らが知り合いと話しているのを盗み聞いたところによると「24時間かかった」そう。
我々はビバーク時間を除けば26時間だから、割とみんな時間そのくらいかかるのでしょうか。そういえば、昨日、22時ごろ薄暗くなってきてもテントに人が戻ってくる気配がありませんでした。Sによるとテントに人が戻ってきたのは3時くらい。確かに約24時間くらいです。
駐車場に戻ったのは17:30くらいでした。
車にたっぷり食料と飲み物を用意して置いて正解でした。
戻ってきたよ |
電波の入る地点まで運転して、いつものインバーメアの宿を予約しました。
フライドチキンとチキンの丸焼きが食べたい、と思いながら運転しました。
チキンたらふく食べました 足の指が腫れています |
■14日目 7/27(日)インバーメアでゆったり
なんだかまだ興奮しているのか宿なのにぐっすり眠れませんでした。
EastCreekのテン場でも、断続的にしか眠れませんでした。
この日は街を散歩して、ストーレンチャーチのアイスを食べて、アウトドア店で服を買って(バガブーでパタゴニアのフーディニをビリビリに割いてしまったのです)、プーテンクイーンというプーティン屋さんでたらふく食べて、リカーショップでワインとビールを買って過ごしました。
バガブー前に買ったインバーメアの地ビールの残りも飲みました。
残りの日程で、もう1度、サードナルドに挑戦する気はまったくありませんでした!
■15日目 7/28(月)ジョンストンキャニオンへ
国立公園内で、シャワーのあるキャンプ場がいいとSが言うので、探してみたらジョンストンキャニオンというキャンプ場に空きがありました。今まで4回もバンフを訪れているのに、初めてジョンストンキャニオンに行きました。レイクルイーズ並みに、名所のようです。ゆったり過ごすはずが、滝見のトレイルはワンサカ人がいたのでカフェでソフトアイスを食べて撤退。キャンプ場に着いたら雷雨で、テントの中から出ずに過ごしました。
■16日目 7/29(火)キャンモア付近でクラッギング
この日はキャンモアのY夫妻とクラッギングへ。
最初行った岩場はびしょ濡れ全滅だったので、クーガークリークへ。
数年前までダム建設で閉鎖されていた岩場で、私たち初めて行きました。
最初行った岩場はびしょ濡れ全滅だったので、クーガークリークへ。
数年前までダム建設で閉鎖されていた岩場で、私たち初めて行きました。
一番簡単だという11d35mにトライ。
ムーブはこなせるものの、疲れが溜まっているせいなのか持久力なく、私もSもレッドポイントならず。それでも、久しぶりに被った石灰岩は楽しかったです。
ムーブはこなせるものの、疲れが溜まっているせいなのか持久力なく、私もSもレッドポイントならず。それでも、久しぶりに被った石灰岩は楽しかったです。
でっかい壁 |
■17日目 7/30(水)空港へ
キャンプ場を撤収して空港へ。
荷物をザックに詰め込むだけで疲れてしまいました。そして運転しただけでハラヘリです。
空港でWEBチェックインしたら何故か座席が表示されず、乗る直前まで席がわからないというドキドキはありましたが、前の方の広い良い席で結果オーライでした。
■18日目 7/31(木)無事、帰国
直航便なので9時間ちょっとで成田です。
映画を4本見てたらあっという間でした。
ベッキーからの眺め |
今回のベッキーシュイナードルートは、私たちにとってこれまでの海外遠征で登ったどのルートよりも一番素晴らしかったです。一番素晴らしくて、一番疲労しました。
気温が暖かければ、風がなければ、ビバークもなくすんなりと終わったのかもしれません。
しかし、もうチャンスはないかもしれないと、撤退はせず、寒い夜を覚悟でとにかく進んで良かったと思います。最低限の装備で1ビバークして、ヨタヨタになりながら降りてきたこの経験は、かけがえのないものとなりました。そして何よりも無事に生きて帰ってこれて良かったね!! です。
で、これを書いている今、ベッキーから降りてきてもう1週間以上経っているのですが、私の足指や足裏はビリビリして、まだ感覚がおかしいのです。
今週末は、北海道で縦走しようとしているのに、果たして大丈夫でしょうか?
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